表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤児院育ちの王女は、護衛騎士の重すぎる愛に気づかない  作者: はな
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/69

31、忘れていた夜



 ——あれは、テオ兄が孤児院を出ていってからしばらく経った頃。


 テオ兄との約束を果たすために、魔法の練習で夜中に抜け出したときのことだ。


 テオ兄から教えてもらっていたときと同じく、近くの森の開けた場所まできた。


 今日はどんな練習をしようかな、と準備運動で魔力を意識的に循環させていた。


 そのとき、ガサっという物音がした。


 孤児院の誰かに抜け出したことがバレたのかと思って恐る恐る振り返ると、思いもよらない人がいた。


 月明りしかない薄暗いなかでもすぐにわかった。


 信じられない思いで名前を呼ぶ。


『テオ兄……っ!?』

『リア、やっぱりここにいたんだね』


 ホッとしたような声をだしてこちらに駆け寄ってくる。


 1か月ぶりに会ったテオ兄は当たり前かもしれないが、何も変わっていなかった。

 私は会えたことが嬉しくてこちらからも駆け寄るも、テオ兄の様子がいつもと違う。


『リア、説明は後でするから、すぐに僕と一緒に来て』

『え?テオ兄?』


 ひどく焦っている様子で私の手を引く。


 孤児院に未練などない。

 ついて行っていいのなら、もちろんついていくという選択肢しかない。


 わかった、と返事をして手を握り返したときに、突如、夥しい数の何かが取り囲んだ。


『──見つけたわ。テオバルト殿下。こんなところまでどうしたのかしら?』

『……っ!』

『そんな顔をしないでちょうだい?せっかくの可愛いお顔が台無しよ?』

『……お前に可愛いなんて思われたくはない。さっさと去れ』


 今まで聞いたことがないような冷たい声音でそう言い放ったテオ兄は、私の手をぎゅっと少し痛いくらいの力で握った。


『あら、私にそんな態度でいいのかしら?お父様に報告するわよ?』

『したければすればいい。でもリアは渡さない』

『それは困るわぁ。その子を連れていく約束だもの』

『断る!』


 その言葉と共に、テオ兄は魔法での攻撃を繰り出した。

 しかしその女の人の前に魔獣らしきものが躍り出た。


 ……魔物を盾にした?


『──え?』

『これだから話の通じない子供の相手は嫌なのよ。言うことを聞かないなら片方はどうなってもいいって、許可がでてるの………知ってるかしら?』


 そしてその女の人は魔法をこちらに向けて放ってきた。

 テオ兄も攻撃魔法を繰り出したことで魔法が衝突し、バァン!!という音が響き、色々な色の眩い光が行き交った。


 しばらく魔法の応酬が続いたが、その女の人は少し後退したかと思うと、ニヤリと笑い扇子をこちらに向けてかざすと、魔物が襲い掛かってきた。


 次々と襲いかかる魔物をテオ兄はどんどん倒していく。


 魔物の群れが炎に呑まれ、氷槍が夜空を裂く。


 しかし数が多く、次第にテオ兄も疲れてきたのか息が荒くなってきた。


 何の力もない足手まといの私は、彼の後ろでただ守られているだけだった。


 結局、彼は一人で全ての魔物を倒しきることができた。


 ——しかし沢山の傷を負ってしまった。


『……うっ……』


 やがてその場に倒れ込むように横たわったテオ兄の服は、血で真っ赤に染まっている。


 何かが焼けたような匂い。

 それに混ざる、鉄みたいな嫌な匂い。


 これは一体何の匂いなのか。


 混乱からか、目の前のことが信じられないからか心臓がドクンドクンと大きく脈打っている。


『っ!テオ兄!!』


 駆け寄って抱き起こしたが、テオ兄はボロボロになっていた。

 ところどころが焼け爛れ、体のあちこちから血が流れ出していて全身血塗れだった。


 目の前の光景が信じられず、動くことができない。

 

 もう先ほどから何が何だかわからない。

 一体何が起きているのかも、どうしてこのようなことになっているのかもわからない。


 ただテオ兄が酷い怪我をしていて。

 死んでしまうかもしれない。


 わかったのはそれだけだった。


『テ、テオ兄!しっかり、して!ど、どうしたらいい?テオ兄!』

『……っリア……逃げて……』

『テオ兄を置いていけるわけ、ないでしょ!』


 そう話している時、パチパチパチパチと手を叩く音が静かな夜の森に響いた。


『素晴らしいわねぇ、これはなんなのかしら。兄妹愛って感じかしら?』


 まるで舞台でも眺めるような声だった。


 まぁ、私には理解できないけど、と言いながら歩いて来たのは思った通り、さっきの女の人だった。


『ど、うして……どうして……こんなこと、するんですか!』

『どうして?私は与えられた依頼をこなしているだけよ。でも流石に魔力量が多いだけあって手こずったわぁ』

『私が目的なら、一緒にいくから!だからテオ兄を……』

『リア、だめだ……』


 小さく掠れた声でテオ兄が私を止めようとする。

 しかし今の私はテオ兄が助かるなら、なんでもするつもりだ。


 だって私にはテオ兄しかいない。

 テオ兄が助かるならなんだって──


『あら、それなら話は早いわね。一緒に来てちょうだい。そこの壊れかけの玩具に興味はないわ』

『っだ、だめだ、リアっ!殺されるぞっ!』

『テオ兄、でも……!』


 テオ兄は動くのも痛いだろうに、血塗れの手で私の手を掴んで必死に止めようとする。


『……あなた、うるさいわね。見逃してあげようと思ってたけど、そんなに邪魔をするならここで消えてちょうだい』


 そう言って女の人がテオ兄に向かって手を向けた。

 女の人の手に、禍々しい魔力が集まる。


『やめてーーー!!!!!!』


 思い切り叫ぶとその瞬間、体の奥から魔力が溢れ出した。


 周囲の木々が軋み、地面が震える。


 私を中心に爆風が発生した。


読んでいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ