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第177話 評価――動き出す外の世界

二度目の夜が明けた朝。


村は、

静かだった。


誰も倒れず、

誰も逃げず、

誰も勝利を叫ばない。


だが――

全員が、確かに何かを越えていた。


◆測定結果①:帝国


帝国観測局・地下記録室。


影の男が、

報告書を読み終え、

指を止めた。


「……興味深い。」


部下が問う。


「排除対象に昇格しますか?」


影の男は、

首を横に振る。


**「否。


“因子”だ。」**


部下が眉をひそめる。


「因子……?」


**「国家を揺らす“核”ではない。


だが、

“選択”という概念を

周囲に伝播させる媒介だ。」**


記録に、

新たな分類が書き加えられる。


《観測対象:村

状態:自立因子

危険度:未確定

介入方針:保留》


影の男は、

小さく笑った。


「面倒だが……

壊すには、まだ早い。」


◆測定結果②:王国


王都・評議会。


報告を受けた宰相が、

深く息を吐いた。


「……拒否でも従属でもない……

“自立”か……」


将軍が眉をひそめる。


「力を見せずに

影響力を持つ村……

危険では?」


宰相は、

首を振った。


**「危険なのは、


彼らではない。

“同じことをしたがる村”が

増えることだ。」**


別の貴族が、

苛立った声を上げる。


「ならば、

早めに潰すべきだ!」


宰相は、

冷静に返す。


**「潰せば、


殉教地になる。」**


沈黙。


**「交渉を送れ。


剣ではなく、

言葉でだ。」**


◆測定結果③:教会


白亜の聖堂。


枢機卿が、

祈りを終え、

静かに目を開く。


「……信仰に依らず、

恐怖に溺れず……

なお立つ……」


補佐官が不安げに問う。


「異端では……?」


枢機卿は、

わずかに首を振る。


**「異端ではない。


だが……

“神を必要としない可能性”だ。」**


補佐官が息を呑む。


「……危険……」


**「ええ。


だからこそ……

“救済”が必要です。」**


祈りの鐘が、

低く鳴った。


◆測定結果④:黒星会


森の奥。


アズリエは、

静かに目を閉じていた。


「……選ばせる力が、

形を持ち始めている……」


配下が問う。


「次は?」


アズリエは、

短く答えた。


**「圧をかける。


“選べない状況”を作る。」**


◆村の朝


村では、

外の動きを知らぬまま、

日常が戻りつつあった。


畑を耕す。

柵を直す。

見張りを決める。


小さな作業が、

確かな自信に変わっていく。


ミナは、

井戸の前で水を汲みながら、

ぽつりと呟く。


「……昨日より……

少し……

怖くない……」


リアが微笑む。


「それが成長です。」


セリアが肩をすくめる。


「次はもっと怖いわよ。」


ラウルが笑う。


「当たり前だ。」


カイルは、

村の外を見つめていた。


「……来る。」


ミナが、

その横に立つ。


「……何が?」


カイルは、

静かに答えた。


「選ばせない状況だ。」


ミナは、

胸に手を当てる。


(……でも……

選ぶって……

こういう時のためにある……)



──第178話へ続く

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