第9話 幸子 その1
第9話まできました。
それでは始まります。
“尚美”
私は上杉先生を王子駅に送り、愛子ちゃんが待つ医院に急いだ。彼からお願いされた。正岡先生の診察は愛子ちゃんの容態もあるので1日様子を見て明後日の午後13:00に上野山に2年前にできた西郷さんの銅像前で上杉先生と待ち合わせて診察にいくという事になった。根岸にある正岡先生の自宅はそこから20分もかからないそうである。ちなみに上杉先生は独身で本郷の長屋住まいだそうだ。カビや粘菌で薬をつくる話をしていたので、上杉先生が同じ長屋に帝国大学で植物学を研究している牧野富太郎という学者がいるのでいろいろ相談してみると言った、牧野富太郎!!と聞いて私は思わずまた彼の背中を叩いたバン、バン、スルーと3回目が空振りした時、彼はまた前にひっくり反ってしまっていた。
その時、私は心の中で、彼に“合わせ技1本~!!”と叫んでしまった。
“うん、間違いなく君を1番弟子に認めよう、1~2年の内に必ず私の力でノーベル医学賞を取らせてあげる。”フフフフ、、、と歴女尚美が心に誓ったのである。
(その誓いは間違いなく実行され上杉先生は日本人で初めてのノーベル医学賞をとったのである。その受賞内容は”敗血症とその治療法”でこれで戦争や病気で死ぬはずだった数百万の命が助かったのである。)
“結城”
待合室で渋沢先生とこれからのことを打ち合わせしていたら窓から姉さんが腰に手をあてスキップしながらこちらに来るのが見えた。
“うん、、みなさん今のは見なかった事にしようネ” 天国の父より
「ただいま~」といって、私は愛子ちゃんの様子を見てくると二人にいって処置室に向かった。脇にあるエマジェーシーカートで手指をアルコール消毒して聴診器を首に掛けてカートの引出しからシリコンフォーリーカテールセット10Frを取り出し、滅菌済のスタイレットといっしょにワゴンの上に乗せた。それと保冷庫からカロリー250kcal/250mLエ〇シュア・リ〇ッドの、バニラ味かストロベリー味かで迷ったがストロベリー味を選び紙コップも載せて愛子ちゃんのベッドにいった。チャンバーに落ちる量をまた時計を見ながらクレンメローラーで少し調整してあと1時間位で1回目を終わらせる流量にした。そして寝ている愛子ちゃんに小さい声で
「愛子ちゃん、気分はどう、どこか痛い所とかある。」と聞いたら
私に気づいて、薄目で「尚美お姉さま、、ですか、、」
「そうよ、どこか痛い所はない?」
「はい、、、痛い所はありません、、だいぶ楽になりました。」
「そう じゃ、ちょっと胸の音を聞かせてね。」
そう言って聴診器の先にあるチェストピースを両手ではさみ少しこするようにして金属部分を温め愛子ちゃんの胸にあてた。呼吸音が最初に聞いた時よりはきれいに聞こえた。赤外線体温計でポチと図ると37.8度まだ熱はあるが回復してきているようだ。
「愛子ちゃん、ちょっと痛いけどおしっこを出す為のくだを入れるからがまんしてね。すぐ終わるからね。」そういって、私はワゴンの上のシリコンフォーリーカテールセットのバックを両手でバリと少し開けて、中のトレーを出しワゴンの上に置いて空のバックを脇においた。中に入っている処置用の手袋をつけてシリコンフォリーを取り出し、滅菌済みのスタイレットをチューブの中に通したら潤滑ゼリーをフォーリーの先端にたっぷりとこすりつけた。 そして愛子ちゃんの下腹部の布団と毛布をめくり着物の下半身をめくり尿道口からスタイレットを操作しながらフォーリーの先端を押し込んだ。
「きゃっ!!」と愛子ちゃんがびっくりしたので「動かないでね、すぐ終わるから」と言って適切な場所に先端を送り込んだら、スタイレットを抜くと、トレーから3ccの蒸留水が入ったキャップのついた注射器を取り出口が二又に別れたフォーリーの一方弁がついた注入口にキャップをはずし流しこんだ。フォーリーの先端は穴が開いておりサイドも尿が出るようにスリットがいれてある。膀胱内に先端部分を入れて尿道でバルーンを蒸留水で膨らまして抜けないようにするのである。
そして尿が流れてきたもう一方のルートにトレーから2500ccの尿を溜めることができる蓄尿バックを取り出しそのコネクターをつないだ。その蓄尿バックをベットサイドのフレームに金具を付けて引っ掛けた。
「これで夜におしっこに起きなくていいからゆっくり休んでね。」
「がまんした、ご褒美にこれをあげるから」といって愛子ちゃんを少し起こすとコップにカロリー250kcal/250mLエ〇シュア・リ〇ッドを入れて口元に運んだ。
「お姉さま、イチゴのにおいがします。」
そう言うと愛子ちゃんはゴクゴクと飲み始めたそして全部飲み終わると
「尚美お姉さま、こんなおいしい飲み物は初めてです。」と言って顔赤らめていた。
「これですぐに元気なるからゆっくり休んでね。」といって愛子ちゃんを寝かせてカーテンをシャーともどしワゴンを元に戻した。
処置用ベット周りはそのままで、みんな出しっぱなしで散らかっていた。
それを見て私は、、、、
“う~~ん 仕事のできる弟に掃除をやらせよう!!”
と思った。
“おまえがやれよ!!、、” 結城、心の声
私が待合室に戻ると、おじ様のお屋敷にいた、三つ編にお下げをした女中さんが風呂敷つつみを脇においてソファーに座っていた。なぜかカップラーメンをおいしそうに割りばしで食べていた。
(きっとそれは私の分かな~~と思いながらおじ様を見た)
渋沢先生はすでに食べ終わり、目の前にはカップ麵12種12ヶ入りの箱が開封されずに置いてあった。
おじ様が紹介をしてくれて、幸子さんという女中見習いで 愛子さんの身の回りの世話をする侍女だそうだ。今晩は付き添いで愛子さんの着替えをもってやってきた、おじ様が夜には戻るつもりがあったので連れてきてもらった人力車の車夫の人に頼んでいたようだ。
結城が「愛子ちゃんの具合どうだった。」と聞いてきたので
「だいぶ楽になったみたい、朝まで点滴を続けて様子を見るわ、問題なければ明日の夕方には御自宅に戻り、飲み薬での養生でいいと思うわ、」
渋沢先生が立ち上がり姉と俺に頭を下げて、娘を助けてくれてありがとうと何度もお礼を言ってくれた。
おじ様がカップ麺の箱をもって帰ろうとした時
「おじ様ちょっとまってください」といって私は母屋の自室に急いであるものを取りにいった。そしておじ様にそれを渡して「おじ様、それは卓上水銀血圧計といって血の流れの圧力を調べるものです。私が医学生の時に使っていたものですが、この時代では5年後に外国で発明されるものです、これを作る材料はそんなにむずかしい物じゃないと思うので、これを日本中に広げたいのです、大量につくれるか職人さんにきいてもらえませんか中に入っている専用の聴診器もお願いします。うまくすれば世界中に売れると思います。
「あ、お金の事は結城に!!」
“それは俺かい”
「よしゃ、よしゃ儂に任せておけこんなものは簡単につくれるだろう!すぐに聞いてやる。」
結城が「先生、俺が頼んだアレもお願いしますね、できれば試供品を例のパーティーまでお願いします。」
「それと電話の事もお願いします。」
「わかった、わかった、大丈夫だ。まかしておけ!!」
そういって先生はカップ麺の箱と血圧計をもって街道で待っている人力車のところに向かった。
幸子ちゃんを見ると、、、、
まだおいしそうに私の分のカップラーメンを食べていた。
“う~~ん大物かもしれない”天国の父より