第167話 来訪者――黒の星
夜。
風が止まり、
空気が重く沈む。
森の奥から、
ゆっくりと――
黒い影が歩み出た。
一本の道を塞ぐように。
村を囲むように。
静かに、確実に。
その動きは、
軍隊のようで軍隊でなく、
信仰者のようで信仰者でなく――
ただひとつの意思だけが揺れていた。
◆第三勢力、名乗る
先頭に立つ影が、
フードを下ろした。
灰色の瞳。
無表情。
だが、冷たい美しさがあった。
その声は低く、
よく通る。
**「――黒星会。
私たちは、この村の“結末”を見届けに来た。」**
リアが息を呑む。
「黒星会……?
まさか……」
セリアが目を細める。
「知ってるの?」
リアは震える声で答えた。
「帝国にも教会にも属さない……
思想派の武装集団……
“自由の終着点”を探す者たち……」
ラウルが舌打ちする。
「よりにもよって、そのタイプか。」
ミナは胸が締め付けられる。
(終着点……
自由の、終わり……?)
◆彼らの目的
黒星会の先頭――
女は名を告げた。
**「私の名は――
アズリエ。」**
その声音は、
一歩たりとも揺れない。
「この村は、世界が変わる中心地。
ゆえに、終わり方を決める必要がある。」
カイルが前へ歩み出る。
「終わり方なんざいらねぇ。
生きてる限り、続くだけだ。」
アズリエは首を振った。
「自由を求める者は、
自由の果てを知るべき。」
◆戦闘の火蓋
次の瞬間――
アズリエの背後で、
五つの影が走った。
村を囲むように散開し、
同時に突入。
速度は速い。
黒服の帝国兵より速い。
セリアが叫ぶ。
「全方位――!!」
ラウルが大剣を抜く。
「上等!!」
リアが詠唱に入る。
ミナは息を止める。
そして――
カイルは動いた。
◆カイルの戦闘
一人目。
首へ拳を沈める。
音が砕ける。
影が地へ叩きつけられる。
二人目。
背後から刃が迫る。
カイルは振り返らず、肘で刃を折り、
腹へ膝を叩き込む。
影が森の奥へ吹き飛ぶ。
三人目。
魔力を纏う拳が迫る。
カイルは腕を掴み、
そのまま肩ごと地面へ叩きつける。
土煙。
呻き声。
静寂。
リアが目を見開く。
「……速すぎる……!」
セリアが笑う。
「カイルが本気出してる……!」
ラウルが肩をすくめる。
「あれ本気か……?」
◆アズリエの反撃
カイルが四人目へ向かう瞬間――
アズリエが指を鳴らした。
「落ちなさい。」
影が爆散した。
土が抉れ、
空気が震え、
カイルの足元が沈む。
見えない力。
押し潰す圧力。
ミナが叫ぶ。
「カイル!!」
カイルは膝をつく。
重圧が身体を砕く勢いで降り注ぐ。
しかし――
「……この程度じゃ、動きは止まらねぇ。」
カイルはゆっくりと立ち上がった。
空気が震える。
ミナは息を呑む。
恐怖ではない。
畏敬。
アズリエは眉を動かした。
「……興味深い。」
◆アズリエの言葉
戦闘が一瞬止まる。
アズリエがミナを見た。
「あなたは“選択”を生む者。
ならば、問う。」
ミナは静かに聞いた。
震えながら。
「……なにを?」
アズリエは問う。
「世界が壊れても、選ぶか。」
雷のような問い。
ミナは答えを探す。
だがまだ言えない。
まだ見えない。
カイルが横目で言った。
**「壊れるのは世界じゃねぇ。
壊れるのは、お前らだ。」**
アズリエの口元が、
わずかに笑った。
◆戦闘・第二幕開始の兆し
黒星会の影が立ち上がる。
全員、生きていた。
再生の気配。
魔力の波。
リアが蒼白になる。
「……術式再起動……!?
生体融合式の強化兵……!」
ラウルが舌打ち。
「やめろよ最悪だぞそれ!」
セリアが構え直す。
「第二幕――来る!」
ミナは胸を押さえた。
(……戦いは……
まだ……
始まったばかり……)
そして――
夜が震えた。
──第168話へ続く




