第165話 選択の行路――世界への一歩目
翌朝。
村を包む空気は、
昨日までの“揺れ”とは違っていた。
緩やかに、だが確実に――
動き始めている空気。
援助派、拒否派、未定派。
その三つの立場が、
もはや村を分ける線ではなく、
明日へ向かうルートへと変わりつつある。
◆旅立ちの噂
焚き火の周りで、
数人の村人が話していた。
「ミナたち……
外へ出るつもりなのか?」
「世界へ……?」
「いや……
戦うためかもしれない……」
拒否派の若者が言う。
「戦いじゃない。
選ぶためだ。」
援助派の男も続ける。
「村にとどまる方が、
安全に見える……
でもそれは停滞だ……」
未定派の老人は、
静かに呟く。
「歩き出す者がいるなら、
村は動かざるを得ない……」
ミナの胸が熱くなる。
(……私の選択が……
誰かを変えていく……)
怖さも、誇りも、同時にあった。
◆リアたちの決意
少し離れた場所で、
リア、セリア、ラウルが並んでいた。
リアが言う。
「外の勢力は、
この村という観測地点に興味を持っています。」
セリアが指を折るように列挙する。
「帝国、教会、王国……
どれも村を利用しようとしてる。」
ラウルが肩をすくめる。
「村人の意思なんざ関係ねぇ。
利用価値がある、それだけだ。」
リアが小さく頷いた。
「だからこそ……
私たちは外へ出て、
外の情報を集めなければ。」
セリアがミナを見つめる。
「あなたの力は“選ばせる力”――
情報なしには成立しない。」
ラウルがグッと拳を握る。
「戦う準備も必要だ。
次はあんな偵察兵じゃ済まねぇ。」
ミナは深呼吸する。
「……分かった。
行こう……」
◆村人たちの反応:三者三様
村の中央。
三つの立場が、
三つの反応を見せた。
援助派の声:
「旅立つことで、
助けが増えるなら……
それも選択だ……」
拒否派の声:
「外へ出るのは、
生きる場所を自分で選ぶためだ。」
未定派の声:
「……羨ましい……
でも怖い……
だから応援する……」
ミナは胸を押さえた。
(……どの声も……
大切……)
以前は答えを探していた。
今は違う。
答えより、歩くことが大切になった。
◆帝国の気配
村の外、森の深く。
倒れた黒服の残骸が回収されていた。
帝国観測局の兵士が分析する。
「骨格強化は破壊され、
術式も反応なし……
人間的動きすら残っていない……」
隊長が言う。
「次は“強化値”を上げる。
だが――
その前に……
村の動きを察知しろ。」
部下が問う。
「動きとは?」
隊長の返事は短い。
「外へ出る足跡だ。」
◆教会の気配
丘の上の白衣の群れ。
祈りの声が風に溶ける。
枢機卿が目を閉じて言う。
「村は、魂の揺らぎで満ちている。
戦いが生む血は、祈りで洗う。」
補佐官が尋ねる。
「止めるのですか?
促すのですか?」
枢機卿は微笑む。
「どちらでもない。
選ばせる。」
◆王国の気配
城内。
宰相が報告書を閉じた。
「帝国が動けば、
教会も動く。
ならば王国は――
ただ座して見ているわけにはいかない。」
護衛長が問う。
「村への侵攻か?」
宰相は首を振った。
「交渉だ。」
◆最後の決意
夕暮れ。
村の入口。
カイル、ミナ、リア、セリア、ラウル。
五人が、並んで立つ。
ミナが静かに言う。
「村を離れよう。」
カイルは頷く。
「ここは、戻る場所にする。」
リアが微笑む。
「そして……
この村そのものが……
選択の証明となる。」
ラウルが笑う。
「暴れ足りねぇしな。」
セリアが肩をすくめる。
「面倒くさくなってきたわね。」
ミナは深く息を吸い込んだ。
(……世界へ――
行くんだ……)
──第166話へ続く




