第179話 直接介入――壊しに来る者
夕暮れ。
村の外れで、
叫び声が上がった。
短い。
だが、はっきりとした恐怖の音。
◆標的
倒れていたのは、
あの行商だった。
命はある。
だが、腕が不自然に捻じ曲げられ、
荷はすべて奪われている。
拒否派の若者が叫ぶ。
「……来るなって言われて……
それでも来たから……
見せしめか……!」
ミナの喉が詰まる。
(……人を使って……
圧を……)
◆“誰がやったか”は重要じゃない
リアが傷を診ながら言う。
「術式も魔法も痕跡なし……
でも……
手際が良すぎる……」
セリアが歯を食いしばる。
「誰でもいいのよ。
“誰か”が壊れるのを
見せたかっただけ。」
ラウルが低く唸る。
「線を越えたな。」
◆カイル、出る
カイルは、
倒れた行商を一度だけ見てから、
村の外へ歩き出した。
誰も止めない。
ミナが、
震える声で呼ぶ。
「……カイル……」
カイルは振り返らない。
「戻る。」
それだけ言って、
森へ入った。
◆追跡
痕跡は、
わざと残されていた。
足跡。
折られた枝。
踏み荒らされた地面。
ラウルが呟く。
「誘ってる。」
セリアが答える。
「“出てこい”ってね。」
リアが警戒する。
「……単独行動は……」
カイルは、
静かに言った。
「一人で十分だ。」
◆森の奥
開けた場所。
そこにいたのは――
五人。
武装は軽い。
だが、動きは洗練されている。
リーダー格が、
薄く笑った。
「……出てきたか。」
◆会話は短い
カイルが言う。
「やったのは、お前らか。」
男は肩をすくめる。
「やった、って言うほどじゃない。
壊れなかっただろ?」
「誰の指示だ。」
男は笑う。
「知る必要あるか?」
「ないな。」
◆戦闘開始
最初の一撃は、
予告もなく来た。
刃が閃く。
背後から。
だが――
カイルは、
振り向きざまに拳を振るった。
音が砕ける。
一人、沈黙。
残り四人が、
一斉に距離を取る。
「……ちっ……
やっぱり化物か……」
◆静かな無双
二人が同時に突っ込む。
速い。
だが――
カイルの方が速い。
一人の肘を折り、
そのまま身体を投げる。
もう一人の喉を掴み、
地面へ叩きつける。
骨が鳴る。
三人目が、
距離を取って投擲。
カイルは避けない。
腕で弾き、
間合いを詰める。
拳一発。
沈黙。
残るは――
最初の男だけ。
◆問い
男は、
後退しながら叫ぶ。
「……殺すのか!?」
カイルは、
首を振る。
「殺さねぇ。」
男の顔に、
安堵が浮かぶ。
「二度と来るな。」
次の瞬間。
男の視界が、
反転した。
地面。
投げ飛ばされた。
息ができない。
カイルが、
真上から見下ろす。
**「“壊した”のは、
お前らだ。」**
**「この村に、
二度と手を出すな。」**
男は、
何度も頷くことしかできなかった。
◆帰還
カイルは、
一人で戻ってきた。
血はない。
傷もない。
ミナが、
駆け寄る。
「……どう……なった……?」
カイルは、
短く答えた。
「終わった。」
だが――
全員が分かっていた。
これは“最初の直接介入”にすぎない。
◆外の反応(確定)
その夜。
帝国では、
観測対象の評価が更新される。
《介入耐性:高》
《戦闘要素:局所的》
《指導者存在:確認》
王国では、
「武力衝突の可能性」が議題に上がる。
教会では、
「力による保護の正当性」が語られる。
黒星会では――
アズリエが、静かに笑った。
「……やっと……
“壊す覚悟”を見せた……」
◆ミナの視点
夜。
ミナは、
焚き火を見つめていた。
「……戦わないって……
言ってたのに……」
カイルは答える。
**「守るために戦うのは、
“選ばせる”側だ。」**
ミナは、
その意味を噛みしめる。
(……全部を拒まない……
でも……
譲らない……)
──第180話へ続く




