第164話 波紋――戦いの後で
午前。
村人たちの視線が、
カイルの足元に散らばった黒服の残骸へ向いていた。
それは、破壊というより――
証明だった。
“帝国ですら、村には干渉できない”
という証明。
しかし同時に――
“村は、もうただの村ではない”
という証明でもあった。
◆揺らぐ視線
援助派の男が震えた声で言う。
「……勝った……
勝ったんだ……」
拒否派の若者は苦い表情で返す。
「勝ったら……
帝国は退くと思うか?」
未定派の老人が呟く。
「勝ったから来る。
負けても来る。」
ミナは息を呑んだ。
(……戦いは終わっていない……
むしろ……
ここから始まる……)
◆黒服の分析
リアが残骸に歩み寄る。
「……帝国式戦闘補助術式……
精密な魔力回路……
完全な意志制御……」
セリアが横目で覗き込み、
皮肉げに言う。
「本気じゃない。
偵察と圧力を兼ねたテスト兵。」
ラウルは肩を鳴らす。
「つまり次は――
もっと強い連中が来る。」
リアが頷く。
「帝国の“観測”は、
もう中立ではありません。」
◆戦いが残した怖さ
ミナは、血のついていない黒服の手を見つめていた。
無機質。
冷たい。
人間でありながら、人間ではない。
「……怖い……
でも……
消えない……」
カイルが近づく。
「恐怖を消す必要はねぇ。」
ミナは気づく。
(……カイルは……
戦っても……
折れない……
揺らがない……
怖くても前へ行く……)
その背は、
強さそのものだった。
◆村人たちの反応:分裂から変化へ
昼。
援助派と拒否派と未定派が、
自然に広場へ集まっていた。
分かれて立つのではなく――
円を描くように。
援助派の男が言う。
「……強さを手に入れるのは……
自由のためなのか……
従属を拒むためなのか……」
拒否派の若者が応える。
「どっちでもない。
生きるためだ。」
未定派の老人が言う。
「つまり――
選ぶ理由は、生きる理由。」
ミナは胸を押さえる。
(……選び続けるって……
生き続けるってことなんだ……)
◆帝国側の反応
同時刻、帝国。
第六班全滅の報告が届く。
影の男が、皮肉げに笑った。
「面白い。」
部下が問う。
「本隊を送りますか?」
影の男は首を横に振る。
**「焦るな。
帝国は力で征服しない。
選択させて、崩す。」**
◆教会側の反応
遠く、白い塔の上。
教会の枢機卿が言う。
「帝国が動くなら……
我々は“信仰”を示す。」
補佐官が問う。
「村へ向かうのですか?」
枢機卿は、静かに頷いた。
◆王国側の反応
王都の会議室。
宰相が報告を受け、眉をひそめる。
「戦闘……?
戦闘の片鱗でも起きたのなら……
この村はもう国家問題だ。」
近衛長が問う。
「介入を?」
宰相の返事は短かった。
「準備だけしろ。」
◆ミナの決断
夜。
焚き火の炎が揺れる。
ミナは立ち上がり――
カイルの前へ進んだ。
目には迷いも戸惑いもある。
だが――
恐怖に負けた目ではなかった。
「カイル……
私……
もっと見たい……
もっと、知りたい……
もっと、選びたい……」
カイルは静かに見つめ返す。
ミナは続けた。
「だから……
村だけじゃなく……
世界に触れたい……」
リアが息を呑む。
セリアが目を細める。
ラウルが笑う。
カイルが、はっきりと言う。
**「なら歩け。
止まる理由なんて、どこにもない。」**
ミナは、涙を浮かべ、笑った。
──第165話へ続く




