表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/136

第63話 旅順攻略作戦会議


旅順要塞を攻略するための第三軍の布陣は簡略な説明だが、旅順港を正面にみたら右手側が西北方面となり、そこには203高地を後方に背負い大頂子山がロシア軍の前哨陣地となって守っていた。日本軍は第一師団(東京)が布陣、そして正面から左手側が東北方面そこには旅順要塞で一番標高がある「望台」が見えておりその右手側を二龍山堡塁と盤龍山堡塁が守っており、ここには第九師団(金沢)が布陣そして「望台」左手側は最強の防御施設である東鶏冠山北堡塁が守っていた。そこには第十一師団(四国)が布陣して攻撃の日をまっていた。(ちなみに第七師団(北海道)はまだ内地にいた。)




1904年8月18日(第一次総攻撃の前日)


柳樹房りゅうじゅぼうにある第三軍司令部


各師団からは作戦を指揮する少佐以上の士官が集まり、でかいテーブルを囲むように着席して作戦会議を始まるのを待っていた。海軍からは連合艦隊の東郷司令官からの指示で岩村団次郎中佐と伊集院俊大尉が陸海軍の連絡、交渉を担当する為に第3軍に赴いていた。 


伊地知参謀長は上座近くで喘息もおさまり両手を胸の前で組んで椅子に体を預け目をつむり物思いにふけてるようだった。


各師団の士官は”こいつがまた無理難題を言わなければいいけどな~”と祈るようにしていた。


そこに乃木司令官が参謀副長大庭、 情報参謀山岡、作戦参謀白井を伴い隣の部屋からやってきた。、、参加者の全員が立ち上がり一礼をした。乃木司令官が礼を返して全員が着席し乃木司令官を注目した。


ここで乃木司令官が「これより、旅順要塞攻略の為の作戦会議を始める、、各師団では先月、内地の陸軍参謀本部、および、、満州軍児玉総参謀長による作戦指示等についてなにか意見のあるものはないか、、」


参加者はここでいつもろくでもない事を言う伊地知参謀長がおとなしくしているのに驚いていたが、、それぞれが敵陣の状況を視察してロシア軍が強固なべトンによる堡塁と何重にも囲った鉄条網にマキシム機関銃が装備された砲座それを双眼鏡で見たときは”これはどれだけの死人がでるんだ!”と思った。それほど恐ろしい敵陣だった。


参謀本部の中央情報部から聞いていた”日清戦争の時の旧式野塁に多少の散兵壕を増築せるのみ、永久築城なし”なんて嘘っぱちだ~と誰か言ってくれないかな~とそれぞれの顔をみていた。”早く言ってくれなないと、伊地知参謀長がひとりで決めちゃうよ、、、、”と思っていたところ一人の士官が手を上げた。



それは第九師団所属の連隊長加藤少佐だった。


「敵の要塞への正面攻撃は無謀ではありませんでしょうか。」


「鉄条網を敷いた防御線を3重に渡って施設した近代要塞で、機関銃、大砲、地雷をもって厳重に防禦されておりとても私の第一連隊でここを突破することはできません。」


「兵の消耗を避けるには二龍山正面攻撃を陽動作戦としてどこか弱点となる場所に全軍をあげて一点突破を意見具申します。そしてその弱点となるのはここ203高地」


テーブルの上には陸軍参謀本部が作成した旅順港いったいの作戦地図があがっていた。


そこを第一連隊長の加藤少佐が指をさした。


他の参加者はよく言ってくれたと思っていたが、、ここでいつもなら伊地知参謀長が「バカモ~ン、我々は名誉ある日本帝国陸軍がそんな弱腰でどうするだ!、大和魂と根性があればどのような困難も突破できる。そのような気持ちでいるとはどういうことだ~」くらいの事を言うかと思いみんな伊地知参謀長に顔を向けた。


彼は両手を胸の前で組んで椅子に体を預け目をつむり考えごとをしているようだった。


なにも言わない伊地知参謀長を見た各師団の責任者は発言するなら、今だ~、と次々と自分達の管轄するロシア軍の陣地が聞いているのと違います~部下を無駄死にさせたくありませ~ん作戦変更をお願いしま~す、、と嘆願が始まった。



またそれを聞いていた海軍からきていた岩村団次郎中佐は「そんな~、、いまさら、、作戦変更は困ります、、旅順艦隊を陸軍さんが早急に叩いてくれないとバルチック艦隊を迎え撃つ準備ができません、、なんとかこの計画の通り8月末までにこの要塞を攻略してください、お願いします。、、」

と嘆願してきたのである、、


乃木司令官

「みんなの気持ちはわかった。この参謀本部からの作戦指示書については変更とする、、すべてがでたらめだ!、、新しい作戦内容について作戦参謀白井君から説明する。」



そう言うと参謀副長大庭と 情報参謀山岡の顔を見て着席した。



作戦参謀の白井中佐が説明しようと立ち上がると、、、参謀副長大庭と 情報参謀山岡はテーブルの上の参謀本部が作った作戦地図をどかし新しい作戦地図を置いてまた参加者には要塞についての詳しい資料が配られた。


作戦参謀の白井中佐が説明をはじめた、


「ロシアの旅順要塞については参謀本部がいっている”日清戦争の時の旧式野塁に多少の散兵壕を増築せるのみ、永久築城なし”とは大きく変わっておりこの計画書は全くのでたらめです。


それで大連にいるロシア兵捕虜を尋問しまして旅順要塞の全貌がわかりましたこの地図に書かれているのが敵の塹壕や鉄条網を敷いた3重の防御線の配置場所それに主防御線はコンクリートで周囲を固めた、半永久堡塁8個を中心に堡塁9個、永久砲台6個、角面堡4個とそれを繋ぐ塹壕がおおよその位置で書かれております。


まずは、各師団の責任者はご確認ください、、それと敵の総兵力は約6万人、わが方が5万人、士官学校で教える戦術教本では攻める側は守り側の三倍の兵力が必要つまり攻撃三倍の法則と教わりますが全く参謀本部の中央情報部は仕事をしておりません、すでに参謀本部にはこの情報を伝えて中央情報部の担当者には責任を取るよう依頼してあります。


この事実により参謀本部の作戦変更の了解と兵力の増強として、第七師団(北海道)がこちらに送られることになりました。


ロシア軍正面防御堡塁の東鶏冠山北堡塁とうけいかんざんきたほるい周囲は約500m天然の岩にベトンと石による強固の作りで現在ある重砲と野砲では落とせません。


二十八糎榴弾砲が有効であると検討して参謀本部に依頼しておりこちらには9月の初めに届きますそれを設置ができましたら、、あらためて標高が一番高い「望台」の占拠をめざします。



また海軍さんからの依頼である旅順艦隊の壊滅については加藤少佐の言う203高地を攻略してそこに観測所を設けて、二十八糎榴弾砲による砲撃で壊滅したいと思います。以上が概略となります。」



参謀副長大庭二郎中佐

「それでは、、明日からの各師団についての作戦内容について説明します」


「第一師団は大頂子山のロシア軍前哨陣地の占拠、、そこを拠点に203高地の攻略の為に中腹まで交通壕を構築そのあと鉄条網まで土嚢による遮蔽物を設置して防弾盾を使い工兵による鉄条網の切断をしたならば重砲と野砲による攻撃をしたのち銃剣突撃によって203高地の攻略をする事」


「203高地占領後は敵からの奪回を防ぐため加藤少佐の連隊1500名がすぐに支援で頂上の旅順港観測の為の陣地防衛に参加してください」


「第九師団は盤龍山北堡塁だけの攻略にむけて鉄条網までは先ほど同じく遮蔽物を設置して二十八糎榴弾砲による砲撃までそこを守ってください。」


「第十一師団は東鶏冠山北堡塁が非常に強固な堡塁のため二十八糎榴弾砲による砲撃と坑道を胸壁まで掘り進めて爆薬での破壊を試みることにします、それまではやはり鉄条網までの土嚢による遮蔽物の設置をお願いします。」


「次に各師団においては野戦携帯口糧の空のブリキ缶を集めて火薬と釘や散弾などを入れ導火線をつけて簡易手投げ弾の作成をお願いします。塹壕戦において敵の機関銃砲座や鉄条網越しでの敵塹壕に放り投げて殲滅をしてください、、」



「以上の段取りで旅順要塞攻略、目標時期は8月末から変更して10月末といたします。」



「海軍さんはこれでよろしいでしょうか?」




岩村団次郎中佐

「これほど強力な要塞とは、、確かにむやみに突撃してもしょうがないですね  この二十八糎榴弾砲がくれば山越に旅順艦隊を攻撃できますから203高地は絶対に落としてください、、お願いします。、、あとはこちらで海軍軍令部に事情を話しておきます。」


こうして歴史は変わりロシア軍の強固な要塞に対して第三軍はなんの考えもないような無策な肉弾突撃を回避して、まともな攻城作戦へと舵を切り直したのである。



会議が終わって、各師団の責任者たちは普段きらっている伊地知参謀長が余計な事を言わないうちにと思いすばやく陣地に戻った。乃木司令官や各参謀も伊地知参謀長を嫌っているので無視をして自分達のテントにもどっていった。



作戦会議室には誰からも声を掛けられず、一人だけ椅子に体を預け目をつむり考えごとしている伊地知参謀長



そこへ彼の侍従兵がやってきて


「あの、、閣下、、、だいじょうぶですか?、、、」



「んっ、あ~、、あっすまん、大丈夫だ、、まだ各師団の責任者はこないのかこれじゃ、いつまでも作戦会議がはじめられないじゃないか~いったい何をしているだ!」と怒る伊地知参謀長


ちょっとびびっている彼の侍従兵


「あの~、もう、終わりましたけど、、、」



「えっ、、なぬ、終わった、そんな事はないだろう、儂はなにもしゃべっておらんぞ、、儂の肉弾攻撃についての意見も聞かず終わるわけはないだろ!、」



かなりびびっている彼の侍従兵

「あの、、時計をごらんください、、」



ポケットの懐中時計をみる伊地知参謀長



「あれ、、3時間たっている、、ねえいつ終わったの、、ほんとに終わちゃたの、、ど~うしよう~」と、、会議中にすっかり寝ていた伊地知参謀長、肉弾突撃を考えていたが、すでに決まった戦術方針には口出しができなくなったのである。









つづく、、、、、



尚美が酒で酔っ払いべらべらとよけいなお喋りのおかげと睡眠導入剤が歴史を変えちゃたのである、、、、


「えへ!」と舌を出しとぼける尚美だった、、



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ