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夢に向かって猪突猛進な『不遇』王女には事情がある!?〜孤児院出身の王女は愛されることには慣れていません〜  作者: はな
最終章

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65、王家の魔力




 ごほんっとお父様が咳払いしたことで私もレイも我に返り、ぱっと離れた。



「ありがとうございます!お父様」

「うむ……なんだレイモンド。目に入れてもいたくない私の娘を婚約者とできるのに何が不満なんだ」



 変な顔でもしていたのか。お父様に問いかけられたレイは戸惑い気味に答えた。



「いえ、不満なんて全くありません。とても感謝しています。ですが、こんなすんなり許可がいただけるとは思ってなくて……」

「お前は私を何だと思っているんだ。ルーナがお前を選んだんだろう?何より……お前はもう、息子みたいなものなんだから、反対する理由もないだろう」

「……え?……っありがとう……ございます……」


 

 お父様はツーンと言い放ってそっぽを向いたが、レイは嬉しそうで。最後は二人とも照れくさそうにしていた。私はそれを少しおかしく思いながらも見守っていた。



 少しして、ごほんっと照れ隠しのためか、再び咳払いしたお父様がまた話し始めた。



「話が逸れてしまったが……この機会に王家の固有魔法について伝えておこう」

「……私は席を外します」

「いや、レイモンドも聞いて大丈夫だ。座れ」



 ──あの地下の空間はここからそう遠くもない馬車で半日ほどのところにある古代遺跡の地下にあったそうだ。

 その一部を壊して大丈夫だったのかと思ってしまうが、今は触れないでおく。


 そして、私が黒の魔女から聴いて思っていた、絵本について。あれはどうやら実話らしい。

 ただやはり倒したのではなくて封印だったようだが。


 そしてその古代遺跡の下の地下に、封印されていたようだった。

 お父様も場所までは数百年も前のことだからか、途絶えてしまっていたようで知らなかったようで。

 今となってはもう黒の魔女しか知らない場所だったのだろう。


 そしてシュルーク王家の始祖が、その絵本で出てきた王子とお姫様なのだとか。

 お姫様は聖女と当時は言われていたそうだ。



「まさか黒の魔女が魔王だったとは、全く思いもしなかったが……我々の目に金冠があるのは、その聖女様の浄化と癒しの魔力と言われている。まぁ今はだいぶ血も薄れているから、命の危機に陥るまで発動しないのでは、と言われているな」



 お父様とお兄様が私の魔力に共鳴したようで、今回も見つけてくれたようだ。

 この共鳴するのも元は同じ魔力だからなのではと言われているが、真相はわかっていない。



「……黒の魔女は浄化されたのですね。もともとは魔物だから……」

「おそらくな。それに黒の魔女は最初に現れたのは100年ほど前と聞いている。ルーナの話だと魔物が体を乗っ取ったのだと思うが……その体ももう、自然に帰っていてもおかしくはないものだったのだろう。あくまで推測だがな」

「なるほど……でもこれで……一区切り、ですね」

「いや、まだだ。裁判が終わっていない。判決はどうなるか……」



 私がほっとしたようにいうと、お父様がまだ早いと待ったをかける。

 裁判院はこの国の法に則って判決が言い渡されるため、独立した機関である。いかに王族とはいえ、あまり裁判に介入はできないのだ。

 それでも、意見として聞いてもらえることはあると聞いている。



「……お父様。シャルロットのことなのだけど──」



 私の真剣な顔をみて何か察したのか。お父様は『お父様の顔』ではなく、『国王の顔』になって向き合ってくれた。私は考えていたことをお父様に相談することにした。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇




 あれから1か月──


 今日はアンドリュー様とシャルロットの裁判の判決が言い渡される。


 アンドリュー様は前公爵夫妻の殺人罪と、領地の税金の横領、さらに脱税までしていた。それらは悪質で弁解の余地はないとのことで死刑の判決が下された。


 そして公爵夫人は殺人のことを知っていたことで殺人教唆となり、無期限の鉱山での強制労働となった。

 その息子であるウィルフレッドは、まったく関与してなかったとして刑は免れたものの、親の爵位もなくなったため平民落ちとなった。贅沢三昧で生活していた中で、平民となり生きていけるのか。ある意味では死刑よりも厳しいものになるかもしれない。


 アンドリュー様は最後までこれは冤罪だ!と言い張っていたが、証拠もある中で誰も信じる者はおらず。暴れる彼を騎士たちが連行していった。



 そしてシャルロットは終身の修道院送りになった。

 本来もっと重い刑罰が妥当ではあるものの、被害者である私が重い刑は望まないという嘆願書を提出した結果だった。

 シャルロットの実家であるディアマンテ公爵家は、未成年の監督不行き届きということで侯爵に格下げになった。

 シャルロットは終始俯いており、私の位置からは顔を見ることができなかったため、何を考えているのかはわからなかった。最後に出ていくとき、私のほうを見てから出て行った。私が嘆願書を出したことは裁判で公にされたため、何か思うことがあったのかもしれない。これはお父様に相談した結果出したものだ。


 自分でもこれでよかったのかと思うことはあるが、私はどうしてもシャルロットが死ぬことなんて望んでいない。きっと、甘いと言われるのだろうと思う。

 それでもこのまま死刑にでもなっていれば私はこの先一生、罪悪感に囚われ続ける気がした。周りがいくら「悪くない」と言ってくれたとしても、私はそういう人間なのだと思う。


 だからこそこれは、私自身のためでもある。



 これで、すべて終わった。



 そしてついに、明日はレイの公爵就任式と婚約式が行われる──




読んでいただきありがとうございます!

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