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第75話 尚美と結城の帰国



ロシア軍が何年もの時間と莫大な国家予算をかけて構築した。近代要塞が乃木司令官率いる第三軍によって布陣してから三か月程で陥落してしまった。


世界中から来た観戦武官にジャーナリストは驚愕してしまった。アジアの物まねがうまい黄色いサルが、白人が何年もかけて構築した近代要塞をわずか三か月で陥落させ、それも攻める側の日本軍の方が被害が少ないのだ。


本国に事実を伝えてもすぐには信じてくれなかった。 世界は白人で最強のロシア陸軍があのデカい体で、チビで軟弱なサルをひねりつぶすと誰もが思っていた。


それが、何千人ものデカい体をしたロシア兵が、小さなサムライに連行されて山の要塞から両手を上げて降りてくる写真が世界中に配信された。アジアの白人に虐げられている人々は、同じ顔をした日本人を誇りに思ってこの記事を読んだ。


また敵のロシア軍は第三軍を恐れた。それは士官や一兵卒の兵士までが第三軍とその乃木司令官を悪魔のように恐れた。自分達の戦場には絶対に現れないように神に祈ったのである。


日本中は歓喜に沸いた。どこもかしこもお祭りのような騒ぎである。あまりにも騒ぎがすごくて警官隊が出動するほどであった。


そんな騒ぎも知らず旅順市街から少し離れた場所にある。戦いで亡くなったロシア兵が眠る墓地に尚美はきていた。


そこには第二回旅順港閉塞作戦において閉塞船福井丸を指揮していた広瀬 武夫少佐が静かに眠っている。日本ではすでに軍神扱いになっている広瀬少佐


旅順港閉塞作戦の五日後に指揮していた閉塞船福井丸の沈没した船首付近に浮かんでいる遺体がロシア軍によって発見された。戦争中であったが、ロシア軍は栄誉礼をもって丁重な葬儀を行いこの墓地に埋葬したのである。墓標にはすでに他の日本の士官や兵が墓参りに来ていたのか、たくさんの線香やタバコに

菓子などのお供えがあった。



4番目に変わってしまった私の推しの広瀬少佐に静かに両手を合わせて拝んだ


(エ~~、俺2番目じゃなかったの~、二人増えたじゃん、誰、誰だよ、教えて、ね~)久しぶりの登場、広瀬少佐




1904年11月


陥落した旅順要塞に伊地知少将を司令官とする守備隊を残して、補充及び再編された乃木司令官が率いる第三軍は、敵である総司令官 アレクセイ・クロパトキン大将が率いるロシア満洲軍との対決の為に、奉天に向け北上している総司令官 大山巌元帥率いる満州軍との合流をするために急ぎ北上することになった


翌年の1905年2月21日から3月10日にかけて行われる、日露戦争における最後の大規模な会戦である奉天大会戦、双方あわせて60万に及ぶ将兵が18日間に亘って満洲の荒野で激闘を繰り広げ、世界史上でも希に見る大規模な会戦が待っていたのである。


私と結城はここでみんなと別れる事にした。この旅順での戦いで無駄な肉弾突撃で死んで行く兵士を少しでも減らそうと思い、防弾装備を用意したり負傷者の治療が目的で現地に来たわけだが思った以上の結果で終わり東京に帰る事にした。


まだまだ戦いが続く若頭達に余った非常食やお酒を差し入れして、今では私の一番の推し第一師団の真田連隊長と二番目になってしまった推しの第九師団の加藤連隊長に最後の挨拶をして、、三番目に下がった世界の礼節の神様、乃木司令官にも「ご武運を祈ります。」と挨拶をして、大連からミニバンを乗せてもらえる貨物船を見つけて東京に帰ってきた。


ちなみに医学生の庄吉と一郎は、三か月の特訓でどうにか薬も間違わないで治療ができるようになったので勝次校長に任せてきた。


疲れてやっと二人が王子の自宅に着いた時には、街に秋の風が吹いていた。



      ~~~~~~~~~~~~~~~~~



結城

姉さんは銀座の店に朝早く出勤した。代理で頑張っている玲子さんに帰ってきた事を報告するためだ、俺も午前中は風間発動機の社長に会って午後からは丸の内の会社に行こうと思っていたら、渋沢先生がやってきた。


「お~、結城、無事に帰ってきたな~、、第三軍は大活躍じゃないか、、ちょっとお邪魔するよ、、」そう言って先生は自分の家のように居間にあるソファーに座った。


どうも幸子ちゃんが俺と姉さんが帰ってきた事を知らせたようだ。


「戦場はすごかったですよ、大勢の兵士が殺し合いをするんですから火薬の臭いや血の臭いで大変でしたよ、、」


「そりゃ、そうだろう、儂も維新では血なまぐさい経験をしたからな、、ところでちょっといいかい、、」


そう言って渋沢先生は俺と姉さんがいない時に、この家にある未来の出来事がわかる資料やDVDを見てしまったようだ、、


あれを見れば誰でも嫌になるだろう、これから向かう日本の未来は満州事変や日中戦争そして太平洋戦争へと続き原子爆弾でとどめを刺され、ソ連軍の侵攻で満州にいた邦人入植者の集団自決や樺太や千島列島なんか、みんな取られちまうんだから、、すべて軍人がこの国のかじ取りをしてしまうからだ。


それを心配して俺に何とかならないかと相談してきた。


それは俺も考えていたことだ。この国を技術大国にして貿易で世界一の経済大国にしてしまい、未来の米国のような強い発言力があり世界の平和を先頭になって解決するような先進国にしたいと考えていた。


俺は先生に今できる事は、この日露戦争は日本が勝利して終わるが、その後の戦争の補償問題で国民が大きく不満が残る結果になり、、この戦後の満州の扱い次第では大きく歴史は変わると話した。


詳しい資料が手元にないので簡潔に先生に話したが、日本は満州の利権に気がつきここを守るために軍隊を駐留させるが、これがのちの関東軍となり当時満州の軍閥であった。 張作霖という人物を爆殺日本政府の意見を聞 かずに軍を動かし満州事変を引き起こす、、軍の統帥権を握 っている天皇はこれを知り叱責した。当時の内閣は大騒ぎとなる。普通に 考えたらそんなことしたら ⼤逆罪となって関東軍のト ップは死刑になることは確 実だが、政府はこれを黙 認。実質的に関東軍の暴走を許す事になる。


その後さらに関東軍は盧溝 橋事件を引き起こして日中 戦争に突入していき最後は太平洋戦争へとつながっていくのである。


満州をどのように扱うかつまり関東軍なんていう化け物や満州鉄道株式会社なんてものがでてこなければ歴史は変わるわけだ、、あとは陸軍や海軍を文民たる政治家が統制するシビリアン・コントロールによって軍人の暴走をさせないことだ。統帥権を握 っている天皇の言う事も聞かなくなるようじゃもう民主国家じゃないよ、


そういう事を渋沢先生に簡単に説明した。俺はあとでこの時代の政治家や政党これから起きる日露戦争を終結するために合意したポーツマス条約なんかを調べてなにかいい策があるんじゃないか考えてみると話した、、先生も政治家ならいろいろと知り合いがいるからそれは頼ってくれと心強い事を言って後日この件については打ち合わせすることにした。


俺は満州に関東軍や満鉄が発見できなかった大慶油田という、とんでもない量の原油が埋蔵している油田がある事を商社の仕事の関係で知っていた。


他にも未来では貴重となるレアメタルも中国には眠っている。この先何十年も誰もそんなもんは見向きもしないだろ。うまく中国いやまだ清国と交渉ができないか考えてみる事にした。



       ~~~~~~~~~~~~~~~~~




銀座のビル


玲子

”やっと尚美が帰ってきてくれた。なれない月刊誌の仕事にファッションや化粧品の仕事で、、好きなバイクについてはほとんど関われなかった。”


「尚美、お疲れ様、、旅順を落とした第三軍の乃木大将が日本中ですごい人気になってるわよ、、あんたなんかやったでしょ、こんなに盛り上がるなんてたしか苦戦してたくさんの兵隊さんが戦死して、やっと年明けに陥落させたような気がするんだけど、、こんな人気なんかなっかったでしょ、、」


「え~、ちょっと酔っぱらってよけいな事をしゃべちゃったのよ、、」


「誰に、なに喋ったのよ、」


「あの乃木大将の長男で、乃木 勝典 少尉が酒を飲んでいる時にとなりにいてそんな事も知らずに、どう攻略したらいいかべらべら喋ったら、司令部にいるオヤジにそのままチクリやがって、まあ、結果的には無駄に兵士が死ななくてすんだけどさ、、」


「イイ男なの、、」


「まさか、、年下だし背も低いし、あんた相手してよ、、」


「フ~ン、他に素敵な軍人さんはいなかったの、、」


「、、、、、、、、」よそ見する尚美


「あれ~、あれ~、、その様子では、さては、しゃべんなさいよ、いたんでしょ、」


「しゃべったら、、ぜったい、玲子に横取りされるから、言いたくない、」


「そんな事はしないわよ、ね~教えてよ、三か月も頑張って代わりに仕事してたでしょ、、」


「もう~、、それを言われたらしょうがないわね、、」


「いたのよ、すご~くいい男が、教え子の叔父さんで背は高いし目元は一重でキリとして役者のような感じよ、、体もシャープでキレがある感じ、、年は36歳で艶のあるハスキーボイスの渋い声がまたすてきなのよ、、陸軍中佐で偉いのにヒゲなんかはやしてなくて日に焼けた顔がまたいいの、、」


「え~、ちょっとできすぎよ、そんなのに限って倉蔵とか徳之助とか米蔵みたいな変な名前なのよ、、」


「フフフフ、、玲子、驚くなよ、、名前は真田、、カ、、イ、、ト、、海翔て言うのよ、、」


「カイト、海翔、ギャ~、、な~に!、それ、、まるでアイドルか俳優みたいな名前じゃないのよ、独身?、ねえねえ、独身なの?、、」


「フフフ、、教え子から聞いたけど、、一度結婚していたけど、その奥さんは四年前に病気で亡くなって子供もいなかったから、周りの親戚もいろいろと再婚の話しを持って行っても、亡くなった奥さんを一途に思っているみたいでみんな断っているそうよ、、」


「まじか~、、尚美、それワンチャンあるかも知れないよ、、ムムム、、あんたがアプローチして失敗したら次はいいよね、、」


「え~、、やだな~、まあダメだったらしょうがないわね、、」



尚美

”私は玲子に言わなかった事がある。医学生の白井一郎から真田中佐の亡くなった奥さんは玲子のように、かわいいえくぼと八重歯があり胸の大きい女性だったという事はだまっていた。、きっと二人があえば、、私は玲子の幸せを考えていた。”





つづく、、、、

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