第168話 黒星会暴走――再戦、そして突破口
夜。
空は黒く沈み、
星はひとつも輝かない。
ただ――
戦意だけが光っていた。
黒星会の影が、再び立ち上がる。
肉体は砕け、
骨は折れ、
血は流れ、
それでも――
動く。
リアが震える声で言う。
「……生体融合術式――
自己補正率が上がってる……!」
セリアが剣を握り締める。
「つまり、倒すたび強くなる……ってことね。」
ラウルがニヤリと笑う。
「上等。」
ミナの呼吸が乱れる。
(……終わらない……
倒しても倒しても……
終わらない……!)
カイルだけが、
微動だにしない。
◆第二幕・開戦
アズリエが声を放つ。
「――再起動、侵蝕段階。」
影たちの身体が、大きく膨張し――
全身を黒い紋様が走る。
速度上昇。
腕力上昇。
魔力放出。
リアが叫ぶ。
「接近戦不可――!!
遠距離にシフト――!!」
セリアが後退しながら斬撃を放つ。
ラウルは大剣を振り回して距離を取る。
しかし――
影たちは一瞬で間合いを詰めた。
ラウルの大剣が弾かれ、
セリアの剣が甲撃で軋む。
村の大地が揺れる。
◆カイル、前に出る
黒星会の影が同時に襲いかかる。
五方向。
五重衝突。
カイルは――
一歩踏み込んだ。
拳が振り抜かれる。
バキィ!!!!
一撃で一体が吹き飛ぶ。
衝撃で地面が砕け、
木々が揺れ、
空気が裂ける。
アズリエの目が一瞬だけ細められた。
「……解析不能。」
カイルは言った。
**「強くなった?
なら壊す量を増やすだけだ。」**
影二体が背後から。
目視不能の速さ。
カイルは振り返らない。
肘打ちで一体の胸を貫き、
踵落としでもう一体を地へ叩きつける。
三体目が飛び込み、
拳を放つ。
カイルは拳を受け止めたまま、
ゆっくりと圧を込め――
骨が裂ける音。
影が絶叫し、崩れ落ちる。
リアが息を呑む。
「……人間の筋力じゃ……
ありえない……!!」
セリアは言う。
「ありえないからカイルなのよ……!」
◆黒星会の反撃:術式重複起動
アズリエが軽く指を弾いた。
「第二侵蝕、重複起動。」
影たちの身体が歪む。
形が崩れ、動きが異様に滑らかになる。
ラウルが叫ぶ。
「気味悪ぃな!!」
セリアも声を荒げる。
「動きが読めない――!!」
リアが必死に解析する。
「身体制御を術式に委ねている……
反射が人間じゃない……
反射で反射を上回る……!!」
三体が同時に、
カイルへ殺到した。
速度が先ほどの倍。
捉えられない軌道。
しかし――
カイルは口元だけで笑った。
**「読めなくてもいい。
止めりゃいい。」**
拳が走る。
衝突。
衝突。
衝突。
打撃音が連続で響き、
空気が弾け、
村全体が震えた。
影が崩れ――
三体まとめて沈黙する。
◆ミナ、戦場を変える
だが――
残る影たちがカイルではなく、
村人たちへ向かった。
援助派の子どもたち。
拒否派の若者たち。
未定派の老人たち。
ミナが叫ぶ。
「だめ!!
そっちは――!!」
アズリエが口元を歪める。
「選べ。
誰を守り、
誰を見捨てるか。」
ミナの心臓が跳ね上がる。
(選ばせる……
選ばせる……
“選択の痛み”を……
突きつけてくる……)
だが――
ミナは震えながら叫んだ。
**「逃げて!!
誰でもいい!!
自由に逃げて!!」**
その瞬間――
村人たちが一斉に動き出す。
足が、手が、自分の意思で。
黒星会の影が動きを狂わせる。
リアが驚く。
「……動体予測が乱れた……!
術式が失敗してる……!!」
セリアが理解する。
「対象の行動が読めない……!!
全員が違う方向に逃げてるから――!!」
ラウルが吠える。
「つまり――!!」
カイルが踏み込む。
「隙だ。」
拳が落ちた。
影一体――頭部破砕。
二体目――腕ごと捻じ曲げ。
三体目――胸骨陥没。
全て倒れる。
◆アズリエの分析
沈黙。
アズリエが、ゆっくりと目を閉じる。
「……理解した。」
ミナが息を呑む。
「……なにを?」
アズリエは答えた。
**「あなたの力は支配ではなく――
“不定性”を世界に流し込む。」**
リアが震える声で言う。
「不定性……
選択の自由……
自由は予測不能……
だから術式が乱れる……!!」
セリアが叫ぶ。
「ミナの声が戦場を動かしたってこと――!?」
ミナは、自分の手を見つめた。
(私は――
戦ってる……
言葉で……
心で……)
◆決着の前触れ
アズリエは静かに笑った。
「興味が深まった。」
影たちは――
まだ動ける気配を残している。
ラウルが構え直す。
セリアも剣を握る。
リアが魔力を練る。
ミナが息を整える。
カイルは、ただ一言。
「続けるか。」
アズリエは頷いた。
**「続けよう。
――次は、誰が壊れるか。」**
戦闘は――
まだ続く。
──第169話へ続く




