第77話 結城の満州計画
正岡子規
おいらが病気になる前は新聞『日本』の記者となり、日清戦争の取材にいったり俳句や短歌、評論などの文芸活動の拠点としていた。今もお世話になって相変わらず俳句や評論などの執筆で食わせてもらっている。
最近はおいらが書いた新聞『日本』の連続小説で「おいらは海賊キングになるぞ!」という空想小説が子どや大人達の間で大ヒットなり新聞『日本』で本になる事になった。尚美ちゃんの家で労咳の治療中に夢中になって読んだ漫画をしっかりと、”パクリ”、、ました。名前をかえて挿絵もまったくマネてたくさんいれてぜ~んぶ、、”パクリ”、、ました。こんなに大ヒットになるとは思っていなかった。
力や権力がある奴が弱者を虐げ酷い扱いをする様子を、おいらは日清戦争で見てきた。日本兵が武器を振り回し清国の民を虐待する。この話はそんな奴らを最後にはぶっ飛ばすような話しだ。
痛快、愉快だよ、まさかこんなに大衆に受けるとはこれを読むために新聞の売り上げも倍増だとさ、おいらが労咳で寝床にふせっていた時も給金をだしてくれた会社だ、、恩返しになればいいんだが、、
だがどうしよう、おいらの名前は俳句関係で歴史や教科書で残ると尚美ちゃんは言っていたが、、どうも残りそうもない、漫画パクリ小説は俳句なんかよりも若い人には受けがいいようだ、、まだまだ、尚美ちゃんの家で読んだ漫画ネタはたくさんある、、次はたくさんの巨人がでてきて残された人間と戦う話も書こうかな~、なんて思っている。未来の原作者の皆さんどうもゴメンね~
そんなある日、俳句の弟子の上杉先生が労咳の再発はないか検診をしてくれた時に、ついにこの時代でも労咳を治療する薬ストレプトマイシンができて治験においても完治する人もでてきたそうだ。
最初の患者は薬物学の研究生の婚約者で余命が1ヵ月位のところ完治した話をしていて、この事はまだ秘密にしてくれと言っていたのに、それをおいらは新聞『日本』の小説担当者と打ち合わせしている時にうっかりと話してしまった。まずいと思ったが口が勝手にしゃべりだし止まらなかった。最後にぜったいここだけの話しだぜっていったのに、数日後の新聞『日本』の第一面には「ノーベル医学賞の上杉先生と城島先生、、次は労咳治療薬を完成させる。」とでかっくのってしまった。
”こんちくしょ~、やばい、”と一瞬思ったが言っちまったことはしょがね~やおいらに話した上杉先生が悪いんだよ、と思い直し土産にもらったかりんとうを食いながら空想小説の続きを書きだした。
書斎には尚美ちゃんの家から勝手にもってきた沢山の漫画が山積みになっていてそばでは妹の律がいしょにかりんとうを食いながら漫画を読んでいた。
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結城
俺は仕事のあいまに数日間かけて、日露戦争の講和であるポーツマス条約について調べた資料をノートPCにまとめて、自宅の自室のデスクでそれを眺めて考えていた。
まだ日露戦争は続いているが、この戦争はめちゃくちゃ金がかかっている、この時代のお金で日本の国家予算は6億8千万円だというのに、この戦争にかかった費用は約20億円もかかっている。国家予算の3倍近くかかっているんだ。
もともと資源もなく輸出品も生糸ぐらいの何もない今の日本において、とてつもない金と広大な領域と資源をもった白熊ロシアとの戦いに、満洲軍総参謀長の児玉源太郎はじめ軍の首脳や日本政府は開戦当初より戦争の期間を約1年に想定して戦況が優勢なうちに講和に持ち込もうとしていたのだ。
1905年の3月の奉天会戦の勝利以後は武器・弾薬の補給も途絶えた。さらに戦争を続けるとさらに25万人の兵と15億円の戦費を要するとして続行は不可能と大本営と国家は結論づけていた。
ひたすら講和の機会をうかがった、5月末の日本海海戦でロシアバルチック艦隊を撃滅したことは、その絶好の機会だったのである。そして交渉をさらに有利に進める為に樺太全土を占領した。
一方のロシアもまだ負けたとは思っていないので戦争を終わらせる為の補償金なんかまったく払う気はなかった。むしろ戦費の補償金を支払うくらいなら戦争はまだ続ける位の気迫はあった。ロシアのバルチック艦隊は確かに負けたがシベリア鉄道で陸軍の兵士はいくらでも送れるのだ。
国内では対露強硬論者達がこのような事情も知らないで講和の最低条件として「賠償金30億円、樺太・カムチャッカ半島・沿海州全部の割譲」を主張し、新聞もまた対露強硬論者達の主張を挙げるなどして国民の期待感を煽り、国民もまた戦勝気分に浮かれていた。
日清戦争後の下関条約では、台湾の割譲のほか賠償金も得たため、日本国民は大国ロシアならばそれに見合った賠償金を支払うことができると信じていた。
日本国内においては軍や政府の思惑と国民の期待のあいだに大きな隔たりがあり、これがのちに日比谷焼き打ち事件なんて物騒な騒動がおこるんだ。本当に金がない日本は国民も心の余裕はないんだ
最終的にロシアと合意した条項は下記の通りだ。
① 韓国での優越権の承認
→ 日本が韓国を主導できる立場をロシアが認めた。
② 南樺太の割譲
→ 北緯50度以南の樺太を日本領にした。
③ 関東州の租借権と南満州鉄道の利権
→ 中国大陸での経済・軍事的な足がかりを得た
④ 沿海州などの漁業権
→ オホーツク海やベーリング海で漁が可能に。経済的に大きな利益
賠償金なんて全くない、金はないし借金だらけの日本だよ、油断すれば外国から植民地のように搾取されちまうしうまく立ち回らないといけない、、
金がないならあるとこからだしてもらばいいのさ、せっかく合衆国大統領ルーズベルトが仲介に入ってくるんだから、、フフフフ
この大統領も人が良くて仲介するわけじゃないよ、、中国じゃなくて清国への市場や利権の取っ掛かりがほしいのさ英国に先を越されてしまい、、彼らにとってロシアよりも自分達の言う事を聞く子飼いのような日本人、裏表や隠し事もできないし考えも顔に出る様なまじめな日本人の方が扱いやすいのさ、、
だからこの仲介で日本に恩を売ってアジアの市場に自国の製品を売り込み、資源の搾取をしたいのさ、、
だったら、、彼らを利用するだけさ、、美味しい餌をぶら下げてやればすぐにくいつくよ、、、
まずは最初から賠償金は諦める。最初の交渉としては必要だが、樺太は絶対に島ごと頂く、、現代で言うとサハリン島ここはニコライも折れたような形で半分が日本の物になったが、ここには石油と天然ガスがまだ開発されずに眠っているお宝の山だよ。
史実でも1905年7月に樺太は日本軍が全島占領している、ここに米国の海軍基地、軍港の建設を認める約束でもして米国から圧力をかけて樺太はぜったい島ごともらうそれでも米国が協力しなければ、、この島にあるオハ油田を米国の石油王「ロックフェラー財団」との共同開発を持ち掛ければいい、何だったら米国海軍基地とセット提案でもしてなんとしても全島を日本の島にするんだ、そして米国からその利権の金を頂く、、
それに、南満州鉄道の利権を米国の鉄道王と言われる「ハリマン」に同じく共同経営をもちかけるのさ彼はシベリア鉄道も興味を持っていて必ずこの提案にはのってくる。必ず「ハリマン」は資金は出す。
まだある、ヨーロッパのユダヤ系財閥「ロスチャイルド財閥」に交渉して、この満洲のどこかに、ユダヤ人特別地区をつくり移民政策を進める事を日本政府が約束するのだ。その見返りに経済支援の金をだしてもらうこともできる。彼らはユダヤ人のヨーロッパでの迫害に関して心を痛めている。安住の地がないのだ。
どうせ前の時代では満州国なんてものを作ったはいいが、ソ連軍の侵攻でめちゃくちゃになってしまう満州だよ、ドイツのヒットラーに虐殺されるユダヤ人の歴史があるなら、誰からも迫害を受けないユダヤ人達の自治区をここに作りうまく関係を作れば世界中のユダヤ系財閥が日本の応援をしてくれるはずだ。
その集めた資金を使い満州の資源開発の利権とハルビンとチチハルの間にある松遼盆地に眠る。この時代に誰も知らない大慶油田の開発に投じて日本の国営企業がその利益で戦争の借金を返していくのさ、うまくいけば10~15年位で返せるんじゃないか、借金を返す為に国民に増税をしなくても済むし、米国も喜びユダヤ人も喜ぶとてもいい計画と思った。
こうして渋沢先生との打ち合わせ用の資料を作ってひと安心した俺は部屋の本棚をみると趣味の漫画で、『ON〇 PI〇〇E』と『進〇の巨〇』がごっそりと抜けているのに気が付いたのである。
”ぜったいに、、、あいつだ!”と犯人に気が付いた結城である、、、
つづく、、、、、