第178話 圧力――選べない状況
三日後。
村に、
何も起きなかった。
それが――
異常だった。
◆静かな異変
行商が来ない。
いつもなら三日に一度、
塩や布を運んでくる荷車が、
影も形もない。
援助派の男が首を傾げる。
「……遅れてるだけ、か?」
拒否派の若者が森道を確認して戻る。
「……いや……
道は通れる……
でも……
誰も来ない……」
未定派の老人が、
ゆっくりと呟いた。
「……止められとるな……」
◆物資の圧迫
塩が減る。
薬草が足りない。
鉄の工具が壊れても、替えがない。
畑はある。
水もある。
だが――
“外と繋がる物”だけが欠けていく。
ミナは、
空になりかけた塩袋を見つめる。
(……戦ってないのに……
苦しくなる……)
◆見えない線
リアが、
村の周囲を調べて戻ってきた。
「結界も、封鎖もありません。」
セリアが眉を寄せる。
「でも……
“来ない”ように
仕向けられてる。」
ラウルが低く笑う。
「脅してんだよ。
“孤立”ってやつでな。」
◆村の空気が揺れる
広場。
声が、
再び分かれ始める。
「王国と話をすべきだ……」
「教会なら、物資を……」
「帝国は何もしないって……」
“逃げ道”が、
また並び始める。
ミナの胸が締め付けられる。
(……これが……
“選ばせない”ってこと……)
◆カイルの宣言
カイルが、
村の中央に立つ。
静かだが、
よく通る声。
「これは戦争じゃねぇ。」
ざわめきが止まる。
**「力を見せず、
刃も向けず、
選択肢を減らす――
それが本気の圧だ。」**
援助派の男が問う。
「……じゃあ……
どうする……?」
カイルは、
即答しない。
一拍置いて、
はっきり言った。
「譲らない。」
息を呑む音。
**「だが、
無理もしない。」**
ミナが、
一歩前へ出る。
「……分け合おう……」
視線が集まる。
**「塩は……
使う量を減らす……
薬草は……
代わりを探す……」**
拒否派の若者が呟く。
「……耐える、ってことか……」
ミナは、
小さく頷く。
**「……耐える……
でも……
黙ってじゃない……」**
◆“黙らない”行動
リアが理解する。
「情報ですね……」
セリアが口角を上げる。
「噂を流す。」
ラウルが肩を鳴らす。
「村は生きてる、ってな。」
カイルが頷く。
**「助けを乞うんじゃねぇ。
“現状”を話すだけだ。」**
◆最初の成果
翌日。
森道の先で、
一人の行商が立ち止まる。
怯えた顔。
「……ここ……
来るなって……
言われてた……」
ミナは、
静かに答えた。
**「……それでも……
来てくれて……
ありがとう……」**
行商は、
しばらく黙り――
小さく笑った。
「……全部は無理だが……
少しなら……」
塩の小袋。
薬草数束。
大きな救いではない。
だが――
“孤立していない”証明だった。
◆外の反応(兆し)
その夜。
王国では、
「圧力が効いていない」という報告。
教会では、
「信仰によらぬ結束」が議題に。
帝国では、
影の男が静かに記す。
「……持ちこたえた。」
黒星会では、
アズリエが目を細める。
「……次は……
もっと直接だ。」
◆ミナの独白
夜。
ミナは、
焚き火の前で呟く。
「……選ばせないって……
戦うより……
怖い……」
カイルは、
隣で答えた。
**「だからこそ、
折れなきゃ意味がある。」**
ミナは、
ゆっくり頷いた。
(……次が来る……
でも……
逃げない……)
──第179話へ続く




