第15話 一瞬の静寂、一触即発
城門前は混乱の渦に飲まれていた。
兵士と冒険者が応戦し、
一般市民の避難が始まっている。
ただし敵の姿は見えない。
攻撃だけが入っている――遠距離か、攪乱か。
リアが素早く状況を分析する。
「魔物の襲撃ではありません。これは……攪乱行為です。
何か、別の目的のための布石……!」
ミナは怯えながらも呟く。
「祠の……封印術式の書き換えと……関係しているのかも……」
俺の頭の中で、二つの可能性が繋がり始める。
●祠の術式が“ミナを誘引するため”に書き換えられた
●街への襲撃は派手で直接的だが“攻撃目的ではない”
――目標は戦争ではない。
――目標は“ミナの奪取”。
リアが小さく息を呑む。
「この混乱に紛れて……ミナさんを……!」
ミナは血の気が引いていく。
「わ、わたしのせいで……街が……」
俺は即座に否定する。
「悪いのはミナを利用しようとしている連中。
ミナのせいじゃない。絶対に」
リアも力強く肩に手を置く。
「ミナさん、あなたは被害者です。
誰もあなたを責めません。私たちが守ります」
ミナは涙をこらえながら頷き、杖を握った。
ラウルが真剣な声で言う。
「街の中には入らない方が安全です。
ギルドも――教会も――信用してはなりません」
「教会も?」
「今は説明する時間がありません。ですが……
“鍵の存在を知る勢力”は、味方でも敵でもあり得ます」
本当に厄介な状況だ。
都市のど真ん中に味方も敵も混ざっている可能性がある。
甘く動けば速攻で奪取される。
俺は決めた。
「街に入る。だが正面じゃない。潜伏だ。
ミナは絶対に表に出さない」
リアは迷いなく頷く。
ミナも震えながら答える。
「わ、わたし……皆と一緒なら……怖いけど……行けます……!」
風の匂いが変わる。
敵が近い。
俺たちは街の裏路地をめざして駆けだした。
――これが、“守るための旅”の本番。




