第123話 第四門――存在の境界と“監視者の本体”
第三門を抜けた先には、
階段も扉もなかった。
ただ、光のない黒い空間が広がるのみ。
ラウル「……真っ暗だな。ここ本当に道か?」
リアが数式のような光を浮かばせながら言う。
「違います……ここ、“空間が存在していません”。
ただの虚無です。」
ミナは不安げに腕を抱く。
「……息がしづらい……ここ、変……」
セリアも周囲を警戒して剣を構えながら言う。
「動くな……足場、あるようで……ない。」
彼女の言う通り、
地面はある“つもり”で存在しているだけだった。
踏みしめた感覚も、重力も、
すべてが曖昧に揺れている。
カイルだけは一歩進んで、呟いた。
「……境界か。」
リア「境界……?」
カイル「“存在する”と“存在しない”の境目だ。」
その言葉の意味を問う暇もなく、
虚無の中心が光った。
白ではない。
黒でもない。
“何かが見ようとしてくる光”。
そして、その光が形をとった。
◆監視者の“本体”の出現
空間がひび割れ、
光が人型へ集まる。
長い黒髪。
顔は仮面のように白く、
瞳だけが深い青。
背に浮かぶ六つの輪――
それはまるで“世界法則”の象徴。
ミナが息を呑む。
「……監視者……?
でも……今までのと雰囲気が違う……」
リアは声を失い、震えながら言う。
「違う……今までのは“端末”。
これは……本体……!」
ラウル「え、生身だったのかよあいつら!?」
セリア「生身……ではないわね……これ……」
存在の気配が“人”のそれではなかった。
監視者本体は静かに口を開く。
**「第四門へようこそ。
“存在の審査”を開始する。」**
リアの背筋が凍る。
「存在の……審査……?」
監視者は五人を見渡し、淡々と言った。
**「この門では、
“お前たちが世界に存在してよい理由”を問う。」**
ミナ「え……そんな……」
セリア「理由なんて……わざわざ言う必要……」
だが監視者は続けた。
**「存在理由を持たぬ者は、
この世界から“消える”。」**
空気が凍る。
ミナが震えながら後退しそうになるのを、
カイルが肩を掴んで止めた。
彼の声は落ち着いていた。
「……試す相手を間違えてる。」
監視者の瞳が、初めて揺れた。
◆塔の本来の目的
監視者は淡々と語り始める。
「この塔は古来より、
“世界に不要な存在”をふるい落とす場。
天災、暴走魔力、異能の失制御……
世界を乱す可能性ある者は、
ここで選別される。」
リアは目を見開く。
「……だから“ミナ”が反応するんだ……
あなたは“開放者”。
世界を変える力を持つ存在だから……!」
ミナの目が大きく揺れた。
監視者は彼女を見て静かに言う。
「お前の力は、
世界法則を破壊しうる危険因子。
排除可能性は――“高”。」
その言葉に、ミナの呼吸が止まりかける。
セリアが一歩前に出て叫んだ。
「ふざけないで!ミナは危険なんかじゃない!」
監視者は薄く首を振る。
**「危険かどうかは“本人の意思”ではなく、
“世界の反応”が決める。」**
ミナの瞳が揺らぐ。
(やっぱり……私は……
いるだけで迷惑……?)
そんな思考が根を張り始めた瞬間。
カイルが前に出た。
ミナの前に立ち、監視者と対峙する。
◆カイル vs 監視者本体(前哨戦)
監視者
「カイル・ヴァン・エルスト。
お前は例外。
お前の存在理由は“強さ”だけで成立する。」
カイル
「そんなもので存在が許されるなら、
俺はとうに消えてる。」
監視者
「……理解不能。」
カイル
「そりゃあ、お前は“正しさ”だけで判断してるからだ。」
ミナ、セリア、リア、ラウルは息を呑む。
カイルは続けた。
**「存在理由なんて、
後からいくらでも作れる。」**
監視者の瞳が揺れた。
カイル
「俺がここにいる理由は――
俺が“いたいと思ったから”。」
セリアの胸が大きく跳ねる。
ミナの目に熱い涙が滲む。
リアが震える手でメモをようやく止めた。
ラウルは「か、カッコよすぎるだろ……」と呟く。
監視者は静かに言う。
「では――証明せよ。」
塔全体が震え、
空間がひび割れ、
黒い裂け目が広がる。
監視者の足元に陣が描かれ、
戦闘態勢へ移行する。
◆ミナの体が“勝手に”反応する
ミナの身体に青い光が走る。
ミナ「え……なんで……
止まらない……!」
リア「ミナさんの力……
塔に“呼ばれてる”……!!」
セリア「どういうこと!?」
リア
「ミナさんは“開放者”。
彼女の力は“塔そのもの”と繋がっている!!」
塔の光とミナの魔力が共鳴し、
空気が震える。
ミナは胸を押さえ、涙をにじませながら言った。
「イヤ……いや……
こんなの……嫌……
また私は道具みたいに扱われる……!!」
カイルは振り返り、
ただ一言だけ告げた。
**「ミナ。
“選ぶのはお前だ”。」**
その瞬間だけで、
ミナの暴走が止まった。
カイルは剣を構え、監視者に向き直る。
「さぁ――始めようか、第四門。」
監視者の瞳が強く光る。
そして戦闘が始まる。
──第124話へ続く




