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第81話 加納医療器械店


1904年12月

東京本郷の大通りに面した場所には、たくさんの医療器械関係や医薬品の会社が軒を並べていた。日帝大医学部附属病院での関りで成り立っていたのである。


その中でひと際デカいビルが建っていた。それは加納清二が社長をしている加納医療器械店、、尚美の医療器具や器械を作っている会社だった。


加納清二

俺はもともと銀細工や銅や柔らかい金属の加工、それにガラス細工加工も得意にしていた職人だった。4年前に知り合いの渋沢先生から頼まれた水銀血圧計と聴診器を作ってから人生が変わってしまった。 


それから尚美ちゃんと結城君を渋沢先生が紹介してくれて結城君が資金を出してもらい血圧計と聴診器の大量生産の為に人と生産器材を増やして会社を大きくしてきた。点滴のガラス瓶に細かい細工や注射針に尚美ちゃんから言われた物はなんでもつくった。


2年位前からは結城君から医療の特殊ステンレス鋼材ができたのでそれを使って尚美ちゃんから言われる手術器具を作って欲しいと言われて、、川崎にある江崎製鉄所から部材を買っている。ここも結城君から資金を出してもらったグループ会社で江崎満吉社長とはそれからは親しく付き合っている。


医療用特殊ステンレス鋼は優れた耐食性これは、手術器具を無菌状態に保つために重要でクロム含有量が多いため体液や洗浄剤による損傷を防ぐ保護層が形成され、耐久性、生体適合性がよくこの材料は体の中に埋め込んでも錆ないそうだ。


この医療用ステンレス鋼を使い手術器具、とくに鉗子、攝子、剪刃と呼ばれるものを形状や長さを変えてたくさん作った、、尚美ちゃんのアドバイスでこれはこの先百年くらい先の未来でも沢山の病院で使うから、正確な形状と寸法を記録にしてカタログとしてまとめてきた。器具の名称はすべて尚美ちゃんがつけてくれた。


本当に尚美ちゃんの言う通りで各地にあるデカい病院から、尚美ちゃんがつけた名称で沢山の注文がきた。、、陸軍からも衛生兵の装備する医療器材が大量にきた時は大変だった。人を増やしてやっと納品することができた。その神様のような尚美ちゃんが今、向かいに座りお茶を飲んでいた。


「ね~、社長さん、、こんどうちの附属病院にレントゲン装置が入った事聞いてる。」


「知ってるさ~、京都にある島〇製作所のX線レントゲン装置だろ、病院に納品がてら見にいったよ髪の毛が薄い医者がなんか操作していたな、、」


「それでね、思いついたんだけど、あれがあると骨の骨折の状態や治療の効果を確認するのにとっても便利なのよ、、、」


「その骨折治療するのにね、、こんなものを作ってほしいんだけど、、、」



尚美

未来の整形外科で使われている骨接合のスクリューやプレートなどのインプラントはほとんどがAO式と呼ばれるもので、世界共通の規格品だ。


私はこの骨折治療に最適なAO式骨折治療法に使う器具とインプラントの製作を加納社長にお願いにきた。


これは体の四肢である腕や足のほぼすべての部位の骨の骨折に使えるプレートと呼ばれる穴の開いた金属インプラントとスクリューと呼ばれる螺旋ネジを使い、骨折部分にこの金属プレートで補強してその穴にスクリューと呼ばれる螺旋ネジで固定する術式になる。


医療用のステンレス材料によって錆たり腐食することが無いので感染の心配もない、、その各種プレートといろいろな太さと長さのスクリューそれを骨に入れる為に小さな穴を開けるドリルやドライバー、骨の穴の深さをはかる特殊なゲージに骨把持鉗子など、最初は一番使う規格の試作をお願いした。


加納社長その資料を見て驚いてしまう。

「すごいね~、、こんなもんが体に入るのかい、まるで大工道具じゃね~かよこれはサビる事はないのか、、」


「だいじょぶよ、この医療用のステンレス材料は特殊な加工がされているから錆びないわよ、、他にもまだお願いしたい事があるけど、、まずはこれを試作してちょうだい、、」


「ああ、、分かった、、一週間くらい時間をくれよ、、何とかしてみるよ、」


「やった~、、じゃお願いします。」


こうして6~70年も早く世界基準の骨折治療法の器材がこの加納医療器械店から生み出されていくのであった。



       ~~~~~~~~~~~~~~~~~



1904年12月


結城

渋沢先生との打ち合わせも済んで年が明けての1月に西園寺先生と面会する段取りができた。それまでに未来の出来事が分かる映像資料を親父のコレクションのDVDから拾い出し加工して15分くらいの内容にしてノートPCにいれた。、、その日を楽しみにしていたら


東京小石川の東京砲兵工廠構内にある陸軍技術本部の南沢岩吉技術大尉が防弾装備についてお礼と詳しい話を聞きたいと連絡があった。俺は丸の内の会社でその大尉と面会することになったのである。


丸の内の五条商会、、、面会日、、応接室


ビシとした陸軍士官の軍服を着た南沢大尉が向かいのソファーに座っていた。テーブルにはお茶も出してあり、すでに俺は挨拶をして彼からの質問をまっていた。


「結城社長も旅順に行かれていたそうですね。ご苦労様でした。、、社長の作った鋼鉄のヘルメットが素晴らしくて大勢の兵士が敵の榴弾が上空で爆発しても頭部を守り助かったと言っておりました。このような素晴らしい製品を陸軍に奉納していただきありがとうございます。」


「それとこの防弾プレートも素晴らしいですよ、、見て下さい弾がこのようにめり込んで頭がつぶれてちょこっとしか出てなくてしっかりと止めています。

これでどれだけの兵士が致命傷にならずに済んだことか、、本当にありがとうございます。」


「乃木大将からもこの戦争が終わったら、商工会と五条さんには陸軍から感謝状を出すように言われております。、、」


「どうしたら、、このような防弾装備がつくれるんですか、それもあの激戦地の第三軍に配属された師団だけにいきわたるようするとは、、まるで知っていたかのようにぴたりと4個師団分その理由も教えてもらえますか、、」


”ギャ~、コイツ、何を聞きにきたんだよ~、そん事、どう答えればいいんだよ、、未来からきているんでわかりました。なんて言えるかよ、ごまかすしかない!、、”


「えっ、偶然ですよ、そん事知るわけないじゃないですか、全国の会員企業から集めた陸軍への必勝を祈願しての寄付金ですから、たまたま集まったお金が

4個師団分で全国の企業の顔を立てる為に、北は北海道と日本海側では金沢、、そして関東の東京と四国の高松みんなバラバラの地方の師団に装備を送ったら

第三軍になってしまったわけですよ、各会員企業からもそして参謀本部の阿部中佐にも了解を事前にもらっておりますし、それで何か問題でもありますでしょうか、、」


「いや、、ただ個人的に疑問をもっただけでありまして、、会員企業の皆様にも後でお礼を伝えてください、、」


「それとこの防弾プレートはどのように作ったのですか、、」


俺はこれを作った時の事を詳しく話した。


「そうですか、第一師団で事前に実弾を使って適切なサイズを決めたんですね私どもにご連絡頂ければお手数をかける事もなかったんですが、、」


「ほんとにこれは素晴らしいですよ、、陸軍で採用になるようでしたら社長に連絡しますのでよろしくお願いします。」


「あとは、、社長に御意見をうかがいたいんですが、、、」


「なんでしょうか、、」


「今回の旅順では塹壕戦となり厳しい戦いでしたが、あのように鉄条網で囲まれた敵の機関銃陣地をつぶすには、どのような装備があれば効果があると思いますか、もちろん手投げ弾などは届く距離まで行けばどうにかなりますが、、その前にハチの巣になるでしょうね。、何か、いい案はありますか、、」


”エ~、、俺にそれ聞くの、、俺ミリオタだけど、いいの、、喋ったら止まらないよ”


”最初に俺は口径が12mmとかデカい弾で長距離を望遠レンズを使い、ロングレンジから正確に銃座をつぶすスナイパーと呼ばれるプロの射撃手の育成、これは敵の士官や将官などの指揮官を狙うこともできると話した。


塹壕戦では守りにも使える前線兵器、口径70mm程の分隊でも装備できる軽迫撃砲も有効で山なりに砲弾が飛ぶので敵の塹壕攻撃にも有効だ、特に連発で弾幕がはれるので敵の突撃攻撃にも使える。


最後はグレネードランチャーだ単発・肩撃ち・中折れ方式の銃身とストックは蝶番で接続されており全長700mmくらいで銃身中央には折りたたみ式の照準器があり最短25mから有効射程の250mまでできるものだ、その標的に40x46mmグレネード榴弾を正確に撃ちこむことができる。”


俺はそんな事をまるで見てきたように説明しながら紙に図解までして書いて見せてしまった。


書き終わった俺は正気にもどって、、”やっちまった”、、と思いながら南沢技術大尉の顔を見ると彼も目を輝かせ俺の話しを一生懸命に手帳に控えていた。


「いや~、、それはすごい兵器ですよ、、迫撃砲や大型狙撃銃もすばらしいけど、そのグレネードランチャーは歩兵が持つ小型の大砲じゃないですか、円筒形の弾入れにしてリボルバーの銃のように回転させて連続発射も可能ですよねそれなら開口部がある銃座や敵の砲座に連続して撃ち込めば効果はすごいですよ、これはいい話が聞けた、、ありがとうございます。」


そう言って彼は立ち上がり握手をして笑顔で帰っていったのである、、


俺はあまりにもミリオタ丸出しで何か突っ込まれるかと思ったがどうやら彼も同類の様だった。 





つづく、、、、






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