第109話 王都へ――世界が見つめる中で
◆第二章:蒼紋都市編 完
翌朝、砂漠の空は澄み渡り、朝日が地平線を染めていた。
夜の寒さは消え、砂が金色に輝く。
ミナは目を開け、深く息を吸う。
(……こんなに空気が清々しいのに。
胸の奥はまだざわついてる。)
王都へ向かうことは決まった。
でもそれはただの移動じゃない。
**“世界に姿を見せる旅”**だ。
不安と覚悟が混ざる中、ミナは立ち上がる。
すると、すぐそばで――カイルが剣を磨いていた。
気配は静か。
でも、その背中は強く、頼もしい。
ミナ「あの……おはよう。」
カイル「……起きたか。」
ミナ「うん。」
短いやりとりなのに、言葉以上の安心がある。
ミナは少しだけ微笑む。
「ありがとう。
……昨日、私が迷った時、止まってくれたから。」
カイルは手を止めず、答える。
「止めたんじゃない。
“選べる時間を作った”だけだ。」
ミナは胸がじんわり温かくなるのを感じた。
◆準備と出発
少し遅れてラウルとリアも起きる。
ラウルは伸びをしながら大声で言う。
「王都かぁぁ……!
よし!見せるか、俺たちの旅の結果!」
リアは淡々と荷物整理をしながら言う。
「頼むので、王都到着直後に問題を起こすのは控えてくださいね?」
ラウル「えっ、俺がやる前提!?」
リア「やる前提です。」
カイル(無言で頷く)
ラウル「お前もか!!?」
ミナくすりと笑う。
その笑顔に、空気が柔らかくなる。
◆旅路――緊張と静けさ
四人は砂漠を抜け、石畳の街道へ出る。
王都へ続く大路。
街道沿いは整備され、遠くには旅商人や巡回騎士が行き交う。
しかし――様子が違う。
リアが観察して呟く。
「……見てください。
人が多いのに、会話が少ない。
全員、何かを恐れているような……。」
ラウルは視線を巡らせながら小声で言う。
「視線……こっち来てるな。」
ミナの足が一瞬止まる。
見知らぬ人たちの視線。
好奇心。
恐れ。
そして――期待。
(……私、ただ歩いてるだけなのに……)
心がざわつく。
カイルが気づき、隣に立つ。
「胸を張れ。」
ミナ「……うん。でも……」
カイルは短く言う。
「お前は“脅威”として見られてるんじゃない。
“答えを持つ者”として見られてる。」
ミナの瞳が揺れる。
(そう……なら……)
深く息を吸い、また歩き出す。
◆王都の門
到着した王都は、壮大だった。
高くそびえる白い城壁。
空へ伸びる塔。
石造りの門には三国の紋章が刻まれ、兵が何列にも並んでいる。
その規模にラウルが固まる。
「……笑えねぇ規模だなこれ。」
リア「完全に“国家行事レベル”ですね。」
兵士たちは武器を抜かず、ただ静かに道を開ける。
やがて――
奥から騎士団長と思われる人物が前に出た。
鎧の紋章。
背筋の伸びた姿勢。
しかしその視線は、戦士ではなく――判断者のそれだった。
騎士団長「――ミナ・シュメール殿。
そしてその同行者たち。」
ミナは緊張で喉が乾くのを感じながら答える。
「……はい。」
騎士団長は深く礼をし、言った。
「ようこそ――“世界の中心”へ。」
門がゆっくり開く。
音が響き、空気が変わる。
王都全体が――彼女を待っている。
ミナは震える足を一歩前へ出した。
その瞬間。
仲間たちの足音が、すぐ後ろで重なる。
ミナは小さく、しかし確かに呟く。
「行こう。
未来を決める場所へ。」
空は晴れ渡り、風はやさしく吹く。
世界は動き始めた――
彼女の選択を中心に。
――第110話へ続く




