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夢に向かって猪突猛進な『不遇』王女には事情がある!?〜孤児院出身の王女は愛されることには慣れていません〜  作者: はな
最終章

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50、友人だった人




 固まってしまった私を気にせず、シャルロットはなおも言葉を続ける。



「あなたのそういうところが本当に嫌いよ!自分が犠牲になればいいと思っている、その考えが!態度が!!」

「そんな、ことは……」



 自己犠牲の精神は持っていないと思う。でも、前は死ぬのも怖くなかったから、自分のことを省みることをしなかった。それのせいかもしれない。


 それなのに、今は死ぬ気がない。死にたくない。何があっても生き抜くつもりだ。そう思えるようになったのも、レイのおかげだと思う。



「あなたが犠牲になることで手に入る幸せを!レイモンド様が欲しがるとでも思っているの!?」



 それを聞いてはっとした。


 私はもう二度と、私のために誰かが犠牲になるようなことは絶対に嫌で。私が行くことで守りたい人たちのことはもちろん、大勢の人を守れるのだと、これが最善なのだと思って決断したけれど。


 自分が絶対にして欲しくないことを、私はしてしまっているのかもしれない。


 それでも。どうしても、戦争になるのは嫌だった。

 レイが最前線にいくのも、お兄様が戦地で指揮を取るのも、テオドール殿下が何かを起こして失敗するかもしれないことも。大勢の人が負わなくていい傷を負うことも。



「じゃあ……私は、どうすれば、よかったのかな……?」



 目頭が熱くなっていく。でもここで泣いてはいけないことはわかる。それでも気持ちを落ち着かせることができなくて。思わず、言葉を漏らしてしまう。



「そんなの、レイモンド様に助けてと、一言言えばいいのよ!!何年あなたの婚約者候補でいると思っているのよ!あなたのことを一番わかっているのだから、あなたが最も納得する答えをくれるわよ!」

「っ!そんなこと……しても、いいのかな?」


 泣くまいと耐えるために、なんとか歯を食いしばって絞り出した言葉は、どうしても震えてしまったけれど。


「私からレイモンド様を奪っておいて、そんなことよく私に聞けるわね!本当に嫌な奴よあなたは!!私はしたくても出来ないのに!!」

「…………っ」



 シャルロットの言葉は私の心に突き刺さった。そしていろいろと、わかった気がした。


 過去私は虐待されていたせいか、人の悪意には敏感だと思っていたし、実際にそうだったと思う。それでもシャルロットからは感じたことがなかったのだ。


 それが自分の中で、シャルロットの豹変具合についていけなかった要因でもあると思うのだけど。


 シャルロットはレイモンドに助けを求めろと言った。つまりは、私には死んでほしくないと思ってくれているということで。


 そして多分、男爵令嬢のルイーズを利用したり、私の悪評を流して孤立させようとしていたと聞いた。それらはシャルロットが関わっているのに、全て中途半端に終わったのも、きっと。私の中ではそういうことにしておこうと思う。


 今まで友人だと思って接していた時間は、全てが嘘ではないのだと感じられた。

 それがわかっただけで、私には十分だった。


 そう思うと、堪えてた涙を我慢することはもう出来なくて。



「……ありがとう、シャルロット。あなたは嫌かもしれないけれど。やっぱり、私はあなたのこと、友人だと思ってるの」

「……本当に、おめでたい頭ね。もうネージュラパンでもどこでも行けばいいわ。何にしても、もうあなたに会うことはないでしょうけど」

「そうね……さようならシャルロット」

「…………」



 返事はなかったけれど、私は最後に話せてよかったと心から思った。


 同じ人を好きにならなければ、本当の意味で友達になれたのかもしれない。でも、もしやり直せたとしても、レイのことに関しては私も譲れないから、結局はどうにもならないのかもしれない。


 そんな考えても仕方がないことを考えながら、貴族牢を後にした。




◇◇◇◇



 最後の晩餐も、お父様とお兄様と一緒に食べることは叶わず。


(私に悲しむ権利なんてない……)


 先ほどのシャルロットとの会話で、私を大切に思ってくれている人たちに対して、私がどれだけ酷いことをしたのかを理解した。


 それでも譲れないのだから、どうしようもない。

 そんな中でも最後くらいは楽しい時間を過ごしたかった、と思っていたのだけれど。


 レイモンドも。我儘だとはわかっている。それでも。


(最後に、会いたい)


 明日のお見送りには来てくれるだろうかと思いながらも、時間もなく伝えたいことを伝えられなかったら嫌だと思い、みんなに手紙だけ書くことにした。


『後悔しないよう自分の選んだ道を信じて進むんだ』


 テオ兄の手紙に書かれた言葉が思い浮かぶ。どんなことになっても私が選んだ道だから、後悔しない自信はある。だけど、少し罪悪感は湧き上がってくる。


 もう日も跨いだ時刻になり、ようやく全て完成させたところで廊下から慌ただしい喧騒が聞こえた。


(こんな時間に一体何が……?)


 ここに入れる人は限られているため、こんなに騒がしくなることはない。

 もしかして侵入者でもでたのか。


 魔法をいつでも発動できるように準備をしつつ、扉に近づき耳をそっとあてる。

 その喧騒はだんだんと近づいてくるが、声まではさすがに扉越しでは聞こえない。


 そしてついに私の部屋の前まで来た足音はピタッととまり、急に静かになった。

 扉から離れていつでも応戦できるようにしたところで扉が勢いよく開いた。


 




読んでいただきありがとうございます!

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