第186話 執行――正義の仮面が剥がれる時
夜明け前。
丘の向こうで、
角笛が鳴った。
低く、
長く。
――執行開始。
◆包囲
村の三方向に、
王国兵が展開する。
整った隊列。
掲げられた王国旗。
逃げ道は、
最初から塞がれていた。
拒否派の若者が、
歯を噛みしめる。
「……話し合いは……
最初から……」
リアが、
冷静に言う。
「……形だけでした。」
◆最後の警告
ローデリックが、
前に出る。
「最終確認だ。」
**「武装解除し、
境界杭を撤去せよ。
従えば、
血は流れない。」**
ミナの胸が、
激しく鳴る。
(……また……
選ばされる……)
カイルが、
一歩前へ出た。
**「従えば、
生き残れるって言ったな。」**
ローデリックが頷く。
「ああ。」
**「西の集落も、
そう言われた。」**
ローデリックは、
一瞬だけ沈黙し――
答えなかった。
それが、
答えだった。
◆断絶
カイルは、
低く言った。
**「なら、
ここは守る。」**
ローデリックの表情が、
硬くなる。
「――執行!」
◆開戦
兵が、
一斉に前進する。
盾が重なり、
槍が並ぶ。
正規軍の、
制圧陣形。
◆カイル、解放
カイルは、
深く息を吸った。
次の瞬間――
地面が沈んだ。
彼が踏み込んだ場所を中心に、
土が砕け、
砂塵が舞う。
最前列の兵が、
まとめて吹き飛ばされた。
「な……!?」
悲鳴。
隊列が、
一瞬で乱れる。
◆無双(制圧)
カイルは、
剣を抜かない。
拳と脚だけ。
盾を殴り砕き、
兵を後方へ投げる。
槍を掴み、
回転させて地面へ突き刺す。
一撃一撃が、
殺さないが、完全に戦闘不能。
**「止まれ!
殺すな!」**
ローデリックの叫びが、
虚しく響く。
◆ミナの支援
ミナが、
両手を胸に当てる。
**「……守って……
傷つけない……」**
淡い光が、
村全体を包む。
鈍化・衝撃吸収・恐慌抑制。
兵たちの動きが、
明らかに鈍る。
◆連携
リアが、
冷静に指示を飛ばす。
「右側、後衛薄いです!」
セリアが笑う。
「了解。
眠ってもらうわ。」
煙。
幻惑。
兵たちが、
次々と倒れていく。
◆ざまぁ(理屈)
ローデリックが、
叫ぶ。
「これは反逆だ!」
カイルが、
足を止めた。
「違う。」
静かな声。
「自衛だ。」
**「国家が来なかった場所で、
国家が来なかった時間に、
俺たちは守った。」**
**「今さら“正義”を
持ち込むな。」**
ローデリックは、
言葉を失う。
◆決着
数分後。
王国兵は、
全員が地面に伏していた。
死者は、
ゼロ。
だが――
完全敗北。
◆最後の言葉
カイルは、
ローデリックの前に立つ。
「伝えろ。」
**「ここは、
切り捨てられる側じゃない。」**
**「次に来るなら、
“国家”として来い。」**
ローデリックは、
唇を噛みしめ――
深く頭を下げた。
◆静寂
兵が撤退する。
村は、
無傷だった。
ミナは、
震えながら息を吐く。
「……終わった……?」
カイルは、
空を見上げる。
「いや。」
「ここからだ。」
◆外の世界の反応(即時)
王国:想定外の敗北
教会:武力によらぬ守護への注視
帝国:介入価値、急上昇
黒星会:アズリエが、静かに言う
「……やっと……
“本物”が出た……」
──第187話へ続く




