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第六話:「断罪」

 目が覚めると、そこには見慣れない街景色が広がっていた。心なしか目線が高い。しかしその光景は、大層悲惨なものであった。倒壊した無数の家屋に、酷い腐臭が漂っている。見渡す限り、大量の死体が無造作に転がっていた。

「なんだ、これ…」

 そこで僕は、自分の身体が微動だにしないことに気付く。僕は、両手両足を十字架に縛り付けられていた。まったく状況が呑み込めないでいると、ふいに強風が僕の顔へと吹き付けられる。その冷たさから思わず、顔を背けて下を見る。そして気が付く。幾多の人々が…憤怒の形相でこちらを見上げていることに。

「おぉ! 目が覚めたみたいだな、この…」

そう言う男の手には、魔法で象られた紐…いや、鞭が握られていた。

「「虫けらがぁ!!!」」

怒声と同時に、その脅威が

「――っぁ」

無情にも、僕の顔面へと叩き付けられた。

「がぁぁっ…!!」

 それは、僕の右目をはっきりと捉えていた。僕は残ったもう片方の目で、うっすらと下を覗く。すると痛みに悶える僕を他所に、広場の人間が一斉につらつらと何か語り出す。

「お前ら虫けらのせいで、一体どれほどの命が消えたと思う…!」

「返せよ! お前らが奪った命だろ!!」

「お前が禁域に入ったせいで…奴らが目覚めたんだ!」

「奴、ら…?」

 罵詈雑言に襲われながらも僕は、何とか記憶を遡る。レンと僕は、古の魔剣を探しに……禁断の大地に向かって…

「そうか…あの魔獣が、君たちを……」

 僕は、自分たちのしたことの重大さを、はじめてそこで知った。この都は、僕らが邂逅した魔獣たちによって滅ぼされ…数多の人々が殺されたという事を。けれど、僕にはどうしても分からないことが、ひとつだけあった。

「だったら……どうして…。僕を捕らえて…痛めつける暇があるなら……どうしてその時間で、奴らに立ち向かわないの…?」

それを聞いた人々の表情が、瞬く間に凍り付く。

「我々が余計なことをせずとも、この国には月神様がついておられる。どんな事態が起きようとも、あの御方に任せておけば問題は無い…! ただし…」

直後、またもや激痛が僕の全身を駆け巡った。紅い水滴が…足を伝って流れ落ちるのを、否応なしに感じた。

「失われた命は…いかに月神様と言えど、戻すことはできねぇんだよ…!」

「それが、理由…」

「そうだ……! 全て貴様らのせいだ…!!」

「それは……可笑しい、なぁ…。」

「なに……?」

「結果は、同じ…じゃないか」

僕は、溢れ出るこの可笑しさを…堪えきれなかった。

「っははははは……はっ!」

「何が可笑しいんだよ…。この、ごみ虫が!!」

僕は滅多打ちにされた。だけど、構わずその言葉を紡ぎ続けた。

「いくら僕を痛めつけたところで、亡くなった命は戻らない…!」

「黙れ!!」

「どれほど怒ろうが…どれほど憎もうが…世界は変わりはしない! 君たちの大切な人は、決して蘇らない…!!」

「黙れぇぇぇぇ!!」

まあ、それは僕も同じだけど…

「本当に薄汚い虫けらね!!」

「ゴチャゴチャうるさいんだよ、虫けらが!」

 人々が口々に、思い思いのことを叫ぶ。そして、無数のつぶてや魔法が僕めがけて飛んでくる。当然、縛られた僕にそれらを避ける術はない。僕はその暴力を、余すことなく全身で受け止める。人々が満足するまで、とめどなく…

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