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夢に向かって猪突猛進な『不遇』王女には事情がある!?〜孤児院出身の王女は愛されることには慣れていません〜  作者: はな
最終章

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66、言葉にして

あと2話ほどで終わります!



「……ルーナ」



 裁判が終わり、部屋まで戻っているとき。

 護衛騎士としてついてきていたレイが私を呼んだ。



「レイ?どうしたの?」



 何やら思いつめたような深刻な顔をしている。両想いになってからなのか、それくらいからレイはよく表情に出るようになったと思う。



「今日は何も予定がないと聞いているが……」

「そうね。明日の予定の確認くらいのはずよ」



 明日の準備は全て昨日のうちに終わらせることができた。

 そのせいかここ一か月は目の回る忙しさだった。



「それが終わったら……その、出掛けないか?」

「……え!?そ、それは……で、デートってこと!?」

「!?で、ぇと……」



 いつも出掛ける時は前もって予定に組み込んでいのを知っているレイが、いきなり誘ってくれるなんてと驚く。

 しかし2人で出かけるのであれば、それはデートというものなのか、と思ったことがすぐに口から出てしまった。


 レイと恋人になってから、魔法の勉強は続けているものの、今まで読んだことがなかった恋愛小説も読んで勉強するようになった。


 ちなみに、ついこの間までは魔法が失敗したときに爆発していたが、今はしなくなった。定期的な診察に来た医者にぽろっというと、おそらく精神的なトラウマなどを克服したのでは、とのことだった。

 たしかに、今思えば初めて魔法のぶつかり合いを見たのはテオ兄と黒の魔女の戦いである。想像力が大きく影響する魔法に影響していてもおかしくはないのかもしれない。


 閑話休題。


 恋愛小説で勉強するようになった私は恋人が2人で出かけることをデートということを知った。それで出た言葉だったのだが。このレイの様子では違うのかもしれない。



「いや……間違って、いない。デート……の時間はあるか?」



 口元を手で覆ったレイの顔は、はっきりと分かるくらいに赤い。私まで落ち着かなくなってしまい、顔が熱くなっていくのが分かった。



「あ、ある!大丈夫よ!……嬉しいわ。すごく、嬉しい」

「……そうか、それなら、良かった」



 そしてすぐに確認を終わらせて昼食を食べたあと、町娘の格好をしてレイと2人で城下に行った。いろいろなお店や、露店を覗いてみた。今までは城下に来ても、本屋さんだとか魔道具屋さんしか行ったことがないから、とても新鮮だった。


 そしていつもお茶をしている時間には、ケーキが美味しいと有名なところに連れて行ってくれた。



「うーん!美味しい!こんな美味しいところ、よく知ってたわね」

「いろいろな人から話を聞いたら、結構な人がここがいいって教えてくれたんだ」



 ごめん、俺も来たのは初めてなんだ、と少し申し訳なさそうにレイは目を伏せた。


 もうすでに次期公爵として仕事をしているレイは、私以上に忙しい。それなのに私の護衛騎士も譲ろうとしない状況で。そしてそもそも、普段は人ともとあまり関わろうとはしないのに。

 私のためにわざわざ忙しい合間を縫っていろいろ調べてくれたのだと思うと、胸の中がじわじわと温かくなる。



「レイはあんなに、忙しいのに……大変だったでしょう?こうして調べてくれただけで……本当に、嬉しいわ。でも無理はしないでね」

「ルーナのことなら、何も大変だと思うことはない。本当は一緒に来る前に一度来たかったくらいだ」



 最近のレイはとてもとても私に甘い。私の知っているレイは、ほんの一部だったのかもしれないと思うほど。


 しかしそんなレイが嫌だと思うわけもなく、際限無く好きが積もっていく私もいて。

 自分で自分の新しい一面を知ったところだ。お互い様なのかもしれない、なんて思う。


 そしてお茶をしばらく楽しんだ後、次は洋服屋さんでレイが服を買ってくれてワンピースに着替えると、その次は宝飾品店にも行った。


 テオ兄からもらったペンダントは、先日の黒の魔女との際にいつの間にか壊れてしまっていたため、レイが新しいのを買ってくれるという。



「こんな高価なもの、申し訳ないわ……」

「俺の全てはルーナのものなんだから、そんなふうに思わないで欲しい」

「な、なんてことを……」



 レイがとんでもないことを言っている。なんでそんなことを言うんだ、とでもいうような顔をしている。世界が欲しいと言ったら喜んで行動してしまうのではないかと思う。

 本当はずっとネックレスをあげたかったが、ずっとあのペンダントをつけていたから渡せなかったとかなんとか。

 そんなことを言われてそれ以上は何も言うこともできず、素直に受け取ることにした。



「ありがとう。とても嬉しいわ」



 そのペンダントの宝石はとても鮮やかで濃い青色をしたブルーサファイヤだった。何よりレイの瞳の色と全く同じだ。



「この宝石自体は結構前に手に入れたものなんだ。何のアクセサリーにするかは決めてなかったんだが……ペンダントが壊れたようだったから……」

「そうだったの……レイの瞳の色とよく似ていて、とても綺麗だわ……」



 そんな石に魅入っている私を、満足げに眺めていたことには気づかなかった。

 

 そんなことをしていると、あっという間に日が暮れてきた。

 王城に戻ってきた私は馬車を降り、レイにお礼を言った。



「今日はレイとデートができてとても楽しかったわ!ありがとう!ネックレスも。ずっと大切に身に着けるわ」

「……俺もだ。……でも、あと少し付き合ってくれないか?」

「え?ええ、もちろん!」



 デートが終わってしまって寂しく思っていたので、まだ一緒にいれるのだと嬉しく思った。

 そしてレイが連れてきてくれたのは、私がよく来ていた王城にある湖だ。

 しばらくここにも来れていなったが、久しぶりにきた。


 もうほぼ日も沈みかけており、太陽の反対側には星空も垣間見える。今日は晴れていて風もないからか、湖面には太陽の光も反射しているが、一方では星の輝きも共存している。


 あまりの幻想的な光景に、レイもみているかと思って振り向くと、レイは私をまっすぐに見つめていた。



「ルーナ……好きだ。心から愛してる。一生、ルーナのそばにいるし、いさせてほしい」

「…………っ」

「だからどうか、俺と結婚してください」



 大好きなレイからのまっすぐな愛の言葉に、胸が揺さぶられた。


 生きてきた中で今が最も嬉しくて幸せで、レイへの想いが込み上げてくる。そんな気持ちは涙となって、溢れて止まらなくなった。



「……う……っく、はい。私で、良ければ……。わ、私も……ずっとレイのそばにいたいし、そばにいてほしい……」

「ありがとう……愛してる」



 ほっとしたような顔をしたレイは、眉尻を下げて微笑み、止めどなく零れる涙を指先で拭ってくれる。

 そんな私は愛してると言われて、さらに涙が溢れてくる。



「……婚約式の前に、ケジメとして伝えたかった。俺の自己満足かもしれないが……」

「そんなことない!そんな、こと……とっても嬉しいわ」


 レイはそんな私を抱きしめてくれて、何度も好きだと伝えてくれる。そして私はしばらくレイの腕の中で泣き続けたのだった。


 それからしばらくして。私が落ち着いころには、もうすっかり陽が落ちて暗くなってしまった。



「最近の私は、泣いてばかりね……」

「……悲しい涙でなければいい。我慢する必要はない……ありのままのルーナが好きだ」

「もう……すぐそうやって……私、レイがいないと本当に生きていけないわ……」

「……何よりも嬉しい言葉だ。愛してる」

「私も……愛しているわ」



 ひどく甘くて優しい声が耳に届くのと同時に、私達の距離はなくなった。

 柔らかな感触と温もりには、まだ慣れそうにない。



「好きだ」



 唇が離れた後、耳元で囁かれる。甘すぎる雰囲気やするりと首筋に這う指先に、顔だけでなく、何もかもが火照ってくる。


 それでも何度も繰り返し唇を重ね合いながら、大好きなレイと結ばれることができて幸せだと、心から思った。


読んでいただきありがとうございます!

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