第101話 遺跡深層――目覚めるもの、眠らせたいもの
扉が開いた瞬間、空気が変わった。
砂漠の乾いた風とは違う──
深い場所の、静かで冷たい空気。
地下へ続く螺旋階段。
壁には古代語と、ミナだけが読める紋様が刻まれている。
リアが手を触れて呟く。
「ここは……研究施設。
でも宗教的でもあり、兵器庫のようでもある……
まるで文明が迷った痕跡。」
ミナはその文字を見つめる。
(……知ってる。
読める。
でも誰から教わったんだろう。)
指が震える。
そこには、こう書かれていた。
―『選ばれた存在ではなく、選ぶ者を造る』―
ラウルが後ろから覗き込む。
「なんだそれ。哲学か?」
ミナは小さく笑った。
「違うよ。
ここは“誰かを支配するため”じゃなく……
“支配という概念を壊すために造られた場所”。」
カイルの視線が鋭く動く。
「……つまりこの遺跡は、ミナと同じ思想の根源。」
ミナは頷く。
◆◆奥の部屋――巨大装置
階段を降りきった先に広がるのは、広大な空間。
中央には巨大な円柱状の装置。
まるで心臓のように脈動し、淡く輝く。
リアが息を呑む。
「……これは……“世界制御装置”……?
魔力、時間、認識……文明の中枢レベル……!!」
装置の周りには――
全身が石化した古代人たちが座っていた。
沈黙。
祈りの姿勢のまま、動かない。
ミナの胸が締め付けられる。
(眠っている……?
いや……“止められてる”。)
突然、装置が反応する。
光が強くなり、声が響いた。
《識別開始。
アクセス権限照合。》
全員が構える。
砂が舞い、紋章が描かれる。
《認証対象──ミナ・シュメール。
権限区分:継承候補。》
ミナの瞳が震えた。
「……継承……?
何を……?」
その問いに答えたのは――
機械ではなく、声。
だが声の主は、装置の中心に映し出されていた。
光から姿を成した女性。
美しく、落ち着き、どこか悲しげな顔。
ミナと同じ紋章を――その瞳に持つ存在。
◆◆古代文明の守護者
「ようこそ。
私たちが最後に残した希望。
──“選ぶ魂を持つ者たち”へ。」
リアが驚愕。
「人工精神……!?
いいえ、違う……魂がある……!」
カイルは慎重に問う。
「お前は……何者だ。」
女性は静かに答える。
「私は“記録と意思の最後の継承者”。
名を──
──一瞬。
ミナの胸が熱くなる。
「……エシア。」
女性は微笑む。
「そう。
あなたは覚えているのね。」
ラウルが驚愕。
「え、知り合い!?
前世とかそういう系!?」
ミナは答えられない。
胸の奥が焼けるように疼く。
(知らないはずなのに……
知ってる……
“この人を失った痛み”だけが鮮明……)
エシアは深く語り始める。
◆◆文明の真実
「この遺跡は、力の象徴ではなく“答え”だった。
“未来を支配する者”ではなく、
“未来を選べる者”を生み出すための場所。」
沈黙。
「だが──世界は恐れた。
選ぶ者は、従う者より危険だから。」
カイルが低く言う。
「だから今、ミナを奪いに来る勢力がいる。」
エシアは静かに頷いた。
「この世界は分断されている。
“選ぶ者を望む者”と、
“管理と支配こそ安定と信じる者たち”に。」
リアは震えた声で呟く。
「だからミナは……
“力”ではなく“象徴”なんですね。」
ミナの目が揺れる。
「……そんな……大それた存在じゃないよ……」
エシアは微笑む。
「大きな存在になる必要はない。
ただ──“選ぶことを諦めない者”なら十分。」
そして告げる。
◆◆継承
「ミナ。
問います。」
遺跡全体が反応し、風が吹く。
「あなたは『従う未来』と『選ぶ未来』──
どちらを手に取る?」
ミナは息を吸う。
涙が溢れそうになるほど重く、
でも迷わない。
「私は──選ぶ。」
エシアの手が光り、ミナの胸へ触れる。
光が走り、紋章が息づく。
◆◆次の瞬間、地響き
ドォォォォン!!!!
遺跡全体が揺れ、砂が落ちる。
リア「魔力干渉!?
外から攻撃されてる!!」
ラウル「またかよ!!」
そして天井が裂け、影が落ちる。
黒い鎧。
紅い紋章。
声が響く。
「独立者ミナ・シュメール。
ここで確保する。」
ミナの瞳が見開く。
「あなたたち……誰……?」
男は堂々と名乗った。
◆◆新たな敵勢力、登場
「我らは“統制評議会”。
世界の均衡を守る者。」
そして宣告。
「自由を望む者は、管理されなければならない。」
カイルが剣を抜く。
ミナが魔力を構える。
ラウルが笑い、リアが印を組む。
戦いは避けられない。
エシアが最後に言った。
「ミナ──選んだ未来は、ここから試される。」
──第102話へ続く




