表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/135

第87話 クロパトキンの運命


1905年2月


結城

俺は西園寺先生と会ってから、この国のこれから待っている不幸な歴史に積極的に介入する覚悟をきめた。国策に影響する仕事で海外や満州などいろいろな国や歴史に名前を残すような人物とも会って交渉をしなければならないだろう。


そのために今までやってきた仕事や会社については、それぞれ共同経営的な感覚でいたけれど株式会社として新しく独立させてその会社の51%の株を所有する事にした。この考えは前から思っていて姉さんにも相談したが、本人からは好きにすれば、の一言で終わってしまった。 


それでこれからは政界や財界との関りが多くなるだろう、俺はそんな人達と面識を作っていくうえで都合のよさそうな身分を考え”帝国経済研究所”という、これからの未来の知識を生かして世界の歴史や経済活動から日本経済にとって一番いい流れをアドバイスできるような会社を立ち上げる事にした。


他にも世界中にある地下資源でまだ未発見の鉱石や石油にガスなどについて実際にその国や現場にいき確認して開発の交渉や開発に必要な器材などに詳しいプロを雇うことにした。


こっちでは山師とか言われるような人達だが、どこかにある地下資源を探しまわるわけではない、未来に発見されて採掘される場所がわかっているわけだ。それらの鉱石を先に採掘して日本に運ぶ為のプロセスを知っている人達だ当然その国との交渉も必要だから現地かそこを植民地として関わっている国の企業との合弁企業をつくり採掘するつもりだ。この日本にその資源を運び加工し製品にして各国に輸出して外貨を稼ぐつもりだ。


そのための目的で帝国資源開発株式会社も作る事にした。人材は渋沢先生の伝手で〇菱系列の鉱物開発会社に勤めていた奥野英太郎とその部下3名がこの会社に参加してくれた。もちろん高給が条件だよ、丸の内のビルの一室を会社の住所にしてこの二つの新会社を新しく登記した。


それから今までの資本を投資した会社の社長には株式会社にする事とこれからの海外進出を考えカタカナ記名にして下記のように変更することで了解をもらった。、、、そして五条商会を会社登記からなくした。



帝国経済研究所・・・・・・・新会社

帝国資源開発株式会社・・・・新会社

ダ〇ロ〇プジャパン株式会社・新会社


医薬品関係・・・・・・・・・ジャパンファーマ株式会社

加納医療器店・・・・・・・・メディカルK株式会社

風間発動機・・・・・・・・・カザマ株式会社

江崎製鉄所・・・・・・・・・エザキスチール株式会社

白鳥電気・・・・・・・・・・シラトリエレクトロニクス株式会社


五条商会をなくして、、

人材派遣会社・・・・・・・・帝国スタッフ株式会社

ジ〇ポー部門・・・・・・・・帝国ライター株式会社

洋食器や製品デザイン・・・・帝国デザイン株式会社


これで100年先も続く会社になる事ができると思った。



       ~~~~~~~~~~~~~~~~~


1905年3月

奉天の北方70km鉄嶺てつれいの街にあるロシア軍の陣地


ロシア軍総司令官クロパトキン大将

私は100年前のナポレオン戦争でもロシア軍が採用した伝統的な戦法である「戦略的撤退」を決行した。あのまま戦闘を続ければ奉天は第三軍に包囲されハルピンと奉天のあいだの鉄道が遮断され我が軍は孤立し壊滅すると考えた。


副官や各軍を率いる将軍たちは、奉天の前面を守る堡塁や塹壕陣地では日本軍の主力攻撃の猛攻に耐えていてまだまだ戦えると言ってきたが、後方に回りこもうとしている第三軍が日本軍の主力部隊で我々は包囲殲滅されると説得して全軍にいったん北方70kmにある鉄嶺てつれいの街ににある味方の陣地に転進を指令した。


欧米のマスコミにもこれは「戦略的撤退である。」負けたわけではないと説明してそれを信じて各国は報道をしてくれた。


これで私はまだまだ満州軍総司令官として日本軍と戦えると思い、祖国にはロシア陸軍200万の兵士がいる、その半分も動員はされていないシベリア鉄道を使いハルピンで補給を受けて部隊を立て直し、またインド洋にはバルチック艦隊が極東への航海の途上であり、春にはバルチック艦隊が思い上がった日本に鉄槌を下すであろう、それにより敵は海上輸送が途切れて補給に苦しむことになる。その時をまって全軍で日本軍にもう一度決戦を挑み叩き潰してやるぞ!と思っていた。




ロシア帝国首都、サンクトペテルブルク

ロシア陸軍大臣のウラジーミル・サハロフは皇帝ニコライ二世に面会して奉天会戦についての報告をした。その最後に大臣は「陛下このたびの奉天会戦について私の意見を述べさせていただきます。」そう前置きすると彼は静かに考えを話した。


「二つの軍が戦場で出会うとき、それぞれ一つずつの目標を持っております。そしてその目標を達成した方が勝者でございます。そうなると残念なことに我がロシア軍は日本軍に敗れたことになります。」と述べ、クロパトキン大将の思惑の通りにならず、ロシア軍の敗北を公式に認めたのである。ニコライ二世は奉天会戦での敗北を屈辱的なものと感じロシア満洲軍総司令官のクロパトキンに降格処分をくだした。


奉天会戦の際はロシア満洲軍第1軍を率い左翼に布陣して何度も日本軍の攻撃を撃退した猛将ニコライ・リネウィッチ将軍がロシア満洲軍総司令官に任命された。「退却将軍」「弱虫将軍」と影口を言われ降格されたクロパトキンはその第一軍司令官として彼の部下になるという屈辱的な降格処分になったのである


屈辱をうけた彼は反発することもなく日露戦争後は軍中央から退き、第一次世界大戦ではロシア北部方面軍・第5軍を指揮しドイツ軍と戦うが大敗する。その後ロシア革命の際に逮捕投獄されるが危険人物と見なされずにすぐに釈放され晩年は故郷で教師として静かな余生を送り76歳で亡くなるのであった。戦闘指揮官には向かない文官系タイプの人物だったのである。



満州奉天近郊の戦場あと地


若頭・大庭丈一郎

俺と留吉に髪結いの杉山とゲタ作りの須藤は無事に奉天会戦を生き残れた。敵の迎撃もすさまじく、、敵の塹壕に突撃をかけた時には何発も撃たれてしまった。運よくこの防弾プレートが受け止めたが、さすがに痛みで一度倒れてしまった。


根性で痛みを我慢して俺は立ち上がり、銃剣を付けた三十年式歩兵銃を構え直して痛みを我慢したすごい顔で、俺に射撃したロシア兵に向かっていくと奴は何かを叫びながら武器を捨てて塹壕を飛び出しすごい勢いで逃げ出した。


奴は何を言っていたんだか、、それからは俺達は敵の反撃があると聞かされ敵の塹壕にこもり、防御態勢を整えたが俺達の銃の弾は補給がこないので無くなりかけていた。


旅順で敵から奪ったマキシム機関銃や露助の小銃や銃弾が後方の司令部から大量に支給されそれを使いきって壊滅してやった。


もう一度、攻めてきたらあとは石礫しかなかった。、だがロシア軍は反撃してこなかった。


その後やっと総司令部からの補給品が届いて俺たちは首の皮一枚でこの窮地を抜け出す事ができたのである。


それで今、俺達は奉天から慌てて逃げだす露助たちに砲撃を加えて尻を叩いたのだがハルピンに向か道筋や平原にはその砲撃で死んでいった兵士を片付けて

いた。昼間でも氷点下の気温で遺体は腐ることもなく凍って運びやすかった。


160kmの前線には捨て置かれた敵兵の遺体に撤退についていけない負傷兵が残され、また勇敢に戦っていたロシア兵の一部隊などは、長大な戦場の為に撤退命令が届かず知らないままに我が軍に包囲されて事実を知ると戦意をなくしすぐに降伏した。奉天から離れた部隊ほど、ほとんど連絡がいってなかったようだった、よほどの決断だったのだろう。露助が優勢だと思っていたがなにを怖がったのかさっぱりわからなかった。


水アメ屋の留吉

「兄貴~、この荷車見て下さい、露助の酒と食い物がいっぱいありますぜ、」


髪結いの杉下市蔵

「ほんとうですか、、やった、補給が遅れててまともなものを食べてなかったので助かりますよ。」


ゲタ作りの須藤栄吉

「兄貴、これどうしますか?、」


若頭

「市蔵さんと栄吉さんで乃木少尉の所に持っていってもらえますか、、腹をすかした他の小隊にも分けてやらないとダメでしょから、少尉の指示にしたがってください。」


そう言って二人は、その荷車を押して後方の味方の陣地に向かった。


俺と留吉はまた凍った遺体を荷車に積んだ、、その荷車は露助の凍った遺体でいっぱいだったが、平原にはまだまだ沢山の凍った遺体が放置されていたのである。




つづく、、、、












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ