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夢に向かって猪突猛進な『不遇』王女には事情がある!?〜孤児院出身の王女は愛されることには慣れていません〜  作者: はな
最終章

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64、やっと念願の



「そういえば私、レイとお父様に話さなくちゃいけないことがあるのだけど……」

「かしこまりました。それでも国王陛下にお伺いを立ててみます」



 大事なことだと私の様子から悟ったのか、ナタリーはすぐに頷いて部屋から出て行った。

 そして私は思い出したことをどう伝えるべきか少し悩んでいると、レイが近くにきていた。



「……レイ?どうし、んむっ」

「ルーナ、本当に……心配したんだぞ……」



 気が付けば私はレイの腕の中にいて、きつく抱きしめられていた。

 ふいうちな上、さらにふわりとレイの良い香りと優しい体温に包まれ、鼓動が速くなっていく。


 

「少し休むって、レイには言ったじゃない……」

「……こんなに長いとは聞いていない。……生きた心地がしなかった」



 急に抱きしめられて驚くも、嬉しくもあり。照れ臭くてつい可愛くない言い方をしてしまった。

 それでも私を抱きしめる身体は小さく震えていて、心配をかけてしまったことをとても申し訳なく思う。


 しかしそれと同時に、あの地下でのやり取りは夢じゃなかったのだと言う、実感も湧いてくる。



「心配かけて、ごめんなさい。あの時はあれが精一杯で……」

「……何事もないなら、いいんだ。俺は、ルーナがいない人生なんて、生きていけない……それだけ、覚えていて」



 今にも消え入りそうな掠れた声で囁かれ、心臓が大きく跳ねた。


(な、なんか今までと、違う気が……でも、私だって)


 今までのレイと人が変わったのかというくらい気持ちを伝えてくれて戸惑うも、それは私も同じ気持ちだった。



「わ、私だって、レイがいないと生きていけないわ」

「俺とはきっと程度が違う」



 これは、レイのことがすごく好きなのに、まだまだ伝わっていないのではないか。

 とはいえ、気持ちなんて見えないものだし、私もレイの愛情の大きさを分かりきっていないのだろう。


 それでも少しでも伝わってほしくて、ぎゅっと力を込めた。すると背中に回されていた腕にさらに力が込められた。


 服越しにレイの少し速い心音が聞こえてきて、よりドキドキしてしまう。


 とそこで、足音が聞こえてきた。

 レイにも聞こえたようで、はぁっとため息をつきながらそっと私から離れた。


 レイが離れた理由もわかるのに、思ったのはぬくもりが離れて寂しいということ。咄嗟にレイの服の裾を掴んでしまった。

 それに気づいたレイはふっと笑ったかと思うと、チュッと軽く唇にキスをしてすぐに離れた。


 そのタイミングでノックの音がしたのと同時にバンっと扉が開いた。

 そして思った通り、お父様が息を切らして入ってきた。



「ルーナ!!回復してよかった……!ん?顔が赤いが、もしかして熱がでてきたのか!??」

「ち、違うわ!えっと、その、あの、そう!ちょっと暑くて……!!」



 必死に否定するも、医者を呼べー!と叫ぶお父様を宥めるのに少し時間がかかった。



 ーーーー



「……うむ、なるほど……黒の魔女がそんなことを……」

「はい……今までのこと、結構なところで黒の魔女の関与していたようで……」


 お父様が落ち着いたところで黒の魔女が言っていた、ジャネット様、アンドリュー様、シャルロットのことを伝えた。

 するとお父様は難しい顔をして、考え込んでしまった。

 レイもご両親の話を聞いて、ショックをうけているのかもしれないと盗み見ると、バチっと目があった。



「……俺は、大丈夫だ。ルーナがいてくれるならそれでいいんだ」

「でも……」

「たしかに、何も思わないわけではないが……そのおかげで今、ルーナのそばにいれているのだから」



 そう言って優しく微笑んでくれた。本当にこれでいいのか、と思ってしまうが、レイ本人がそう言っているのだからこれ以上私がいうことでもないのかもしれない。


 そのときお父様が声をだした。



「ジャネットのことは……まぁ、死人に口なしとでもいうのか。どうすることもできないが……アンドリューのことは、もう大丈夫だ」

「え?」

「先代の公爵夫妻殺人の容疑ですでに収監している。取り調べはいまだ続けているが……」

「ほ、本当ですか?」

「ああ。レイモンドが証拠も見つけてきたし、あとは裁判だけという段階まではきている。レイモンドもすでに公爵代理として議会にも参加している。裁判で結果が出たら正式に爵位を継承させる予定だ」

「え?え?」



 私が知らないうちにとんでもないことになっていた。

 なんでも休みをとっていたのは、お父様のお使いという名の捜査の一環だったらしい。

 どうしても公爵邸内部のことは情報が入ってこないからだそうだ。

 今は思っていないが、最初はシャルロットとのデートだと思っていたのが実は捜査だったなんて。

 それを伝えると。



「は!?俺がルーナ以外とそんなことするわけ……」

「ご、ごめんなさい。今ならわかるんだけど、そのときは、そう思っちゃって……」

「だからって……」



  お父様がいることを思い出したのか、はっとしたように黙り込んでしまったが、レイの目がとても不愉快だと訴えてくる。勘違いをしていて申し訳ない。不貞腐れたかのようにぶすっとした表情をしているレイを、お父様はまじまじと見ている。すると何か納得したような、悟ったような顔をして話し出した。



「……お前たちも16歳になったし、レイモンドも公爵位につく。婚約者候補という中途半端なものにはもう置いておけないな。公爵になるのなら正式な婚約者を定めるべきだろう」



 これは、婚約の解消を示しているのか。

 焦った私が口を開いたが、それよりも先にお父様はなおも言葉を続けた。



「レイモンドの公爵位継承の際、記念のパーティーも開かれるだろう。お前たち2人の婚約式も兼ねようか」

「……え?」



 お父様の言葉が予想していたものと真逆だったため、一瞬理解できなかった。

 それでも、理解するにつれてじわじわと嬉しさが込み上げてくる。

 しかしバっとレイのほうを振り返ると、ポカンとした顔をしていた。



「本当は、レイモンドがドラゴンを倒したときでもよかったのだが……ちょうどそのころアンドリュー……エスパーダ公爵の不正も見つかったタイミングでな。どうせなら爵位の継承時のほうが箔が付くかと思っていたんだ」

「そ、そうだったの……」



 それでもレイモンドから許可を求められていたから、ルーナにお願いすることは許していたのだが。ヘタレが……、とお父様が言っているが、嬉しかった私は目の前にお父様がいることも気にせず私の横に座っていたレイに抱き着いた。



「レイ!これからもよろしくね!今度は、正式な婚約者として!」



 レイはいきなり飛びついたにもかかわらず、さすが鍛えているだけあって危なげなく私を抱き留めてくれて。



「ああ……何よりも大切にする。ずっとそばにいる」



 そうお父様に聞こえないくらい小さい声で呟いて抱きしめてくれた。



読んでいただきありがとうございます!

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