表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

最終話:「新世界」

 僕は、気が付いたら黄金色の草原の中に、呆然と立ち尽くしていた。

「これが新世界…なのか……」

「そうだ…」

いつの間にか、剣から元の姿に戻ったクァチルが、僕の傍らに立っていた。草むらがそよ風になびいて、心地の良いさざ波が耳に入る。

「そうか、まだ実感が湧かないけど…これが僕の夢見た世界…。そうか、僕は…夢を叶えたのか……」

するとクァチルが、生まれたばかりの世界を…眠っている大地を起こさないよう、そっとつぶやいた。

「…聞くのが遅れたが…汝、名は何という?」

「名…?」

僕は、急にクァチルがこんなことを聞いてきたのを不思議に思った。

「僕の名は……」

だって、僕に…


「無いよ、そんなの」

親がいない僕に、名前なんてあるはずがないのに。

「そうか…。しかし、いつまでも汝と呼ぶのも、煩わしいな…。ならば、こうしよう」

するとクァチルが、思いもよらない提案をしてきた。

「我が汝に…名を与えようではないか」

「名前を…くれるの?」

「さよう…。汝はこれからこの世界を治めるのだ。まずは、王を名乗るべきだな…。」

「王…?」

「王とは、他を率いて統べる者のことを指す…。汝は…月世界の邪悪なしがらみから自身を解放し、また他に対してもそうしたいと願った…。邪悪な戒めを破り、そこから人々を解放したのだ。汝は……まさにそう。破戒の王、とでも呼ぶべきであるな。」

「破戒の…王…? それが、僕の……」

なんだか、「レン」とか「クァチル」とかそういう響きのものとは違って…

すると、クァチルが僕の不満を見透かすかのように語りかけてきた。

「なんだ…? 不服か?」

「いや、これが本当に…僕の名前なのかって」

「なに…? それは違う。これはあくまで肩書……名前とは異なるものだ」

「じゃあ、僕の名前って…?」

「汝は欲しがりだな…。では強欲な汝には、二つの名を授けよう…」

そう言って、クァチルは…僕に名前を授けてくれた。

「――か。ねぇクァチル…これって、どういう意味なの?」

「神の言葉で、前者は終わり…後者は国、という意味だ」

「国の…終わり、か。たしかに、僕にふさわしい名前だね…」

「いや…それだけではない。前者には、もうひとつ…別の意味がある」

僕は、その意味を聞き感銘を受け、そして…この名を愛した。


「ねぇ、クァチル…。ふたりで一緒に、この名前を呼んで欲しいんだ。」

「あぁ、構わぬ…。」


こうして僕は、この新天地の創造主となった。

「汝こそ…」

けれど、これはまだ始まりに過ぎない。

「僕こそが…」

ここから、この場所から、僕の世界は始まるのだから。

「「破戒の王、エンデ=ウルスだ!」」


かくして世界は始まった。第七の日である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ