第145話 管理しない同盟――条件なき条件
朝霧が完全に晴れた頃、
村の外れに“場”が用意されていた。
机も椅子もない。
結界も、武装解除の儀式もない。
あるのは、
同じ距離で立つことだけ。
◆第三勢力、正式に現る
空間が、静かに裂ける。
昨夜の“影”が、
今度ははっきりとした姿を取った。
人型。
だが、国籍も宗派も感じさせない装い。
リアが、息を整える。
「……観測者……
いえ……
“緩衝勢力”ですね。」
影は、肯定した。
**「我々は、
名を持たない。」**
ラウルが片眉を上げる。
「便利だな。」
影は認める。
**「名は、
管理の始まりだから。」**
◆“条件なき条件”
セリアが、率直に問う。
「それで?
同盟?
庇護?
それとも、監視?」
影は、即座に否定した。
「いずれでもない。」
ミナが、戸惑いながら聞く。
「……じゃあ……
何を……?」
影は、淡々と告げる。
**「何もしない自由を、
互いに侵さない。」**
沈黙。
一見、何も約束していない。
だが、リアが理解する。
「……介入しない代わりに、
敵対もしない……
“緩衝”そのもの……」
影は頷く。
**「世界は、
管理するか、
破壊するか、
その二択に傾きすぎた。」**
◆ミナの力を巡る核心
影は、ミナを見る。
**「君の力は、
命令でも、
支配でもない。」**
ミナは、少しだけ緊張しながら答える。
「……私は……
誰かを、
動かしたくない……」
影は、静かに肯定した。
**「だからこそ、
拒否されない。」**
リアが、声を低くする。
「……世界が最も恐れる力……
“従わせない力”……」
セリアが歯を食いしばる。
「……利用されたら、
終わりね。」
影は、はっきりと言った。
**「だから、
我々は管理しない。」**
◆カイルの立場
影は、次にカイルへ向き直る。
**「君は、
力を持つが、
振るう理由を選ぶ。」**
カイルは、短く答える。
「それだけだ。」
影は、わずかに笑った。
**「それが、
最も管理しにくい。」**
◆合意――しかし、縛らない
影は、一歩下がる。
**「同盟は結ばない。
誓約もしない。
条約も作らない。」**
セリアが眉をひそめる。
「……信用しろって?」
影は、首を振る。
**「信用しなくていい。
観測し合えばいい。」**
リアが、息を吐く。
「……監視ではなく……
“確認”……」
ラウルが、乾いた笑いを漏らす。
「変な連中だな。」
◆別れ際の言葉
影は、去り際にミナへ告げた。
**「君が選び続ける限り、
我々は、
君を“事象”として扱う。」**
ミナは、首をかしげる。
「……それって……?」
影は、最後に言った。
**「利用できない、
という意味だ。」**
そして、姿を消した。
◆残された緊張
しばらく、誰も口を開かなかった。
セリアが、ようやく言う。
「……縛られなかった分、
責任が重いわね。」
リアが頷く。
「ええ。
自由とは、
常に選択を伴います。」
ミナは、胸に手を当てる。
「……でも……
嫌じゃない……」
カイルは、短く言った。
「進める。」
──第146話お願いします




