第32話 尚美VS刺客
いつも読んでいただいてありがとうございます。
それでは、、はじまり、、、はじまり、、、、
神楽坂にある小料理屋そこに龍三親分の愛人、千代がその店をやっていた。そこの一人娘春子12歳、つまり龍三親分の娘だ。龍三親分と知り合いになってからある日、、第二外科の医局にこの春ちゃんが2段のお重に入ったお弁当を届けにきた。私はさっちゃんが作ってくれたお弁当があるからいいのに、と断ったが龍三親分が大事な子分の命を助けてくれた。恩人だから必ず毎日届けてやってくれと頼まれたらしい、、私は春ちゃんを手術室の休憩室に連れていき皆に紹介をして、、それじゃさっちゃんのお弁当と千代さんが作ってくれたお弁当をいっしょに食べましょ、、と言ってここに毎日お昼になると春ちゃんはみんなといっしょにお弁当をたべてお茶を飲みながら女子トークをして帰って行った。兄弟のいない春ちゃんはたくさんのお姉さまができたとそれは喜んでいた。手術場のみんなも血生ぐさい職場で可憐な春ちゃんを可愛がっていた。そんな毎日だった。
1901年3月のある日
私は手術が長引き帰りが遅くなった。暗い大学の構内を原動付自転車が置いてある場所に向かう途中、いきなり3人の着流しの男達に囲まれたひとりは羽織を着て帯に刀を差し込んでいた。二人はドスを懐からだして右手でその凶器の刃をぎらりときらめつかせていた。私はすぐにわかった龍三親分たちと同じ臭いを感じ取った、そしてとんでもない殺意も感じていた。背中のリュックを地面に置き刀袋を取ると中の刀を取り出した。そしてデニムのベルトに落ちないよう刀を押し込み鞘を左手でにぎり、くれないの柄を右手で握った。鞘の中で刀身がバイブレーションしていた。”安じ~”が目覚めたのである、、くれないの柄を握ると不思議と”安じ~”を感じていたそれとちっとも怖くないのだ~”安じ~”の精神がきっと入り込んできているんだろう、、そうだあの田原坂で強者の薩摩兵を13人切りをするくらいだ、、こんなサンピンやくざなんか相手にもならないだろう、、私は目をつむり”安じ~”に全て任せた。
居合の達人片山一斉が金五郎の子分二人に言った「こんなおなご一人俺の最強の居合で切る相手ではなかろう、、お前たちで殺っちまいな、」懐からドスをだして刃をきらめきさせながら,にやけたサンピンやくざ近づいてきた。
「わるいな~ねえちゃん、、ここで死んでくれや」とドスを腰元に押さえながら突っ込んできた。
体が勝手に動いた柄を握っていた右手がスパッと、刀身を抜くと相手の右手首の骨をボキと折るといつの間にかカチャと音立てて鞘に刀身は戻ってきた。
そしてもう一人の男がドスをもった右手を上から振り切ってきた瞬間また私の右手がスパッと刀身を抜くと、こんどは相手の右手前腕をボキと折るといつの間にかカチャと音立てて鞘に刀身は戻ってきた。
ここで”安じ~”の実力を知ると調子にのるのが尚美である。
「おんどりやぁ~そんなに死にてぃのかよ~え~どうなんだ! ボケ!へんじしろ~」と吠えまくる。
前腕と手首を折られたヤクザは「いて~いてよ~」と反対の手で押さえながら戦意損失、、、居合の達人片山一斉の背中に隠れてしまった。
”一斉”
「なんだ、、なんだ、、そりゃ~まるで、、まるでおなじだ~俺と同じ居合じゃねえか!」
「なんでおなごの、お前が、、お前がこんな事ができるんんだ~」
”尚美”
「ごちゃごちゃと何言ってんだ~このボケが~てめ~と違うんだよ、天才、、天才はなんだってできんだよ~かかってこいや~」
本気になった片山一斉、、履いてた雪駄を片足ずつ履き捨てはだしになり腰を少しおとし左手で鞘を握り右手で柄を握りじりじりと近づいた。
”なんだこのおなご、、強いとんでもなく強い、おなごと思っていたら負ける、ぜったいに負ける、よ~し奥義「磯之波」でいっきに、、”
強敵と対峙した尚美、、突然そうだ突然意識がぶっとんだ、、、、、そこには尚美の体を借りた片山久安が立っていたのである。
そして、、静かに言い出したのだ。「儂の名は片山 久安だ。お主その構えは儂があみだした伝説の剣技「磯之波」ではないか、お主名前は何という、、」
”片山一斉”
”ドッヒャ~なんだって~なんなんだよ~いきなりへんな声で、俺の御先祖、、それもこの「磯之波」をあみだした祖ではないかい~なにか得体のしれないものがこの女に突然取り付いた事は分かった。そして俺の御先祖、、それもこの「磯之波」をあみだした片山久安と言っている。この女がそんな昔の事など絶対に知る事はない、、、まさか、、ひょっとして、、と思い俺は名のった。
「俺の名前は、片山 一斉だ~なにをほざいていやがる、、お前が、、お前が久安のわけね~だろ俺の御先祖だ~300年前にとっくに死んでいら~」
”片山 久安”
「フフ、フフフ~それはそうだ、、儂は300年前に死んじまった。、、だが魂が、、俺が打ったこの刀に取りついてしまったのさ、、」
「ところでお前、、いったい何をやっているのだ、、ひょっとして、何の関りもない者をこうやって殺しておるのか!、、、うっ、、なんだなんだ、、相当殺しているようだな、、よ~く見たらお前の周りには、、恨みや無念な気持ちで死んでいった者がたくさん取りついておるわ、、、、」
「情けないの、、最強の武士を目指して生み出した剣技、、強い相手に使うならまだしも、、ただの人殺しになり下がってしまったのか、、」
”片山一斉”
「うるせ!、、うるせんだよ!、、俺だって、、俺だって好きでやってんじゃねぇ~生きて行く為さ、、もう刀の時代は終わっちまったのさ、、いくら居合ができる、最強の剣技だ~なに言っていやがる、、そんなもんはとっくに終っちまったんだよ~,そんなもんで飯は食っていけね~んだよ!、、」
「御託はもう聞きたくね~いいかげんにしろ~!!、、勝負だ、、、、」
そして俺は構えた、、女も構えた、、同じ型、気合を込めて発した「奥義、、磯之波、、」女も発した「奥義、、磯之波、、」二人の声は同時に発したのだ、、親子のように、、、、
基本の型は相手の攻撃をかわしつつ一撃をくらわせ、更に二の太刀でとどめを刺すという奥義「磯之波」、、、
ひと振りめはカキ~ンと火花を散らした、、第二の太刀、、”安じ~”の太刀筋は雷光のごとく圧倒的速さだった、一斉が袈裟切りでくるところを”安じ~”は得意の逆袈裟切りで一斉を仕留めたのだ、、、肋骨がバキと言って2~3本折れたようだ、、、片山一斉は刀を地面に落し片膝と片手を地面につけ残りの手で胸を押さえて苦悶の表情をしていた。
”安じ~”
「黒幕は誰か知らんが、儂はこのおなご、尚美との約束で峰打ちしかできぬ、儂の身つまりこの刀がどうかなった時は、どうかこの尚美を助けてやってくれ、、頼んだぞ一斉、、、」
それから尚美を襲った3人は一斉に肩を貸しながら、、トボトボと暗い夕闇に消えていった。、、、、、、、
「こんにゃろ~かかってこいや~」突然目覚めた尚美、、決めセリフを言ったが周りにはだ~れもいない、いや猫が一匹”ニヤ~~ン”とないて聞いていた。
あれ~、、、みんなどこいったのよ~と”安じ~”に聞いてもどんかん尚美には全く返事は聞こえなかったのである、、、、、
”森林太郎”
私はいま陸軍軍医学校の校長として勤務していた。 日帝大医学部を首席卒業してからドイツに留学し、最先端の医学を学んだそして陸軍の軍医として着実に出世して軍医総監としていまこの軍医学校の指導をしている。いま私がここで研究しているのは脚気だ、日本では国民病といわれるほど流行した歴史がある。脚気にかかると、神経の障害によって手足が麻痺し、しびれなどを引き起こす重度になると、心臓に障害を起こして死亡する。日清戦争では陸軍の脚気患者数は41,000人以上、脚気死者数は4,000人を超えた米食が脚気の原因であると主張するものがいたがそんなバカなことをいう輩は相手にしない。私は、脚気は「脚気菌」による細菌感染症であると思っている。ドイツで細菌学が隆盛し世界をリードしていた、私はそこで最新の医学を学んできたんだぞ、これは間違いなく細菌による感染症だ!経験則に基づく治療は非科学的であいてにならない、これからも米食はかえる気はない!、必ず脚気菌による細菌感染症である事を証明してやる。と思っていたが成果はまっくでないこの研究にも飽きて来た頃である、そいえば母方のおじが11月の日帝大医学部の第二外科の教授選で私の事を推薦すると言っていたな軍医総監のほうが軍服をきられて恰好がいいが、教授のほうが暇もできて執筆活動もできるか、独逸留学で遊んだ女の事をかいた”舞姫”は大ヒットしたからな~しかしあの独逸女のエリスが日本まで追いかけてきやがった。遊びで相手にしてやったのにまさか日本までくるか~弟たちからエリスに手切れ金を渡して独逸へ返したがこんな事が上にばれてみろ~医学の勉強で独逸に言ったのに女の尻でも追いかけていたのか~なんて言われてしまったら私は軍にいられなくなっちまうまあこの事は一生の秘密だ、、、教授か、、楽しみだ。
関西淀川会の代官山お屋敷
”若頭高倉安吾”
「なんだって~居合の先生がやられてしまった。それと二人の子分も手の骨を折られた~何言ってんだ~おなご一人に3人の野郎どもが負けたというのか藤堂組の手練れがいたんじゃないのか、、なに~おなご一人だと、、3人はどうしている、、え~、奥の間で医者に診てもらっているのか」やはり、、あの女、、サリバン尚美、俺の感はビリビリと危険を知らせていた。そこへ一人の子分がとんでもねぇ話しをしてくれた。
「あにき、、あの龍三に愛人がいました。たしか千代と言う女が神楽坂で小料理屋をやっております。そして、その娘、、龍三の娘ですぜ、、春子とか言ってましたが毎日昼に、そのおなごに弁当を届けておりやす。」
”若頭高倉安吾”
「そうか、、、フフフフ~、、尚美と龍三を繋ぐこの娘、、春子か~、、使えるぜ、これは使える、、フフフフ、、いい手を思いついたぜ、、フフフ」
つづく、、、、、
「ちょっと、、結城、、”安じ~”に聞いてよ~帰りに襲ったやつら~どうなったか、聞いてちょうだいよ~」結城にせまる姉、疲れて寝てしまった”安じ~”はその日は一言も語る事はなかった。




