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第110話 「剣が語る」――世界会議開幕

第3章 世界会議編 開始

王都の議事堂は巨大だった。

人の声ではなく、権力の重さが満ちている。


だが――カイルは微塵も怯えていなかった。


ミナの隣。

その肩の前、庇う位置で立つ。


周囲を囲むのは三国の貴族、軍、枢機卿、魔導師、勇者パーティ。

その視線は――ほとんどがミナではなく、


カイルの剣へ向けられていた。


まるでこう言いたげだ。


「お前ごときが、世界を相手にするのか」


構わない。

彼は昔から、相手が誰だろうとやることは変わらない。


守るものを、守るだけだ。


王が口を開いた。


「カイル・ヴァン・エルスト。」


名指し。

議場がざわめく。


(……やっと本題か。)


カイルの目は王とぶつかる。


王は続ける。


「あなたは国家を越境し、遺跡を暴き、統制評議会の執行官を退けた。

――目的は何だ。」


嘲笑混じりの声が横から刺さった。


勇者アレンだ。


「答える必要はねぇだろ王よ。

こいつは女に縋るただの弱者だ。」


貴族らも続く。


「保護対象に本気で肩入れした愚者。」


「野心も、誓約もない半端者。」


ミナの手が震えかけた瞬間――


カイルが一歩、静かに前へ出た。


その気配だけで、空気が変わった。


「目的?」


カイルは短く息を吐き、答えた。


「俺は世界の許可をもらうために戦っていない。」


議場が静まる。


「俺が剣を抜く理由は一つ。

――ミナを守るためだ。」


アレンが嘲る。


「それが“理由”か?

笑わせる。」


カイルの視線がそちらへ向く。


冷たい。

鋭い。

迷いがない。


「お前に笑われる筋合いはない。」


アレンが立ち上がろうとした瞬間――


カイルは空気を断ち切るように前へ踏み込んだ。


剣は抜かない。

だがその一歩だけで、十人以上の兵が後ずさる。


リアとラウルですら息を呑む。


「俺は認めさせに来たんじゃない。」


カイルの声が議場を震わせる。


「――理解させに来た。」


その瞬間、魔導師団が詠唱を開始。


兵が一斉に武器を構える。


王が止めるより先に――


勇者アレンが剣を抜き、飛び掛かった。



(来い。)


カイルは一歩踏み込み、剣を抜く。

金属音と同時に空気が割れた。


アレンの攻撃は速い。

訓練された勇者の連撃。


だが――


カイルにはすべて遅い。


一太刀。

二太刀。

三太刀。


全て受け流し、無駄なく捌き、足を止めない。


アレンの顔が歪む。


「なぜ避けられる!?」


カイルは無表情で答えた。


「俺は“勝つため”に戦ってきた。

お前は“称賛されるため”に剣を振ってきた。」


言葉と同時に、カイルの剣先がアレンの喉元に止まった。


議場の時間が止まる。


アレンが声を震わせる。


「……殺すのか……?」


カイルは静かに首を振った。


「違う。

負けを知れ。

そしてもう二度、弱者を切り捨てるな。」


剣を引く。


倒れたのはアレンの膝の方だった。


貴族、軍、教会、全員が黙る。


ミナがカイルを見る。


カイルは振り返らず言う。


「この先、道を決めるのは世界じゃない。

ミナだ。」


王が呟く。


「……彼女を恐れていたのは、我々ではなく――

我々自身の弱さか。」


カイルは淡く笑う。


「理解が早い。」


王は剣を掲げ、宣言した。


「カイル・ヴァン・エルスト。」


沈黙。


「――“世界公認の守護剣”として認定する。」


議場が揺れた。


ミナの瞳が大きくなる。


カイルは答えない。

ただ、ミナのもとへ歩き、短く言った。


「終わった。」


ミナの声は小さく震えていた。


「……ありがとう。」


カイルは微笑む。


「まだ終わりじゃない。

ここから始まる。」


──第111話へ続く

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