第142話 選ばれなかった者たちの道
朝霧が晴れると同時に、道が二つに分かれていた。
舗装された街道。
そして、人の手がほとんど入っていない獣道。
セリアが街道を見て言う。
「普通なら、こっちよね。」
リアは獣道に視線を向ける。
「でも、こちらは“管理されていない”。
地図にも、正式な記録にも載っていません。」
ラウルが笑う。
「最近、
“管理されてない”って言葉が
褒め言葉に聞こえてきたな。」
ミナは少し考えてから、カイルを見る。
「……どっちに行くの?」
カイルは即答しなかった。
地面に残る足跡、
空気の流れ、
微かな魔力の歪み。
そして、獣道の奥――
人の気配。
「あっちだ。」
◆管理されない村
獣道を進んだ先にあったのは、
小さな集落だった。
柵は壊れかけ、
建物も古い。
だが、人は生きている。
警戒した目でこちらを見るが、
敵意はない。
村の代表らしき中年の男が、前に出た。
「……旅の方か。」
リアが一歩前に出る。
「通りがかりです。
休息と、水を分けていただければ。」
男は、少し迷ってから頷いた。
「……金はいらん。
ただ――
巻き込まれたくない。」
その言葉に、
全員が一瞬だけ沈黙する。
◆“選ばれなかった”人々
焚き火のそば。
村人たちは、ぽつぽつと話し始めた。
「王国は来ない。」
「教会も来ない。」
「勇者?
昔、来たことはあるが……
何も変わらなかった。」
ミナが、そっと聞く。
「……じゃあ……
どうして、ここに?」
老婆が答えた。
「選ばれなかったからさ。」
笑いも、皮肉もない。
事実としての言葉。
◆異変の兆し
リアが、低く言う。
「……この村……
守られていないわけじゃない……」
セリアも気づく。
「外から、
“近づきにくい”感じがある。」
ラウルが地面を蹴る。
「……結界でも、
呪いでもねぇな。」
カイルは、村の外れを見る。
**「誰かが、
“ここを壊さないようにしている”。
だが――
守ってもいない。」**
中途半端な力。
それが、
一番危険だった。
◆夜――最初の選択
夜。
村の外で、
異様な影が動く。
人型。
だが、村人ではない。
リアが息を呑む。
「……傭兵……?
いえ……
装備が、統一されすぎている……」
セリアが剣を抜く。
「……どこかの勢力ね。」
ミナが、小さく言う。
「……この村……
“選ばれなかった”けど……
狙われてる……」
カイルは、剣に手をかけた。
「選ぶぞ。」
誰を守るか。
どこまで関わるか。
どこから、引くか。
これは、
世界に選ばれる話じゃない。
“自分で選ぶ”話だ。
──第143話へ続く




