第163話 兆し――決断の形
午前。
村の空気は静かで、
昨日までの揺れが嘘のようだった。
しかし――
それは、嵐の前触れだった。
◆外からの影
村の入り口。
見慣れない三人組が立っていた。
黒ずくめの衣服。
動きは静か。
表情は無。
その姿に、村人たちは武器を持たず後退した。
リアの目が鋭く光る。
「……帝国の……
特殊観測部隊……」
セリアが囁く。
「どうして、直接来るのよ……
観測者は見ているだけのはず……」
ラウルが顎を鳴らす。
「見てるだけじゃ飽きたんじゃねぇか?」
ミナは、一歩下がって息を飲む。
(……怖い……
でも……
逃げない……)
◆目的は“保護”と“拘束”
黒服の隊員が名乗った。
**「帝国観測局第六班。
本村状況確認および安全保持任務。」**
言葉は丁寧。
口調は冷静。
姿勢は脅威。
カイルが前へ出る。
「安全保持なんて言い方、
信用できねぇな。」
隊員が答える。
**「自由選択の継続は認める。
ただし――
危険因子の管理は必要だ。」**
その視線は、
ミナへ向いた。
村の空気が一瞬で張り詰めた。
ミナの呼吸が止まる。
カイルが低く言った。
「下がれ。」
◆戦闘、開幕
次の瞬間――
黒服の一人が無言で前進した。
速い。
人間ではない速度。
カイルがミナを後方へ押し出すと同時に、
足元の土が跳ね上がる。
刹那、
衝突――
ドンッ!!!!
村の入口に土煙が舞い上がる。
黒服の男が吹き飛び、
地面を抉った。
カイルの拳――
一撃。
リアが息を呑む。
「速すぎ……」
セリアが笑う。
「そうこなくちゃ。」
ラウルが肩を鳴らす。
「久々のショータイムだ。」
◆個別戦闘描写:カイル vs 黒服三人
黒服の二人が同時に襲来。
一人は上。
一人は地を滑るように下。
カイルは――
下を蹴り飛ばし、
上を肘で砕く。
肉体が爆ぜる音。
しかし黒服は倒れない。
機械的に立ち上がる。
カイルが言う。
「ただの人間じゃねぇな。」
隊員が答える。
**「帝国式戦闘補助術式搭載兵。
人間以上の人間。」**
カイルは笑った。
**「じゃあ――
壊し甲斐がある。」**
三人同時突撃。
土煙に撃音が混じる。
拳と刃と風が絡む音。
ミナは震えながら見ている。
(人が……
こんなにも……
強くなれるんだ……)
リアが目を細める。
「体術も魔力もない……
純粋な身体強化……
なのに……
勝ってる……」
セリアが息を吐く。
「カイルは……
元々化物なのよ……」
ラウルがぼやく。
「今さら言うな。」
一撃。
また一撃。
さらに一撃。
音の全てが破壊だった。
◆戦闘、決着
最後の黒服が地に叩き伏せられ――
動かなくなる。
静寂。
土煙が晴れ、
カイルは一歩も乱れていなかった。
呼吸すら乱れていない。
ミナは、呆然と見つめる。
(……人は……
こんな未来を、
選べる……?)
◆揺らぐ村人たち
村人が震える声で言う。
「帝国に勝った……?」
別の村人が呟く。
「いや……
これはただの始まりだ……」
未定派の老人が言った。
「……守られた……
守られたが――
守られた先にあるのは……
自由か……従属か……」
援助派の男も震える声で言う。
「……怖い……
でも……
誇らしい……」
拒否派の若者も唇を噛む。
「……この村は……
どこへ行くんだ……?」
◆最後の会話
ミナがカイルへ駆け寄った。
「怪我は!?」
カイルは、静かに笑った。
「怪我する相手じゃなかった。」
ミナは息を吸い込み――言った。
「ありがとう。」
その一言が、
村に響いた。
それは、
選択の先へ進む音だった。
──第164話へ続く




