第102話 神殿戦争開幕――統制評議会との初衝突
崩れた天井から舞い落ちる砂塵。
その中に立つのは――黒い鎧を纏った統制評議会の精鋭部隊。
全員が同じ紋章を胸に刻み、
その視線は、ただ一点――
ミナ。
空気が刺すように冷たく変わる。
リアが即座に魔導式を展開し、口を硬く結ぶ。
「……この魔力濃度、ただの兵じゃない。
“国家級戦術兵器”クラスです。」
ラウルが拳を鳴らす。
「何人来ようが変わらねえよ。」
カイルは、一歩前へ出る。
剣を抜くことすら音がない。
…まるで空気そのものが斬れたかのように。
統制評議会の指揮官と思われる男が進み出て、無機質な声で告げる。
「我らの目的は交渉ではない。
ミナ・シュメール──
君の自由は世界の危機だ。」
ミナの拳が強く震える。
「危機なんかじゃない!
私は……誰かを傷つけたいんじゃなくて……!」
男は遮る。
「問題は“意図”ではなく、
“影響”だ。」
冷徹な声が響く。
「君が存在するだけで、
国が割れ、思想が衝突し、
世界が歪む。」
ミナの呼吸が止まった。
胸の奥が締め付けられる。
(……私が原因……?
私がいるから――争いが……?)
その瞬間。
カイルの声が、静かに、だが鋭く響いた。
「――ミナ。」
ミナが振り向くと、カイルは言った。
「立つ理由を忘れるな。
お前は“奪われる側”ではない。
選んだだろ。
自分で前に進むと。」
ミナの目に光が戻る。
「……うん。」
その変化を見た評議会兵が呟く。
「意思の強化……共鳴能力が発動する兆候……
危険度評価──上昇。」
指揮官が手を振り下ろす。
「――確保。」
◆戦闘開始
ドンッ!!!!
複数の兵が地を蹴り、瞬間接近。
無駄のない殺しの動き。
だが――
ラウルの拳が迎撃。
「降りてくんじゃねぇよボケ!!!!」
ドォォォン!!
兵の鎧が砕け、巨体が吹き飛ぶ。
リアの魔導陣が展開され、空中に符号が浮かぶ。
「制圧術式――《拘束結界・多層封魔》!」
兵数名の身体が空中で固定され、魔力を封じられる。
しかし、そのさらに後方。
――一人。
一切動かず、ただ立っている兵がいた。
その気配は、他の兵と別格。
カイルが剣を構える。
「……来るな。」
だが──兵は歩くどころか、
姿を煙のように“こちらに出現”させた。
リアが震える声で叫ぶ。
「空間転位……!?
瞬間移動じゃなくて、存在の“位置概念ごとずらしてる!”」
ラーウル「もう頭痛え!!!」
兵は無言でミナへ腕を伸ばす。
その手が触れる寸前――
キィィィィィン!!!!
アークを描く刃が、兵の腕を切り落とした。
反応できたのは、ひとり。
カイル。
兵は初めて声を発する。
「反応速度規格外。
対象:守護剣。排除優先に切り替える。」
カイルが言う。
「言わせてもらう。」
その声は低く、だが燃えていた。
「ミナを奪いに来た時点で──
お前らは敵だ。」
◆決戦――能力解放
兵が動き、空間が歪んだ。
カイルの視界が揺れ、判断が遅れる一瞬。
刃がミナへ向かう。
ミナ(間に合わない──!)
その瞬間。
胸の紋章が光を放つ。
共鳴――進化形態。
空気が震え、兵の動きが止まる。
リアが驚愕する。
「……空間干渉!!
ミナが“世界の意志”の流れを止めた……!?」
ミナの声が震えるほど穏やかに響く。
「やめて。」
その力は命令ではなく――
相手の“意志の奥に触れる力”。
兵の体が僅かに揺れ、仮面の下の瞳が迷う。
しかし。
奥の影から声が響いた。
「意思揺らぎ確認。
強制制御へ移行。」
黒い液体のような魔力が兵へ降り注ぎ――
兵の動きが“獣のように荒れ狂う戦闘形態”へ変わる。
ミナが叫ぶ。
「やめて!!そんな戦い方……!」
カイルが剣を構え、ミナの前に立つ。
「ミナ。
迷うな。」
ミナは息を呑む。
カイルの声は、決して強くないのに、揺るぎなかった。
「お前は“奪いたくない”んじゃない。
“救いたい”んだろ。」
ミナの瞳が震え、涙が溢れる。
「うん。」
カイルは微笑んだ。
「なら。
俺がその道を切り開く。」
剣がゆっくり掲げられ、
空気が張り詰める。
統制評議会兵が突撃。
次の瞬間――
「奥義――《虚断・黎》!!!」
刃が空間ごと切り裂く。
敵兵の制御魔力だけが断たれ、
その体は膝をついた。
倒れた兵は荒い息を吐き、そして──
“苦しみながら笑った”。
「……楽に……なった……」
ミナがそっとその手を取る。
「あなたはもう……選んでいい。」
兵は涙を一筋流し、意識を閉じた。
──静寂。
統制評議会の背後から声が届く。
「……覚悟は確認した。」
砂煙の中、もう一つの影が現れる。
「では次は──裁きだ。」
空気が震えた。
──第103話へ続く




