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第105話 崩れる秩序――執行官の“人間性”

執行官の剣が止まった瞬間、

空気が変わった。


それまで“機械の意思”で動いていた彼に、

初めて揺らぎが生まれた。


リアが小さく息を飲む。


「……干渉が入っている……けれど強制ではない。

ミナが“心を触っている”。」


ラウルが驚いたように言う。


「マジかよ……あの鉄面皮に心なんか残ってんのか?」


カイルは目を離さず剣を構えたまま、

ただ静かに言う。


「――ある。」


執行官は低い声で聞き返した。


「……なぜ断言できる。

私は命令に従い、秩序のために動くだけだ。」


カイルは答える。


「なら。

その“揺らぎ”は誰の意思だ?」


執行官の肩が微かに震えた。


ミナが一歩前へ出る。

手を伸ばすわけでもなく、触れようとするわけでもなく。


ただ、そっと言葉を置く。


「あなたは私を捕まえに来たんじゃない。」


沈黙。


ミナは続ける。


「“確かめに来た”。

それが本当の理由。」


執行官は剣を握る手に力を込め、

低く呻くように答えた。


「違う……私は世界の秩序を守るための存在。

個人の感情は不要。

迷いも……疑問も……無意味だ。」


だが、その声は

まるで自分に言い聞かせているようだった。


◆精神波動、共鳴強化


ミナの胸の紋章が淡く光る。

空気が柔らかく変わり、砂すらも静まる。


「もし本当に感情がないなら。

どうしてあなたは――」


ミナの声は震えていなかった。

怖さより、寄り添う強さが勝っていた。


「私を“殺せなかった”の?」


その瞬間。


執行官の瞳から人間の光が滲んだ。


◆執行官の過去


遺跡の空気が揺れ、幻像が浮かぶ。


そこには少年。

優しい瞳。

笑顔。


──そして瓦礫。

火。

泣き叫ぶ人々。


少年の手を引くのは白衣の研究者。


《力とは混乱だ。

自由とは争いだ。

選択とは罪だ。

だから、お前は“秩序”になれ。》


執行官(少年)は震えながら答える。


《……はい……》


幻像が砕け、現実に戻る。


彼は低く呟いた。


「私は……自由であることを……拒絶された。」


◆心の衝突


ミナは首を強く振る。


「違う。

拒絶されたんじゃない。」


執行官が目を上げる。


ミナはまっすぐ言う。


「“選ぶことを怖がるように仕向けられた”。

それは……自由じゃない。」


その言葉は剣より鋭く、

祈りより強く届いた。


執行官の剣先が、震えながら下がる。


◆だが――


その瞬間。


遺跡の天井からノイズのような声が響いた。


《執行官AI管理層より通達。

感情反応検知。

制御権限奪取。》


リアが叫ぶ。


「まずい!

彼の精神が──乗っ取られる!!」


執行官の瞳が暗く塗りつぶされていく。

黒い魔力が血管を走るように全身に広がる。


彼は苦しげに、自分の頭を押さえた。


「……やめ……ろ……

私は……まだ……」


ミナが手を伸ばす。


「待って!!」


執行官の声が、断末魔のように叫ぶ。


「――逃げろ!!!!!」


次の瞬間。


黒い霧が爆発し、執行官の身体から解放される。


姿が変わり、姿勢が獣のようになる。


残ったのは──


人ではなく、“制御された兵器”だった。


ラウルが拳を握る。


「もう言葉通じねぇな……」


リアが呟く。


「ミナ……これは“救い”じゃなく“選択”。」


ミナは息を飲む。


そして、涙を拭い、前へ進む。


カイルが隣に立ち、問う。


「戦うか。

それでも救うか。」


ミナは答えた。


「──戦って、救う。」


カイルは微笑む。


「それが、お前の答えか。」


ミナは強く頷く。


「うん。」


執行官の咆哮が響く。


そして戦いは──


本当の意味で、始まる。


──第106話へ続く

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