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第14話 街へ戻る道で

祠から離れた森道を、慎重に進んでいく。


ミナはまだ体力が戻りきっていないが、

リアの手を握りながらしっかり歩いている。


ラウルは周囲を見渡し、低い声で言った。


「敵の追跡は……今のところありません。

 ですが、大陸規模で“鍵”を探している勢力がいるなら……

 街へ戻るのも安全とは限りません」


リアが真剣な表情で尋ねる。


「ラウルさん、祠でのあの“召喚陣”…

 ミナさんを誘引するためのものだと言いましたが、

 ミナさんが“鍵”だというのはどういう意味なのですか?」


ラウルは苦悩の表情を浮かべ、すぐには答えない。

代わりにミナを見た。


ミナは震えながらも、逃げずに視線を返す。


「わたし……何ができるんですか……?

 どうして魔王軍は、わたしを“殺さずに連れ帰れ”って……?」


沈黙。

風の音すら張り詰めるほどの緊張。


ラウルはついに口を開いた。


「ミナさん。あなたの中には“封印の魔力”が宿っています。

 それは、魔王軍にとって最も都合が悪い封印を解く力――

 あるいは、“別の何か”を解放する力です」


「別の……何か……?」


「詳しくは、まだ断定できません。

 しかしミナさんは、魔王軍だけでなく教会にとっても――

 利用価値のある存在です」


リアは剣の柄を握りしめ、声を鋭くする。


「それはつまり、ミナさんの意思に関係なく争奪される……?」


「……はい」


ミナは俯き、指先が震え始める。


だが、今は泣かなかった。


「でも……怖いけど……

 逃げるだけじゃ、もっと嫌です……

 リアさんと……カイルさんと……一緒にいたいから……」


その言葉に、俺とリアは迷いなく答えた。


「なら守る」「絶対に」


それで十分だった。


ミナの顔に、ほんの小さな笑顔が戻る。


やがて街の城壁が視界に入る。


リアが肩の力を緩める。


「もうすぐです。街に入れば休めます。

 今日は依頼完了の報告だけして、すぐ宿へ――」


その瞬間だった。


ドン――と地響き。

街の方角から黒煙が上がる。


ラウルが青ざめる。


「……何が……?」


ただの煙ではない。

魔力が帯びている。

爆発痕から立ち上る“魔族の魔力”。


俺は瞬時に判断する。


「走るぞ。街で何か起きてる」


ミナは息を呑み、リアは剣を抜く。


街へ向かって駆けだす。


休息の余地は、もうどこにもなかった。

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