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第65話 旅順の戦い その2 

いつも読んでいただいてありがとうございます。



それでは、、はじまり、、、はじまり、、、


1904年9月


大阪砲兵工廠 

工廠長、木村弥平


ここは軍で使用する大砲と砲弾を生産していたが、、最近はほとんどの大砲の砲弾を24時間体制で作っている、臨時で雇った職工は女性も大勢きている、みんな鉢巻きを頭にまいて一生懸命だ。そして追加で二十八糎榴弾砲の砲弾の製造を急いで始めた、、こちらで在庫していた500発や各地の海岸陣地からも砲といっしょに砲弾も送られただろうがそれでも足りないようだ。


特に強固な防壁をつきやぶる堅鉄弾 (重量 217.66 kg)とさらに同じ性能での榴弾である、堅鉄破甲榴弾 (重量 224.0 kg)を合計5000発を製造して至急第三軍に送る事になりフル回転での製造だ。


こんなくそ忙しい時にまた第三軍から手投げ弾の製造要請がきた、、炸裂時に周囲に破片を飛散させる破片手榴弾を作らなきゃいけなくなった。私は一晩考えて、型ができればすぐに作れる鋳物にした。



形は破片効果が出るように工夫をするわけだが、、このあいだ商船に乗っている知人からみやげにもらったパイナップルを思い出し、全体に切れ目をいれてそれが破片効果で相手を負傷させる形状を考えた。それを図面にかいて特急で下請けの鋳物工場に製造をお願いした。



あとは点火方式は一番簡単な撃針発火式にした。これは安全ピンを抜き取り信管の頭部先端を硬いものに打ち付けると、撃針が雷管を突いて延期薬に点火し5~6秒後に爆発する。



ただこの方式では撃針を打撃した後は爆発をキャンセルする方法が無いがこれはしょうがない、、


第三軍の連中は確か鋼鉄製のヘルメットが支給されていると聞いているから、頭のヘルメットに信管を打ち付けて点火すればいいかと思い一番簡単なものを考えた。



それも下請けの会社に頼んだ、、すぐに両方が続々納品されて流れ作業のように職工の女性が慎重に火薬を入れて信管を組み込み日に1000個以上作り木箱に入れ第三軍に送り始めた。


そろそろ第一便の5000個が旅順に着く頃だろう、、役にたってくれればいいのだが、、




第十一師団

工兵中隊、矢島佐平大尉

我々工兵隊は各師団から前職でトンネル工事や炭鉱での作業経験がある将兵が集められての坑道掘削臨時部隊を傘下に組み込み東鶏冠山北堡塁に向けての坑道を8時間作業の3交代で24時間かけて掘り進んでいる。



この強固な東鶏冠山北堡塁を絶対落とさなければあの一番標高がある「望台」に旭日旗を掲げることはできない。


坑道の入り口は悟られないように周りは土嚢で固めて見えないようにはしているが、、、、坑道を順調に掘り進んでいくとどうしても固い岩盤にでくわすその岩盤に穴をあけてダイナマイトのセットが終わった。、ここでこれを地下で爆発させるとロシア軍にきづかれるかもしない、、考えた末に砲兵隊に協力してもらい爆破するタイミングで敵陣に砲撃してもらうことにした。



私は坑道入り口の脇に作った指令所にダイナマイトとつながった起爆装置を設置して副官が指示を待っていた、私は簡易電話の受話器を取ると耳と口にあて

箱のダイヤルをグルグルとまわした。「こちらは工兵中隊の矢島ですが、はいそうです、、砲撃をお願いします、、はい、それでは、、」そういってガチャンと切った。



4~5分したら敵陣に野砲中隊の6門の砲弾が「ド~ン、、ド~ン、、ド~ン」と腹の底に響くようにして土煙をあげて敵陣に落ち始めた、、私は副官の顔をみてうなづいた。


彼は「3、、2、、1、、爆破!、、」といって起爆装置のT字型のハンドルを勢いよく押し込むと坑道から「ドス~ン」と低い爆音がして埃が勢いよく爆風といっしょに吹き出してきた。


砲撃もそれにあわせるようにやんだ。そんな感じで我々の掘削工事は今のところは犠牲者も出ないでうまく進んでいた。予定よりも早く完成しそうだった。






第一連隊加藤少佐


私達の師団目標は一番標高がある「望台」の右手に陣地を構える二龍山堡塁と盤龍山堡塁だったが方針がかわり二十八糎榴弾砲が到着してその強力な砲撃でこの堡塁に打撃を与えてからの攻撃となった。


おけげで300m先の敵陣地までマキシム機関銃の餌食にならず済んだ、、、他の連隊と交代で夜間に土嚢を抱え駆け足で目標の場所に積み上げてきた。


敵も黙っていなくて最近は海上用のサーチライトをこちらに向けて夜間警戒をしているが、、盤龍山北堡塁の前哨陣地である塹壕の手前30mほどの先にある鉄条網の近くまで土嚢を積み上げ弾除けにしてここまできた。 


敵の野砲も近すぎて撃てないようだ、、我々も敵に近すぎ味方の野砲の支援は受けられない、、


敵は夜間でもマキシム機関銃で”バババッバッバ、、”と撃ってきた、土嚢の陰に隠れてすかさず、、こちらもブリキの手投げ弾に火をつけて、、敵の塹壕に一斉に投げ入れた。


”バ~ン、、バ~ン、、ギャ~、、バ~ン”、、、、と爆発音に悲鳴が聞こえてきた。、向こうも手投げ弾があり投げ返してきた。近くで、、バ~ンと手投げ弾が破裂して、、私は右腕に強い痛みを感じた、、よく見ると敵の手投げ弾の破片が刺さって血がだらだらと流れていた。






第九師団司令部、近くの救護所


”尚美”

第九師団の毎日の夜間による土嚢作業で敵からの砲撃や機関銃での攻撃で負傷者が次々運ばれてくる。最近は鉄条網ちかくまで土嚢が出来上がり、手投げ爆弾での応酬が続いているようだ、その破片を足や腕にうけた負傷者がやってくる。


私は勝次や他の軍医と共にここの救護所に詰めていた。


今、私には二人の医学生が付いている他の軍医にもついているが、、私が指導しているこの二人は最悪だ、、なんせ40名の学生の39位と40位の成績だ、他の軍医にできの悪い学生をつけるわけにはいかず、勝次先生は37位と38位の学生の面倒を見てもらっている、こいつらはまだ常識がわかるから多少はましだけど、、


ここには軽症者が運ばれてくる場所だ、他にも軍医と学生がいたが重症者が大勢運ばれてきて応援に行っている。


本当に満州軍大山巌総司令官が率いる主力軍にこいつらを送らなくて大成功だと思ったわ、、


名前は山下庄吉と白井一郎、創立以来の馬鹿それも常識しらず最悪のコンビだそれが一人じゃなくて二人もくるとは、、そこから最悪よ、、


ふたりともでかい家に住む裕福な医者の家庭の子息よ、、この時代でも金があれば最高の教育を受けられどんな馬鹿な子供でもそれなりの教養と常識があるけどこの二人は外れだわ、、生まれてから「上げ膳、下げ膳」の生活、、身の回りはすべて女中さんの仕事、、年を取ってできた子どもなのか母親の愛情が度をこしているよ、、



徹底的に自分の事しか興味がないし、、頭の中はお花畑よ、、よ~くこの学校に入れたな~と思ったら、、コネと賄賂で裏口からの入学、(うん、未来でもよくあるよ)本人は特に軍医は考えてないそ~よ、、資格を取ったらさっさとやめて家業をつぐんだって、


つらい事や嫌な事は生まれてから今までしてきたことがない、、初めて親元を離れての、それも戦場での実習だよ、、


第三軍の乃木司令官が視察に来ると、、オジサン呼ばわり、、しまいには”あの人誰ですか?”、、と私に聞いてくるし”バカヤロ~、、てめ~の親の百倍えれ~人だよ、、”



歴史に名前が残る人物だよそれも軍司令官を知らないとはいかに自分の事以外は考えていない奴らよ。まず、新聞を読まないしきっとここがどこかもわかってね~かも、、誰と戦っているか、一度聞いてみようと思う、、、、おそらく

”外国人!”って二人そろって答えるだろう、、、



こんな奴らを指導しているんだよ、この間なんか、私が治療をしていて「庄吉、、そこのモルヒネを注射器で吸って渡してちょうだい、、」と言って、、


私が兵士の傷口を洗浄して、渡された注射器で痛み止めをしようと針を天に向けて中の空気抜きでぴゅ~と液を出したら、、、ものすげ~アルコールの匂いがした。


私は振り返り、、「てめ~!、これ、、となりのアルコール消毒の瓶から吸い取っただろ~、、え~、患者酔わしてどうすんだよ、、バカヤロ~!、、」


それだけじゃないよ、、「おい、一郎、、私、いま手が離せないからさ、、そこの兵隊さんの腕に点滴お願いね~、」と言ってやっと処置を終わり振り返るとまだ一郎は兵隊さんの腕に点滴の針を何度も刺していたが、うまくいかず腕は血だらけ兵士は目をぎゅうとつぶり泣いていた。


「てめ~、、何してんだ~!、、兵隊さんの腕が血だらけじゃね~か~、、治さね~で、キズつけてどうすんだよ~、泣いているじゃね~かよ、、バカヤロ~!、、」




この二人はこのまま、ほって置くと、、敵よりも怖い、、、何しでかすか心配だよ、、



そう思っていたら、、担架兵が一人の士官を救護しながら連れてきた、、私はすぐにその士官を診察台に寝かせてもらい傷を見たら右足の太腿に手投げ弾による裂傷だった。


太い血管には影響がないようだが、、かなり傷がひどい、生理食塩水で消毒して傷口を縫わないといだめかな、、と、、思いその士官の顔をみた。


”ゲェ、、こいつ、、前の夢の中で、いつも私に悪態をついていた山下少尉、若い兵士を虐めてた奴じゃね~か、くそ~、こいつ砲弾の直撃でバラバラになったんじゃね~のかよ。まあ~、、だいぶやらかして歴史は変わったからな、しょうがね~か、、、”


その時、「すみませ~ん、、軍医さ~ん、少佐のキズを見て下さ~い、、」と副官に伴われ、右腕のキズを左の手で押さえながら第一連隊の加藤少佐がやってきた。



その顔を見た尚美、そのとたんハートがバキュ~ン!


“キャ~、どうしよう加藤少佐がきた~、、お化粧、してないよ、、やばいよ、やばいよ、、”と思いながら


「は~い♡♡、まあ、、大変、、少佐だいじょうぶですか~♡♡♡、、、こちらの椅子に座ってください♡♡♡、、」


と子猫が甘えるような声をだして、、そのまま可愛い子猫のふりをして、、少佐に近づく化け猫の尚美、、、、



右腕のキズを左の手で押さえながら加藤少佐は、、

「いえ、私は後でいいので、そちらの少尉を先に治療してやってください」

と言いながら、椅子に座り尚美の顔をみて、、びっくり、、


「えっ、、昨年、、防弾装備を持って来ていただいた、五条さんではないですか、、ここで何をなさっているんですか~」


「はい、、私は外科の医者ですので♡♡、今回特別に、軍医として♡♡、こちらに応援できたんです♡♡♡、」


「そうなんですか、立派ですね、、あっ、私はいいので早くそちらの処置をして下さい、」


”ま~、なんて部下思いなんだろ~”と思いながら、、私は馬鹿二人を連れて柱の陰に行くと小さい声で、、


「てめら~、いいか私は大事な、患者が来たから、あの少尉の治療はあんたら二人でやるんだよ、、、でかい血管はキズついていないから綺麗に傷口を洗って痛み止め打ってからアルコールでもう一回消毒して医療用のホチキスで傷を止めりゃいいんだよ、簡単だろ、、今まで何十回もやってきたじゃね~か、まかしたよ、、、」



馬鹿二人、、そろって

「OK~、、了解~、、」と二人は軽い返事を返して、、、山下少尉の治療に向かった。




私は、また可愛い子猫になり加藤少佐に治療の為です、と言って必要ないのに上半身、裸になってもらい、たくましいい胸を拝見させていただいて、、最高の眼福にあずかることができた。




   、、、、”あ~あ~幸せ~”、、、、








うしろからは山下少尉の”ぎゃ~”と拷問される兵士のような悲鳴がたびたび聞こえていたが無視をした。






つづく、、、、、




土曜日と日曜日の投稿は休ませていただきます。



また月曜日に投稿いたします。

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