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夢に向かって猪突猛進な『不遇』王女には事情がある!?〜孤児院出身の王女は愛されることには慣れていません〜  作者: はな
最終章

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63、意外と脳筋



 気を取り直して周りを見渡すと、やっぱり薄暗い。

 私の背丈ほどある大きな魔石……石というよりも岩といってもいいかもしれない。その大きさのものを下から見つめる。



「……さっき、黒の魔女が書き換えたとかなんとか言っていた。だからルーナが……その、でも形を保っていられるとか」

「書き換えた……」



 私が死んだと思っていたレイは、たとえ説明のためだとしても私が死んだなんて言葉にしたくない、という気持ちが伝わってくる。


 そんなところにもきゅんとしつつも、だめだめ、と切り替える。

 私はとても浮かれているのかもしれない。しかし今はここから帰ることを考えなくては。


 少し考えて、まとまらないながらも考えを口にだしてみる。



「私が死ぬことで……書き換えられる、ということは……私が死んだことが前提のもの……?でも……」

「……それはつまり、ルーナは生きていたのに使おうとしたから、その書き換えに失敗した、ということか?」

「多分……その書き換えが何かはわからないけれど……」



 話しながらも魔石に手を伸ばしてみると、ピシっとヒビが入って石が弾けるように砕ける。



「え!!!?」

「!?」



 レイは咄嗟に私を抱きしめて守ろうとしてくれた。しかし私は魔力に包まれ、体に徐々に力が戻ってくるのが分かった。


 レイもそれを感じたのか、体勢を戻し顔を覗き込んでくる。



「レイ、魔力が……戻ってきたわ……」

「どうやら、そのようだな……」



 私はぽかんと自分の両手を見つめてしまう。

 これなら魔法が使そうだ。そう思った時、地響きが聞こえた。



「な!?何?!私のせい?!」

「いや……違うと、思うが……」



 レイも状況がわからないためか、自信がなさそうに否定する。

 その間にもゴォォン、ボゴォォンと音が聞こえる。上からはパラパラと小さな石や砂も降ってくる。


 どうしたものかと思ったものの、もう私も魔法が使えそうなことを思い出し、レイに下ろしてもらおうとしたとき。


 ドゴォォォンっとひときわ大きな音がした。

 防御魔法を展開しようと思ったところで、眩い明るい光がこの場を照らした。


 目を開けていられなくて、思わず目を閉じてしまう。レイは私をぎゅっと抱きしめなおした。

 

 しかしそこで聞こえたのは──



「ん?何か空間があるのか?ルーナ!!いるか!?ルーナーーーーー!!!!」



 いるなら返事をしてくれ!と叫ぶこの声は。



「……お父様!!!ここにいます!!」

「!?ルーナ!よかった!!今そこまで行くから……!」

「お兄様!!」



 お兄様の声も聞こえた。お父様の叫び声のあとにもう一発いっときますか?と言っていた声も聞こえていたが、返事があったことで実感が湧いてくる。


(私たち、助かったのね……)


 お父様もお兄様も力で解決しようとする傾向があるな、なんて頭の片隅で考えながらも、私たちは助かったのだとほっとしたのか、体から力が抜けていく。明るさに目も慣れてきて、人影が見えた。

 声だけではなく目視でも確認できたことで、レイもほっとした顔をしている。


 そして急激に私は気を失っていて何もしていないはずなのに、大きな魔力の出し入れがあったからなのか、ずっと気を張っていたからか。

 安堵するのと同時に、どっと疲労感とともに倦怠感が押し寄せてきて、目を開けていられないほど瞼が重くなっていく。このままでは眠ってしまいそうだった。



「レイ、ごめんね、少しだけ、休むわ……」

「……ルーナ?……ルーナ!」



 レイに心配をかけたくなくて、なんとかそれだけ言うと、私は静かに目を閉じた。

 レイは不安そうに名前を呼んでいたけど、答えることができなかった。





  ◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「……私、固形物が食べたいわ。もう大丈夫よ?」

「まだいけません。目を覚ましたばかりなんですから!どれだけ心配かければ気が済むんですか!」

「ご、ごめんなさい。……うーん!これ、とっても美味しいわ!」



 ──あの地下牢みたいなところで意識を失った私は城に帰ってきていた。あれから丸三日も眠り続けていたという。


 魔力を極限まで使った際、過眠といった症状は珍しくないらしいらしい。私は使い果たしたというわけではないが、まるッと出し入れされたせいではないか、というのは医者の見解。


 レイやナタリーが見守る中、先ほど目が覚めた私は改めて医者に身体に問題ないことを確認してもらい、ゆっくりお風呂に入って食事をとっている。


 問題がないとはいえ、今まで前例がないことだから、しばらくは無理をせずに身体を休めるよう言われた。


 ──しかし、問題なのはここからである。


 身体は問題なく、元気なのだが。お腹が空いたときに出てきた食事がパンがゆだったのだ。

 美味しいは美味しいのだけれど、お腹にたまらない。お腹が空いているからガッツリ食べたい気分なのに。死活問題である。


 それでもナタリーには心配をかけて大泣きされたこともあり、怒られると何も言えなくなった私である。


 レイにちらっと助けを求めるも、いつものことながらそっぽを向かれた。

 ナタリーにはレイも逆らえない。昔からレイも私を甘やかして怒られているから。


 そして、美味しくもあまり満たされなかった食事が終わり。

 安静に、と言われたがたくさん寝たせいか、元気な私はどうしようかと考えていた時、報告しなければならないこと思い出した。




読んでいただきありがとうございます!

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