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第68話 旅順の戦い その5

いつも読んでいただいてありがとうございます。



それでは、、はじまり、、、はじまり、、、



203高地頂上 元ロシア軍戦闘指揮所


第九師団歩兵第七連隊、加藤中佐

私はこの頂上を一晩守るため第七連隊と増援された機関砲中隊より先にこの頂上へ副官と一緒にのぼってきた。


周りではロシア兵の遺体や日本兵の遺体が担架に乗せられて下山するところであった。


金沢の学生時代にロシア文学に傾倒してトルストイを無心に読み、ロシア語も勉強していた、その敬愛するロシア人との戦争には嫌悪感を覚えていたが死んでいく部下たちを見ていくうちにすっかりとその気持ちは変わってきた。


とくにここまでのぼってきた中央交通壕からは悲惨な状況で、、兵士の手や足がバラバラになって血だらけで転がっていて臓器が飛び出し損傷の激しいい遺体がそこらじゅうに散乱していた。


そんな光景を見ながら死んでいった兵士に必ず仇をうってやる、と心に誓いここまで登ってきた。


ここの床に血の跡が残り死んでいた司令官は丁重に扱われ、、担架に乗せられふもとへと下ろされた、、きっと観戦武官達が見ている中ほかの戦死したロシア兵といっしょに派手に葬儀して埋葬するのかもしれない、、日本がしっかりとした文明国であることをアピールして、白人に対して敬愛の情があるということを見せつけるつもりだろ。



フフフ、ロシア兵に殺された幾千の日本兵はちっ~ともそんな事は考えてね~よ、、私はあれだけ敬愛していたロシア文学とロシア国だったが今はどれだけのロシア兵を殺してやろうか考えていたのである、その時、、この指揮所の電話が”ジリジリジリ、、ジリジリジリ”となったので受話器を取り上げ耳にあてた。




ちょうどその時

海軍から出向いていた岩村団次郎中佐と伊集院俊大尉が息を切らしながら陥落直後の203高地の頂上に来て、、旅順港側に構築した簡易塹壕に旅順港湾が見えるか確認に来ていた。


そこには塹壕からも観測出来るような潜望式で鏡筒を左右に開き立体視の浮き上り度を増すことが出来る。8倍率の九三式砲隊鏡を三脚架にのせ岩村団次郎中佐が遠くの霞の中に見える旅順艦隊を見て、右手に持った有線の簡易電話の受話器を持って、、受け手の203高地ふもとの指揮所にいる乃木司令官から「そこから敵の艦隊は見えるか~」と聞かれ、、、叫ぶように言った。



「見えま~す、、はっきり見えま~す、、ロシア旅順艦隊一望のもと各艦はっきりと見えま~す。」



9月15日史実よりも3ヶ月早く203高地は陥落したのである。




203高地頂上 元ロシア軍戦闘指揮所

加藤中佐

この指揮所の電話が”ジリジリジリ、、ジリジリジリ”となったので受話器を取り上げ耳にあてた。


「ベドロビッチ少佐か、、私だコンドラチェンコだ、、予備兵力からそちらに2個連隊の兵士が向かっている、、もう少しがんばってくれ、、もしもし~、ベドロビッチ少佐~聞こえているか~、、」



ロシア語が分かる私は相手に静かに答えた。

「コンドラチェンコさん、、もうしわけないがそのベドロビッチ少佐は残念ながら戦死しました。、、こちらで立派な葬儀をあげさせていただきます。、、それからどれほどこちらに部下を送りだしてもみなさんはそちらには戻れませんよ、、フフフフ、、私が皆殺しにしますので、、フフフフ、、」




「き、、貴様、、いったい、、だれだ!~、」




「Japanese、、 commander、、」





そう言って私は電話を切ってすぐ、、副官に指示した。



「大至急に防衛陣地を構築しろ、、、いまここにいる第一師団にも手伝ってもらえ、、ロシア兵が奪回にくるぞ、、、、急げ~」



そうして私は敵を迎えうつために歩兵第七連隊と機関砲中隊に急造の遮蔽壕陣地を構築させて、ふもとの砲兵隊からは観測員が送られてきた山越の砲撃を正確に敵に着弾させるため安全なベトンに囲まれた場所から観測を開始した。


敵が攻めあがってくるのは一方しかなくそこには何の遮るものがなかった。、それは史実で日本軍が第一次攻撃で経験したことが逆になってロシア兵が経験することになったのである。


機関砲中隊は既存の塹壕に土嚢を積み上げそこらに散乱しているデカい木材を天井に積み上げさらに土嚢を積んで補強していた。


彼らが装備する保式機関砲はフランスで開発されたホチキス機関砲に設計変更を加えて日本軍の小銃弾を使用できるようにした空冷式の機関砲である。保弾板によって一度に30発づづ供給される、、三脚架をいれると50kgあった。それが20門用意されて攻撃位置についた。あとは捕獲した、マキシム機関銃が3門あり、攻めあがってくる味方に火を吹くのである痛快である、




第一師団、歩兵第二連隊

連隊長真田中佐


私の部下達が被害担当となってしまった。、、敵からの砲撃が正面の斜面に照準されていたのであろう、、増強され4000名いた部下達の半数が敵の第一塹壕にたどり着く前に機関銃攻撃と砲撃でやられてしまった。 防弾ベストも砲撃には耐えられないくらい壮絶だった。、、その後の敵兵との銃撃戦でも主力部隊が守っていたのか激しい攻防となった。



左右からの第一連隊と第三連隊が支援に来てくれてどうにか突破できたのが現状だった。、第二連隊での損害は総計で3000名近くが負傷か死亡して今はもう

1000名程の大隊規模となったが、、みんなで頂上にのぼり連隊旗を大きく振って ”ばんざ~い、、ばんざ~い、ばんざ~い”と死んでいった兵士に聞こえるような大声をだして陥落を喜んだ。




イワノフとミハイル兄弟

俺は弟のミハイルといっしょに203高地の端の機関銃陣地近くにいた、、敵の砲撃が始まった時、、掩体壕に逃げこうもうとしたら、兵士がいっぱいでしかたなく塹壕の端の方で二人で小さくなって震えていた。近くに”ドカ~ン、、ドカ~ン、、ドカ~ン、、”と太鼓を連打するようにすさまじい砲撃だった。


そのうちさらにデカい爆発音と悲鳴が響いた、、塹壕の角から掩体壕をのぞくと重砲弾の直撃で中にいた十数名の仲間が吹っ飛ばされていた。、、、生き埋めになった兵士もいたかも知れなかったが、怖くて動けなかった、やっと砲撃も終わり、塹壕にへばりついて、喉がからからとなり水筒の水をゴクゴクと飲み、、その水筒を弟に渡した。


弟もそれをゴクゴクと飲んでいた、そしてモンシ・ナガン銃を塹壕の土嚢にのせ銃弾が5発装填された挿弾子をあるだけ取り出し土嚢の上に並べた。


そして、、弟と顔を見わせ、槓杆こうかんを操作して、実包の薬室への装填して攻めあがってくる日本人に狙いを定め引き金を引いた、、なんども、、なんども繰り返し引いた。


空になったら5発装填された挿弾子を素早く右手でとり 開いた遊底に挿弾子を押し込み左手の親指で弾丸を押さえてプレスされた、空の挿弾子を抜き槓杆こうかんをガチャンともどし一発目を装填したらまた狙いを定めて引き金を引いて日本兵を倒した。、、、そんな事を何度もしていたら近くの機関銃座で手投げ弾が2回爆発して味方の悲鳴が聞こえた。


一人の勇敢な日本兵が塹壕に飛び込んできて二人のロシア兵相手に銃剣での白兵戦が始まろうとしていたが、突然、塹壕の上にきた将校が大型拳銃でデカいほうの仲間を射殺すると残りの日本兵がもう一人を銃剣で刺し殺した。



俺はすぐにここはやばいと思い、、弟の腕を引っ張り、、先程、直撃をうけた掩体壕にもぐり込み二人で死んだふりをした、俺達兄弟に気がつかないで、塹壕の上をたくさんの日本兵が声をあげてのぼっていった。




尚美と軍医学生の一郎と庄吉


私は戦闘が頂上の方に移ったのでさそっそく行動を始めた、、すでに他の衛生兵も動き出し、担架を持った後方兵も列を作って上がってきた。


「あんた達、、さあ、行くわよ、、」

「トリアージ・タッグはちゃんと持ったわよね」


「何色がなにか学校でちゃんと教えたでしょ、、言ってみなさい、、」



二人とも顔を見合わせ無言、、、、



「あちゃちゃちゃ~、、、、」


「まあ、、いいわよ、黒いカードだけ持っていって、息をしていない兵士の首につけてまわりなさいよ、」


「あと、苦しんでる兵隊さんがいたらすぐに声かけるのよ、、そうそうぜったい、私の近くにいるのよ、、」


二人そろって

「OK!、、了解!、、」といつもの軽い返事



そう言いながら私たちは何も知らずに兄弟の潜んでいる塹壕に近づいていったのである。







つづく、、、、、、







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