表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

175/233

第175話 小さな成功――自立の芽

朝。


村に、

いつもよりゆっくりとした朝が訪れた。


鐘は鳴らない。

号令もない。

だが――

人々は自然に外へ出てきた。


◆見張り明けの空気


夜通し見張りをしていた者たちが、

焚き火の周りに集まっていた。


顔は疲れている。

目の下には隈。

肩も重そうだ。


それでも――

誰も不満を口にしない。


援助派の男が、

湯をすする。


「……正直……

逃げ出したかった……」


拒否派の若者が、

苦笑する。


「……俺もだ……」


二人は顔を見合わせ、

小さく笑った。


「……でも……

生きてるな……」


その言葉に、

周囲が静かに頷いた。


◆役割が生まれる


未定派の老人が、

地面に線を引いた。


「今夜は、

この辺りが死角になる……」


農夫が頷く。


「柵を延ばせば……

見通しが良くなるな……」


別の村人が続ける。


「交代の合図、

決めた方がいい……」


誰も命令していない。

誰も従っていない。


勝手に、役割が生まれている。


リアが小さく息を呑む。


「……自発的な構造形成……」


セリアが口角を上げる。


「面白いわね……

押し付けるより、

ずっと強い。」


◆ミナの変化


ミナは、

焚き火の横で湯を配っていた。


「ありがとう」

「助かった」

「少し休みなさい」


そんな言葉を、

何度もかけられる。


そのたびに、

ミナは少し戸惑いながらも、

笑って頷いた。


(……私……

何か……

できてる……?)


剣を振っていない。

命令もしていない。


ただ――

そこにいるだけ。


それだけで、

人が立ち直る瞬間がある。


◆カイルの評価


少し離れた場所。


カイルは、

村の様子を一通り見渡した。


「……想定より早い。」


ラウルが眉を上げる。


「何がだ?」


カイルは答える。


**「“俺がいなくても回る”感覚が、


もう芽を出してる。」**


セリアが腕を組む。


「皮肉ね。

あなたが一番強いのに、

あなたが要らなくなっていく。」


カイルは、

小さく笑った。


「それでいい。」


リアが静かに言う。


「ですが……

外の勢力は……

この変化を歓迎しません。」


カイルは頷く。


「だから、次が来る。」

◆不穏な兆し


昼過ぎ。


森の外れで、

見張り役が戻らなかった。


大騒ぎにはならない。

だが、

確実に空気が変わる。


拒否派の若者が、

顔を引き締める。


「……昨夜の見張りとは……

違う……」


援助派の男が、

武器を握る。


「……来る……

次は……

本物だ……」


ミナの胸が、

きゅっと締まる。


(……でも……

逃げない……)


◆カイルの一言


カイルが、

村の中央に立った。


声は低く、

落ち着いている。


**「慌てるな。


逃げる準備をするな。

“選ぶ準備”をしろ。」**


その言葉に、

村人たちが息を整える。


**「守るか。


隠れるか。

戦うか。

交渉するか。」**


ミナが、

一歩前へ出る。


**「……私も……


考えます……

一緒に……」**


誰も、

それを止めなかった。


◆夜への予感


夕暮れ。


村の外で、

意図的に折られた枝が見つかる。


獣ではない。

人の手だ。


ラウルが、

剣を担ぎ直す。


「……小物じゃねぇな……」


セリアが目を細める。


「試しに来てる。」


リアが頷く。


「村の“自立度”を……

測りに……」


ミナは、

静かに拳を握った。


(……また……

選ぶ時が来る……)


──第176話へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ