第132話 通りすがりの剣――評価が入れ替わる瞬間
静寂は、数秒続いた。
そして――
ざわめきが、爆発した。
◆市民の反応
「……助かった……」
「今の一撃……
勇者より、ずっと綺麗だった……」
「無駄がなかった……
あれ、本物の剣だ……」
恐怖ではない。
熱狂でもない。
**“納得”**だった。
セリアは小さく息を吐く。
「……終わったわね。」
ミナは胸を押さえ、囁く。
「……評価が……
ひっくり返った……」
リアは冷静に言う。
「“誰が守ったか”は、
今、全員が見ました。」
◆勇者パーティの取り繕い
勇者が、慌てて前に出る。
「ま、待て!
あれは……
連携の一環だ!」
ざわめきが、冷たい笑いに変わる。
「連携?
あの人、呼ばれてなかったぞ。」
「危険を放置してたのは、
どっちだ?」
僧侶が口を挟む。
「神の導きにより――」
誰かが遮る。
「その神、
さっきは何してた?」
笑いが漏れる。
完全に、空気が勇者側から離れた。
◆教会の“圧”が露骨になる
神官が表情を引き締め、
カイルを睨む。
「無断介入は、
秩序への挑戦です。」
カイルは一歩前に出る。
**「秩序って、
人が死ぬのを待つことか?」**
神官が言葉を失う。
ミナが、はっと息を呑む。
セリアが、剣の柄を握り直す。
観客の中から、声が上がる。
「……そうだ……
危なかったのは、俺たちだ……」
「誰が“守った”かは、
もう分かる……」
◆王国役人の判断ミス
王国役人が慌てて前に出る。
「この件は――
王国が預かる!」
その瞬間、
別の声が飛んだ。
「預かる?
じゃあ、説明してくれるんだな?」
商人だ。
「どうして、
弱った魔物を使った?」
「どうして、
結界が壊れるまで放置した?」
「どうして、
あの剣士が動かなければ、
誰も助けなかった?」
質問が、止まらない。
役人の額に、汗が浮かぶ。
◆勇者の“決定的失言”
追い詰められた勇者が、
ついに吐き捨てる。
「……だから言っただろ!
あんなの、
想定外だったんだ!!」
その瞬間。
空気が、完全に冷えた。
◆ざまぁ成立(第一段階)
誰かが、静かに言った。
「……想定外?
俺たちが、
危険に晒されることが?」
「守る側の言葉じゃないな……」
「勇者って……
こういう人だったのか……」
拍手は起きない。
罵声もない。
ただ、失望が広がる。
それが、最も残酷な評価だった。
◆カイルの一言
勇者が、震える声で叫ぶ。
「お前は……
何者なんだ……!」
カイルは、剣を納め、
ただ答えた。
「通りすがりだ。」
だが、もう誰も
それを信じてはいなかった。
◆世界が“記録”する
観測者でも、神でもない。
人々の記憶が、記録する。
危険を放置したのは誰か
守ったのは誰か
言い訳をしたのは誰か
それは、消せない。
リアが小声で言う。
「……これで、
勇者神話は“不可逆”です。」
セリアが微笑む。
「最初の“ざまぁ”としては、
十分ね。」
ミナは、カイルの背中を見る。
(……この人は、
名乗らなくても……
世界を動かす……)
──第133話へ続く




