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夢に向かって猪突猛進な『不遇』王女には事情がある!?〜孤児院出身の王女は愛されることには慣れていません〜  作者: はな
最終章

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54、反乱



 1日ほどあまり休まずに馬を走らせてやっと、夜中の日が変わるかという時間帯にネージュラパンの王都にたどり着いた。


 王都はまだましなのかもしれないが、今まで通ってきた田舎にいくほど人々が疲弊しているのがわかる。


 王都のいかにも普通な宿に入る。あまり目立つこともないが、そこに溶け込んでいるような、あまり印象に残りづらい宿だった。テオドール殿下が何か宿の人と話し、ある部屋に案内される。

 するとテオドール殿下はその部屋の本棚の本を押すと、隠し通路が現れた。



「薄暗いので、足元にはお気を付けください」



 途中いくつか分岐があったが、テオドール殿下は迷うことなく先へ進んでいく。

 しばらく進み、階段を上っていくと開けた場所にでた。



「お疲れ様です。大丈夫ですか?今日はここで休んでください」

「……ありがとうございます」



 ふーっといいながら国王陛下とセオドア殿下はガシャガシャと甲冑を脱ぎ捨てた。

 ここで休むということはここはテオドール殿下の離宮の中ということだ。


 昨日話した内容を思い返す。



『まずは、僕たちは秘密裏に城に帰ろうと思っています。宰相が中心となって今の国王へ不満をもっている貴族たちが今回、力になってくれる予定です。

 戦力的にやはり不安がありましたが……皆様が加勢してくれるのであれば大きく違います。きっとうまくいく。おそらく夜中に着くかと思うので、僕の離宮に潜伏し、こちらの勢力が集まり次第合流して国王を討ち取ります』


 宰相とも俺たちが加わることはさすがに伝えていないが、このことはもう手紙を送り決定しているとのこと。


『できるのならば、無血開城が望ましいのですが……』


 おそらく国王を捕えれば、それも可能だということだった。

 国王の周りには自分の命が第一の、利己的な人しかいないそうで。



『わかった。テオ兄の弟でもあるテオドール殿下を信用しているが……もし、裏切るようなことがあれば、そのときは……』

『誓って、裏切る気など毛頭ございません』

『……では、反乱を起こすに至った理由だけ聞いてもいいか』

『……本当は僕の兄が治るはずだった国を、いい国にしたいというだけです。兄が国王になってたら、こうなっているだろうなという国にしたい。これが、僕なりの償いなのです』



 辛そうな顔でそう言ったテオドール殿下は、手をぎゅっと握りしめているのか手が白くなっていた。

 その様子を見て、国王陛下はひとまずそれ以上の追及はしなかった。



 念のため警戒しながらも数日過ぎ、そろそろ集まると連絡があった翌朝早朝。


(ルーナは、大丈夫だろうか)


 上ってくる朝日を見ながら、考えてしまうのはやっぱりルーナのことで。

 ルーナのそばから離れても、すぐに彼女のことを考えてしまう。


『ルーナはひとまず、輿入れの準備はさせておく。こちらのことがバレるわけにはいかないからな』


 ルーナが、俺ではない違う男と結婚するためのドレスを作ったり、準備すると考えるだけで腸が煮えくり返って仕方がない。

 たとえ目的がルーナの魔力なのだとしても。


(早く、殺してやりたい)


 まだ殺す予定はないが、気が急いてしまう。



「おい、殺気をしまえ。その殺気でバレてしまいそうだ」



 振り返ると、セオドア殿下がいた。呆れたように俺を見るまなざしはよくみるものと同じで。それでもセオドア殿下から弟のように見られているのは、嫌ではない自分もいる。

 兄妹だからか似ている2人を重ねてしまう。重症だな、と思いながらも申し訳ありません、と返しつつ、久しぶりにみるそのまなざしにふと疑問が過った。


 久しく、ルーナからそう言ったまなざしを見ていない気がした。少なくとも学園に入ってからは。


 思い返してみても、ときおりじとっとした目で見られたり、はたまた嬉しそうに頬を赤らめていて俺を見ていたり。いつも可愛いことには変わりはないが。


 もしかすると──



「おはようございます。お話し中、申し訳ありません。集まったようです……よろしいですか」



 テオドール殿下が呼びにきた。今はこちらに集中しなければ。と気持ちを切り替える。

 失敗は許されない。


 何よりも大切な、ルーナのために──




 そしてテオドール殿下と宰相を筆頭に集まった者たちと、俺と謎の甲冑2人組、騎士団長が合流し、国王の寝室へ踏み入った。


 テオドール殿下を先頭に俺たちが、その後ろを宰相らが続いた。ベッドに近づくと、5人ほどがベッドの上におり、男が女に囲まれるようにまだ全員寝ていた。

 真ん中で寝ているでっぷりと太った男が国王なのだろう。


 テオドール殿下は素早く手で指示を出し、その場にいた者たちを拘束していく。



「ふごっ……!?な、なんだ!?」

「ん~?キャーっ!何?」



 多少抵抗はあったが、魔力封じの手錠を最初につけたことに加え、寝起きいうこともあり大した抵抗もなく。呆気なく全員捕縛することができた。拍子抜けである。

 しかしまだ黒の魔女が残っている。



「……黒の魔女は、どこだ?」

「な、なんだ貴様!!わしが誰かわかっておるのか!?こんなことをしてただで済むと……ひぇっ!!」

「今はそんなことは聞いていない。黒の魔女はどこかと聞いている」

「し、知るかあんなやつ!!昨日いきなり、もうわしとは手を組めないとかほざいて出て行ったわ!!」



 質問に答えてくれない男の首にナイフを突きつけたらすぐに白状した。


 (黒の魔女には勘づかれたのか……?)


 ということはこいつは見捨てられたのか。


 その様子をみていたテオドール殿下も同じ結論に至ったようで。



「ひとまず拘束した者たちを牢へ。父上……いや、前国王陛下。私が国王として今後この国を治めるので、ご安心ください」

「お、前!テオドール貴様!!実の親に向かって何をほざいて……!!」

「あなたは国王失格です。そして父親と思ったことも一度もない……連れて行ってください。大人しく牢屋でどういう処罰が降るかでも考えていてください」



 テオドール殿下は今まで見たことないほど冷たい表情でそう言い放った。前国王はひきづられるようにして部屋をでていった。


 あんなヤツにルーナが嫁ぐところだったのかと思うと、何もかもがひどく不愉快で、全身が焼けつくような激しい嫉妬を覚えた。

 もう嫉妬を飛び越えて殺意かもしれない。先ほどもセオドア殿下に注意されたが。



「……お見苦しいところをお見せして申し訳ありません。ひとまずは……黒の魔女だけいませんでしたが、無血開城となりました。皆様のおかげです。心から感謝いたします」



 テオドール殿下が国王陛下に頭を下げて感謝を示した。



「……まぁ、何もすることもなかったが、丸く収まってよかった。我々はこれで失礼するが……レイモンドは置いていこう」

「──は?」



 思ってもみなかった言葉に、相手が誰かをわかっていてもそんな声を出してしまった俺は悪くないと思う。







読んでいただきありがとうございます!

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