表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/71

第13話 祠の秘密

フェンリルギアを撃退した後、

ラウルは息を整えながら祠の方向を見た。


「……戻らなければいけません。

 祠に“何が起きたのか”を確かめない限り、街へ戻るのは危険です」


ミナは怯えながらも小さく頷いた。


「わ、わたしのせいで……皆を巻き込んでしまって……」


「違う」


俺ははっきり遮る。


「狙われる理由を知らずに怯える方が危険だ。

 知ることで初めて守れる。……一緒に行こう」


リアも優しく支える。


「大丈夫です。ミナさんを見捨てる理由なんてありません」


ミナは涙を拭きながら、

今度は逃げずに祠へ戻る道を選んだ。


祠に戻ると――異変は明確だった。


祭壇の上に、黒い文様が刻まれていた。


硬い石に刻まれたにも関わらず、

まるで「生き物の皮膚」のように脈を打っている。


ミナが震える声で呟く。


「これ……召喚の印……?

 だ、でも……魔族の術式と……教会式の結界が混ざってる……?」


ラウルは膝から崩れるように座り込む。


「……間に合わなかった……!

 魔王軍は祠を封印するのではなく、**“鍵を誘引する術式”**に書き換えたのです……!」


「鍵……って、わたし……?」


その瞬間、文様が淡く光り始めた。


祠の奥から、かすかな囁き声。


――ミナ・シュメール。還れ。


ミナは立っていられず膝をつく。


リアが慌てて抱き支える。


「ミナさん!! 気を確かに!!」


ミナは必死に涙をこらえながら叫ぶ。


「こ、怖い……怖い……でも……一緒にいたい……!

 リアさんと……カイルさんと……旅を……したい……っ!!」


俺は祭壇に左手をかざす。


「なら十分だ」


右手で祠の床を叩いた。


「《理破壊:禁術領域バースト・ロウ》」


祠の文様が砕け散り、黒光りは弾け飛ぶ。


ミナはリアの腕の中でぐったり倒れたが――

呼吸は安定していた。


ラウルは涙のように汗を流しながら、静かに言う。


「……やはり、ミナさんは“鍵”なのです。

 封じられた“何か”を解く存在。

 だから魔王軍も、教会も――」


リアが鋭く反応した。


「教会も……? ラウルさん、それはどういう――」


「すぐには説明できません。ですが――

 街へ戻れば、ミナさんは安全ではありません」


空気が凍った。


ミナを守る旅は、

ただの冒険ではなかった。


大陸全土の陣営を巻き込む争奪戦。


その中心に――ミナがいる。


俺は静かに仲間の方を向く。


「街へ戻る。だがギルドでも宿でも、ミナは見せない。

 守るために動く――戦うためじゃなく」


リアが力強く頷く。


「はい。ミナさんは絶対に守ります」


ミナは汗だくのまま、弱い声で微笑んだ。


「わたし……一緒にいて……いいんですね……?」


「当たり前だ」


答えは、全員が同時に口にしていた。


祠の石畳に三人の影が重なる。


守るべきものを守る旅路が――

本当の意味で始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ