第108話 追跡・宣告・そして世界会議
夜空を飛ぶ魔導偵察機――
星の光を反射しながら、無数の軌跡を描きつつ四人の上空を旋回する。
翼はなく、浮遊と魔力駆動で制御される兵器。
リアが即座に魔導式分析を始める。
「識別シンボル確認……王国章、教会印、帝国紋章……!」
ラウルが呆れ混じりに叫ぶ。
「三国共同とか……俺たちいつの間に世界規模の指名手配者になった?」
ミナは手を胸に当てる。
(逃げられない。
もう、隠れて生きる道じゃない……)
カイルは空を見上げたまま静かに言う。
「近づいてくる。交渉か、警告か、捕縛か。」
リアが小さく息を呑む。
「……どれにせよ、準備が必要です。」
魔導偵察機の中心部に光が集まり、立体映像が射出される。
夜空に巨大な紋章――世界三勢力合同の封印印章が浮かぶ。
そして、響く声。
◆世界宣告
『ミナ・シュメール及び同行者へ告ぐ。』
声は金属とも魔力ともつかない響き。
威圧ではなく、決定事項を告げる冷静さがある。
『あなたたちの行動、魔力現象、遺跡反応を確認した。』
『世界は、あなたを“脅威”として定義するか、“希望”として認定するか――判断を迫られている。』
ミナは拳を握った。
(また……誰かが決めるの……?
私じゃなく……?)
声は続く。
『三日後――王都中心議会にて“世界会議”を開催する。』
リアの目が見開かれる。
「世界会議……!
国家の未来と魔力体系すら変える規模……!」
ラウルがぼそり。
「いや俺ら一般パーティの旅人だったよな……?」
声は最後の宣告を落とす。
『――ミナ・シュメール。』
『あなたには“出席する義務”がある。』
偵察機が一斉に去り、夜は再び静かになる。
けれど、その静けさはもう“平和”ではなくなっていた。
◆夜の会話
焚き火の火が弾ける。
四人は砂漠の冷えた夜気の中、輪になって座る。
ラウルは腕を組み、真顔で言った。
「行くのか?会議に」
ミナは少し考えて――そして答える。
「うん。
逃げても……追われるだけだから。」
リアは静かに微笑む。
「強くなりましたね、ミナ。」
ミナは照れたようにうつむき、少し笑う。
「ううん。
強いんじゃなくて――
強く“なりたい”だけ。」
カイルが言う。
「それが強さだ。」
ミナは顔を上げる。
「でも……ひとつだけ怖い。」
リアとラウルは黙って耳を傾ける。
ミナの声は震えていた。
「……私は“誰かを救えるかもしれない”のに……
“誰かの自由を奪う存在”にも……なるかもしれない。」
焚き火がぱちりと鳴る。
カイルの声は静かだった。
「答えは今出す必要はない。
ただ、歩く中で見つければいい。」
ミナ「……見つからなかったら?」
カイルは迷わず答える。
「その時は――お前が決めるんじゃなくていい。」
ミナは目を見開く。
カイルは火を見つめたまま続けた。
「俺たちが、お前と一緒に決める。」
ラウル「おうとも!」
リア「当然です。」
ミナの目に涙が浮かぶ。
「……ありがとう。」
◆星空の下、決意
風が吹き、砂が夜空へ舞う。
ミナは立ち上がり、空を見上げた。
「戦いに行くんじゃない。」
声は弱くない。
「証明しに行く。
“未来は選べる”って。」
カイルも立ち上がる。
ラウルとリアも続く。
「じゃあ――」
ラウルが拳を突き上げる。
「王都に殴り込みだ!!!」
リア「言い方!!」
ミナ「……ふふっ。」
カイル「行こう。
次は歴史の中心だ。」
星は見守るように輝いていた。
旅は終わらない。
むしろ――
ここから本当の始まりだった。
──第109話へ続く




