⭐︎とある日のノスタルジア
とある日のノルタルジアにて
珍しく仕込み作業が早く終わってしまいすることもなく暇になってしまった
「雪、もう仕事終わった?」
「終わりましたよー?どうかしました?」
「いや、珍しく仕事早く終わって暇だからさ」
すると雪が何かを思い出した顔をして店の奥に行った。
ガサゴソ音がしたあと戻ってくるとそこには箱とトランプらしき物を持って帰ってきた雪がいた。
「透さん!良かったらトランプしませんか?」
「良いけど何するのさ?」
「ババ抜きです!桜も呼んできます!」
カードを切って待っていると2階から一緒にやってきた。
「透さん、お待たせしました!始めましょう!」
カードを配り分けて手札を確認する。
とりあえず自分にはババは無いみたいだ
桜が最初にカードを捨て切った。
ふと顔を上げると、隣の桜が分かりやすく胸を張っていた。
「ふふん、私の手札は完璧ですよ! 運も実力のうちですからね!」
自信満々な顔で、ピンク色の猫耳を誇らしげに揺らしている。一方、雪の方を見ると、目が泳いでいて明らかに様子がおかしい。カードの隙間からこちらを伺い、視線が合うたびに肩を跳ねさせている。
(……雪、分かりやすすぎる。これ、絶対に雪がババを持ってるな)
「じゃあ、俺からだな。桜、一枚もらうぞ」
「どうぞどうぞ! どれを引いても私の優勢は揺らぎませんから!」
桜が余裕たっぷりに差し出したカードから一枚抜く。見事に数字が揃った。
「よし。次は桜、雪から引いて」
「はい! 雪姉さん、覚悟してくださいね!」
桜が雪のカードの端に手をかけた瞬間、雪の猫耳がぴくりと跳ねた。
「あ、やっぱりこっちにします!」
桜が指をずらすと、今度は雪が「はぅ……」と落胆の吐息を漏らす。
「えいっ!」
桜が引き抜いたのは、不敵に笑うジョーカーだった。
「ええっ!? なんでですか! 雪姉さん、今わざとらしい反応しましたよね!?」
「わ、わざとじゃないですよ。桜が持ったのがたまたまジョーカーだっただけですよ!」
顔を真っ赤にする雪と、耳をしょんぼり垂らす桜。
「……たまには、こういうのも悪くないな」
俺はそんな独り言をこぼして少しだけ気を緩めていた。だが、その隙を桜は見逃さなかった。
「マスター! 浸っている場合じゃないですよ。さあ、次はマスターの番です!」
桜がニヤリと笑い、ジョーカーの混ざった手札を突き出してくる。
「わかった、わかった。急かさないでよ」
俺は急かされるまま、右端のカードを指で挟んだ。その瞬間、桜の耳が期待でピンと立ち、雪が「あ……」と声を漏らす。
引いたのは、案の定ジョーカーだった。
「あはは! マスター、おめでとうございます!」
俺が苦笑いしている間に、場は一気に動いた。雪が俺の手札から最後の一枚を抜いて上がり、残った桜も雪から引いてそのまま上がってしまったのだ。
「まさか、俺が一人負けするとは……」
ガックリと肩を落としていると、二人は楽しそうに笑い声を上げた。
「マスターの負けです! 負けたのでフレンチトースト作ってくださいよ!」
桜が茶目っ気たっぷりに笑い、雪も
「ごちそうさまです!」と期待に耳を揺らす。
「ああ、約束だからな。最高のやつを焼いてやるよ」
キッチンに入り奥から取っておいたちょっと普段より良い材料を引っ張り出してくる
普段使うパンでも、分厚めに切って普段より腕によりをかけて作る。
液に浸したパンを焼いていると甘い良い匂いがよく漂う。
隣に雪がやってきてフライパンを覗き込む
「わぁ、贅沢ですね!早く焼けないかなあ〜」
鼻歌を歌いながら焼けるのを隣で待っている。
焼けたフレンチトーストを皿に乗せ、少し前に頑張って作ったアイスも乗っけて。
そして最後に普段よりたっぷりとシロップをかけて完成。
「出来たよー。どうぞ」
2人の前に出すとワクワクした顔で椅子にやってきた
「いただきます!」
二人の声が重なり、待ちきれないといった様子でフォークが動く。
まずは雪だ。厚切りの生地にたっぷりとアイスを乗せ、大きく一口頬張った。その瞬間、雪の体がびくりと震え、二つの猫耳が左右に大きくパタパタと揺れた。
「んんっ……! な、なんですかこれ、透さん……! 口に入れた瞬間に、甘さがじゅわって溢れて……そのまま溶けてなくなっちゃいました」
雪は目を細め、とろけるような笑顔を浮かべている。噛む必要すらないほどの柔らかさに驚いたのか、喉を鳴らして飲み込んだ後、うっとりとため息を漏らした。
隣では、桜も至福の表情で固まっていた。
「マスター、これ……反則ですよ。バターの香ばしさとシロップの深みが、いつものよりずっと濃厚で……。あ、幸せすぎて耳の力が抜けちゃいます……」
桜の言葉通り、ピンと立っていたピンクの猫耳が、満足感でふにゃりと力なく垂れ下がっている。普段は元気いっぱいの彼女が、そのあまりの美味しさに、言葉を失ってひたすらフォークを進めていた。
「そんなに喜んでもらえると、作った甲斐があったよ」
俺が苦笑しながらコーヒーを淹れ直すと、二人は顔を見合わせて、口いっぱいにフレンチトーストを詰め込んだまま、幸せそうに笑った。
「マスター、また明日からも頑張れます! 次の仕込みも、これのために爆速で終わらせちゃいますね!」
桜が鼻の頭に少しアイスをつけたまま、気合の入った宣言をする。
雪も何度も頷きながら、最後の一口を名残惜しそうに口へと運んだ。
閉店後の静かな店内に、甘い香りと「美味しい」という言葉が満ちていく。
トランプに負けた悔しさなんて、二人のその笑顔を見ているうちに、いつの間にかどこかへ消えてしまっていた。
仕込みとトランプの白熱で疲れてしまったのだろう、少しずつ2人の動きがゆっくりになっていく。
「ふぅ……透さん、美味しかったです。なんだか眠くなってきました……」
「私も……」
雪と桜がとろんとした目で呟き時々ガクッとなっている。
「片付けやっとくから寝ていいよ。おやすみ」
返事を聞いたのか聞いてないのかわからないまま、2人は力が抜けた返事をした後カウンターに伏せて寝始めた。
俺は苦笑いしながら、空いた皿を運ぶ。
皿を洗い始めるとカチャカチャという食器の触れ合う音と、外を流れる夜風の音だけが静かな店内に響く。
水で流しながらふと顔を上げた。
カウンターの向こう側では、雪と桜が並んで深い眠りに落ちている。
雪の銀髪が街灯の光を反射して淡く輝き、桜のピンク色の猫耳は、リラックスしているせいか時折「ぴくん」と無意識に揺れていた。
「本当、よく頑張ってくれてるよな」
異世界に放り出され、絶望していた俺を救ってくれたのは雪だった。
そして店が忙しくなり、パンクしそうだったところを支えてくれたのが桜だ。
二人とも、最初は見ず知らずだった俺を信じて、こうして店を守る仲間になってくれた。
賑やかだったトランプの跡が残るテーブルと、幸せそうに寝息を立てる二人。
皿を拭きながらその光景を眺めていると、胸の奥がじんわりと温かくなってくる。
「おやすみ。明日もまた、よろしく」
俺は小さな声でそう呟き、二人が風邪を引かないように、奥から持ってきたブランケットをそっとその肩にかけた。
最後に残ったコーヒーカップを棚に収める。
明日もまた、この場所で彼女たちの笑い声を聞くために。お客さんたちの憩いの場になるといいなと思いながら
俺は静かに、今日の仕事をを終えた。
お久しぶりです。翠です。
今回は本編とは関係ない番外編という感じでちょっとした日常?的なものを書いてみました。
少しこの先の展開に悩んでて本編の続きには時間がかかると思いますがゆっくり待っていただけたらと思います。今回もご覧いただきありがとうございました!
感想等もよろしくお願いします!




