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第16話 潜入の街・ブランツ
街へ裏門から忍び込むと、
外の喧騒とは打って変わって静かだった。
爆発の影響は城門周辺に限定されている。
つまり――「街に入れない」状況を作るための攪乱。
ミナを閉じ込めるためではなく、
逃げられなくするための封鎖。
俺は息を整え、低く囁く。
「ミナ、フードを深くかぶれ。絶対に顔を上げるな」
「は、はい……!」
リアは抜刀したまま、周囲に目を配る。
ラウルは表情を引き締め、
「先導は任せてください」と静かに告げた。
細い裏路地を進む。
人の気配はなく、異様な静けさ。
だが――敵の視線だけは感じる。
角を曲がった瞬間、リアが制止した。
「正面に“誰か”います。動きが不自然……警戒を」
相手はフードを被った人間。
だがミナを見た瞬間――口元が歪んだ。
「居た。回収対象」
戦闘の気配が“ゼロ”のまま殺意だけが放たれる。
ラウルが叫ぶ。
「ミナさん、下がって!!」
魔物でも、冒険者でも、兵士でもない。
“人”が“ミナの捕獲”を目的に動いている。
ここからが本番だ。
ミナ、リア、ラウル、そして俺。
全員が戦闘態勢に入り、
街の陰で息を潜めていた影との死闘が始まろうとしていた。




