第30話 尚美、任侠組織藤堂組で手術をする
いつも読んでいただいてありがとうございます。
それでは、、はじまり、、はじまり、、、
1901年 1月のある日
昨年の3月にこの時代に来てから初めての年を越したさっちゃんには年末年始で10日間の休みを上げたよそれに(10万円)のボーナスをあげたらとても喜んでいた、お土産もいっぱい持たせたさ、
年が明け三が日何もすることがなかったので姉さんと初詣にいった、屋台や出店がいっぱいでてお祭りのようだった、芝居小屋がやっていたので姉さんとこの時代の娯楽を楽しもうと思いはいってみた、、、はじまった、、田原坂の激闘、、政府軍警察隊、元会津藩士田村四郎三等警部補伝説の一騎打ち、、、、あれ、、どこかで、、聞いたような、と思った、、、、、、、、
まず最初の見せ場である、、薩摩軍からの丘の上にある堡塁から壮絶な攻撃で味方が動きがとれなくなり、一人二人と倒されていくなか戊辰戦争で賊軍の汚名を着せられた雪辱を果たすべく主人公が「戊辰の仇、戊辰の仇」と叫びながら斬り込んでいった、そしてそこにいた、十三名の薩摩兵を居合でもって斬り大声で叫ぶのだ、”戊辰の復讐~、戊辰の復讐だ~”途中は小競り合いの戦いをはさみそして最後の見せ場、薩摩兵の強敵との一騎打ち両軍がどうか~勝ってくれ勝ってくれと強く念じているなか、薩摩兵は”チェストー”と最強の一撃を叩きこもうとした時、元会津藩は逆袈裟切りで一刀のもと切り捨てる、、ここで客たちの拍手喝采、、、、そして薩摩軍の隠れていた狙撃兵10名が一斉射撃、、、元会津藩士田村四郎殉職、、、それに憤慨した政府軍は、ひきょうもの!~ひきょうもの~!やっけろ!と気合十分そして田原坂を突破して終わり、、、、、パチパチパチパチ~と客の拍手喝采、、、そして、撃たれて折れた刀のたけみつがねえさんの所に偶然飛んできた、姉さんはすっかり芝居に夢中になり折れた、たけみつを持って大泣き、俺がこの時の折れた刀が”安じ~”だよと言ったら、、「え~こん時折れたの~」とたけみつを見てとっても驚いていた。それからこの元会津藩士田村四郎が前の持ち主だよと教えたら急に神妙な顔になった。
前に結城から刀の折れた由来を夕飯を食いながら聞いていたのにすっかり忘れていた尚美である。 日本人が一番好きな流れだ、客はこの不幸な過去をもつ田村警部補に心をもって行かれるんだろうな~、西南戦争て何十年前だよ、、この芝居も忠臣蔵と同じく全国で鉄板となっていたようだ。
その頃、”安じ~”は家で寝ていた、、、起きているのは手術室と尚美に危険が迫った時、、心強い用心棒だったのである。それから姉さんはどこで調べてたのか浅草のお寺で眠る元会津藩士田村四郎の墓参りに”安じ~”といってきたらしい、お墓は線香や花が絶える事がないほど多くのファンがお参りにきていると話してくれた。
1901年 1月のある日
神田にある神社では旧正月を祝う祭りが行われていた、その人込みの中で突然、殺気だった男達の怒号が響き渡った。
”淀川会さんぴんの辻本”
「われ~、何さらして~けつかんねん、ええ加減にさらさな、しばきあげんど!~」
露天商で水アメやの留吉さん
「おめ~が、勝手にぶつかってきてあめをひっくり返したんだんろ!」
「こんなとこ店だしてんじゃねや~いてまうどぉ!ぼぉけぇ!」
と言って落ちたあめを汚い雪駄でグリグリとする、”辻本”
「こんなチンケな露店いてもーたれ~、いてもーたれ~」
淀川会さんしたの中山、平尾が店をこれでもか~と足蹴りで壊しはじめアメはぐちゃぐちゃ、、、、
それを近くでにやにやしながら見ている、着流しに羽織をきた淀川会、若頭高倉安吾、それと若頭補佐権田寅吉と猪熊権蔵そうだ関西裏組織の親分河田金五郎は配下の四天王のうち3名を関東に送り込んだのである、、、
近くにある神田神保町に本邸を構える藤堂龍三を親分とした関東最大の任侠組織藤堂組ではその大きな玄関のガラス戸を、ガラガラ~と思いっきり引き戸をあけ、露天商の留吉が息を切らしながら走ってきて大声で叫んだ、
「て~へんだ~、、て~へんだ~若頭が、、、若頭が関西の奴らに刺されました!!~」
(そうだ止めに入った藤堂組、若頭大庭 丈一郎を狙ってのいちゃもんだった刺した連中は目的を達すると一目散に逃げた。)
なんだって~と奥から何事かと、、今日の当番をしていた谷口と清水がでてきた、、そこへ他の露店の若い衆数人が大八車にのせられ腹から血をだした龍三の右腕、若頭 大庭 丈一郎を連れてやってきた。丈一郎は傷口を左手で押さえ苦悶の表情をしていた。
慌てて奥の間にいる親分藤堂龍三を呼びにいった、奥からバタバタバタと一大事を知った龍三がやってきてその様子をみて、「すぐに中に入れるんだ、刺されたところさらしできつく巻くんだ!、、医者の長谷川をすぐ呼べ、、、え、、なんだって仙台の実家に帰っている くそ~こんな時に、、、それじゃ、、あいつ、あいつだ、、横浜の”ベルナルド・アンドレ”に電話して奴のところに来て面倒みている女の医者をこっちに寄越してもらえるよう頼みな、大至急だ!、いいか大至急だと言え!!、、」
”結城と尚美の自宅”
”尚美”
昨日、独逸商人のヘルマン卿からソーセージがいっぱい送られてきた。船便が到着して大量のソーセージが補充されたそうだ、おすそわけといったところだろう、、3人で昼に食おうと思ったらまた正岡と渋沢が遊びきた、、最近はよびすてよ~、、いつもいいところにやつらはやってくる、、そして遠慮なんかしない腹がいっぱいになるほど食って帰っていきやがる!、、そんな時にさっちゃんから外人から電話と言われて代わったらアンドレからだった、ぐわいが悪い店の子でもいるのかと思ったが違った、、つきあいがあるやくざが腹を刺された子分がいるのですぐ治療してほしいと言われた。私は場所を聞いた病院の近くなのでおおよその検討はついた、すぐに行くからと言って電話を切った、、さっちゃんに私のソーセージは残しておいてね~とお願いして結城といっしょに腹部の手術に必要なものを医院に取りにいった。でかいリュックにポケット型のLEDライトほかに点滴や薬、医療材料、手術器具、バッテリー式ポータブルの吸引器もリュックの底に押し込んだ。
俺も行こうかと結城が言ってくれた、花柄の刀袋にはいった”安じ~”をリュックのサイドにぶちこみ「こいつがいるから、大丈夫といって」原動機付き自転車にのって神田へとむかった、、、
わたしは今神田神保町の藤堂龍三親分のでかい家にきている。目の前には若頭の 大庭 丈一郎ふんどし一枚で腹にさらしが巻かれていた、刺されたところが血で赤くなっていた。周りには子分達が心配して駆けつけていた。私は持ってきたリュックをおろし準備を始めた。「こんな大勢で見ていては、はずかしくてしょうがないよ、助手の人を2人ばかり貸していただければ助かります。」そう言うと龍三親分が「谷口と清水手伝ってやれ~他はとなりの部屋にでもいってろ~」と言うと自分は腰をおろしあぐらをかいてタバコを吸い始めた。
私はでかいディスポの覆布を出して患者の下にしいてと言って谷口と呼ばれた若い子分に渡した、、そして清水にはこれで傷口を照らしてほしいと言ってLEDライトを渡した。吸引器や手術道具が入った滅菌バックをバリとやぶってそのセットを自分の周りに薬といっしょに並べた。そして谷口に言って丈一郎を少し起こし腹に巻いたさらしを解いていった、彼は相当痛いだろうが口には一言もださず黙って私を見ていた。左の下腹部に4~5㎝の刺し傷があったでかい血管を傷つけてないようだ、少し血がタラ~と垂れている。
「これから腰椎麻酔をします、背骨の腰辺りに麻酔の注射をするのでこちらに背をむけて横になってください、」そう言うと彼は大人しく横になってわたしに背を向けた。立派な桜の入れ墨が目の前にきた。「それでは両膝をお腹に抱えるよう、頭はおへそを覗き込み、胎児のように丸まってもらうことはできますか~」と言ったら、少し間があったがおとなしく丸まってくれた、、私は第三第四腰椎間辺りを両指で触診して口にくわえたサインペンで穿刺する場所に印をつけた。処置用手袋をすると「ちょっとチクリとしますが動かないでくださいね~」といって腰椎の脊髄くも膜下腔にむけて慎重に針を進めた、針をすすめる抵抗がちょっと抜ける感じがしたところで止めた。針の尻から透明な液体がポタ、ポタと落ちてきたのを確認したら麻酔薬が入ったシリンジをそこに繋いだ、ゆ~くり慎重に麻酔薬を流し込んだ、、、、
適量をいれたら丈一郎に仰向けにさせた、、しばらくしたら私は彼の左のふとももを強くひねったりしながら「触っているのわかりますか~」と聞くと、初めて彼はしゃべった。「わからね~よ、それに腹も痛くね~なにしたんだ~」と言ってきたので 「痛みを感じないように麻酔を下半身にかけたの、、頭はしかっりしているでしょ、、あとは任せてちょうだい、」そういうと彼は神妙になり「先生よろしくお願いします。」と言ってきた。
私はマスクを配って谷口と清水につけさせた。そして持参したアルコールで手指を消毒し谷口にもさせた。そして手術用手袋をつけたもちろん谷口にもさせた今日の私の第一助手だから、清水を患者を挟んで私の正面にきてもらいLEDライトで手元を照らすように言いつけた、攝子で消毒液がついた綿球をつかみ傷口周辺をグリグリこすりつけながら消毒をするとそのままペッと脇に投げた、メスを使って刺し傷に沿って傷口を少し伸ばした。切り口から少し出血したがガーゼで押さえて止めた。そして小さな開口器でそこを広げた。血だまりでぐしょぐしょでよく見えなかった。腸に少し切り傷が見えて中身の消化液がでているようだった。一緒に覗き込んだ二人の子分は吐きそうなった気が付いた私が殺気をこめて睨むとすぐ収まった。こんなところで吐かれてみろ小指1本じゃたりねぞ~と思い睨んだのだ。
それじゃ腹腔内の洗浄をしようかなと思い清水にそこのバイエル瓶の中身をそこの注射器で適量吸ってちょうだいと言った、、、、、、、、まったくあんぽんたんで使えなかった。龍三親分が立ち上がりバイエル瓶からシリンジに適量すうとこれをどうするんだと聞いてきた。私は「それはお腹の中のバイキンを殺す薬品です、そこの生理食塩水と書かれた。バックのゴム栓に針を刺して全部いれてください、」親分はわかったと言うとバックに注入したら言わなくてもそれを上下に思いっきり振って攪拌した。私はあんぽんたんの清水に吸引器のスイッチを入れてもらい私が渡したホースをつないだ。親分にマスクをしてもらいバックのゴム栓を外した生理食塩水をボトボトと1/4ほど入れたら止めて腹腔内に指を入れて中の血だまりを洗うようにきれいにした。そして吸引の細い金属の管を入れてズズー~ズズー~と吸い取ったそれを4回した。中はすっかりきれいになった。
そして腸の少し切れ目が入ったところを攝子でつかむと谷口に渡してつまんでいるように頼んだそこを持針器で縫合糸が付いた針を掴むと丁寧に縫った。その処置が終わると他の臓器に異常がないか確認すると滅菌済みのペンローズドレーンを適当な長さに切って片方を攝子で掴むと臓器の下の方に押し込んだ
そして傷口から5~6cmくらいだすと抜けないように皮膚とドレーンを一針縫って止めた残りの傷口は医療用ホチキスできれいに止めた。そこをもう一度消毒した。飛び出しているドレーン先端にはガーゼでくるむ様に傷全体も覆いばんそうこで止めて処置をすべて終了した。
”龍三親分”
儂はぶったまげてしまった。あんなに腹を裂いて血だるまになった臓器を平気で指を入れて触ったりする。このおなご、、なにものだ~手際もいい始めて30分も経っていない。、それに、、それになんで痛くもないんだ、、 丈一郎のやつ、このおなごが来るまでは泣きごとは言わなかったが物凄い顔をして痛みをがまんしていやがった。それがいまじゃ眠そうな顔していやがる。どうなっているんだ。、、口にはださないがみんなもう助からないと思っていた。儂もだ腹を刺されて助かる奴なんかいるもんかみんな臓器をやられて苦しんで死んで行く、だから儂は楽に死なせようと思い医者を呼んだんじゃ、、それをたった30分で治しやがった、、儂の大事な大事な丈一郎を,、この御礼は,御礼は、、
”尚美”
「無事終わりましたよ、腸に切り傷があり縫合しました。悪いけど2日はなにも食べないでください、、水はいいですがすこしずつ時間をかけて飲んでくださいね、」
「3日目からは重湯を食べてもいいですが、、それもすこしずつ時間をかけてください10日ぐらい経ったら軽い食事から初めて下さい。」
「化膿止めと痛みめを渡すので朝、昼、晩に各1錠飲んで下さい」
「それと1日3回は傷口をこれで消毒してください、」
そう言って用意した抗生物質と痛み止めを1週間分と消毒剤を渡した。、「ガーゼはペンローズが毛細血管現象を利用して腹腔内の滲出液の排出するので汚れたらすぐ交換してください」といって滅菌パックに入ったガーゼを10パックほど子分さんに渡した3日後ドレーンの抜き取りにまた来ます。というと若頭大庭 丈一郎は充血した目で「ありがとうございます、ありがとございます、ありがと、、」と何度も両手を合わせお礼を言ってくれた。
他の若い衆も部屋にやってきて涙をうかべばがら「アネさんありがとうございます、、ありがとうございます、、アネさん、アネさん、、、ありがとうございます、アネさん、」と十数人の子分がよってきて頭をさげていた。この若頭はよっぽど子分に慕われているんだな~と思った、確かにこの傷なら腹の中が化膿して苦しんで1週間ぐらいで死んでしまうだろう、、きっと本人も子分も諦めたに違いない、子分たちが後かたずけをしてくれてさて帰ろうかな思ったら龍三親分が酒と盃を持って来てここに座ってくれと言い出した、はて?、、と思い私は親分の前に座ったら親分は盃に酒を入れると「儂と兄弟分になってくれ」と言ってきた「おめ~さんが儂のネエさんだ、俺は弟分だどうか~頼むから盃を受けてくれ」と言われて、、、全く任侠のしきたりを知らない尚美は首を傾げながら、、はて?はて?と思いながら喉がかわいていたので「アリガトウゴザイマス」とのうてんきな事を言ってグビ~飲んじゃった。親分はその盃に自分で酒を入れてグビと飲みほすとその盃を大事そうにハンカチにくるみ懐に入れた。そして立ち上がると「こちらがこれから関東藤堂組の龍三のネエさんになる人だわかったか!てめら~~」「へい!!」と一斉に答える子分達、まだことの重大差が分からず親分に、お代わりを言ってコップ酒にしてもらい駆けつけ3杯飲んだ。親分は喜々としてついでくれたその飲みっぷりにまた惚れこんだのだ。
”この瞬間から尚美は関東最大の任侠組織、祭りの露天商の集団や的屋集団、博徒や土建屋などの荒くれども達総数28団体総勢約12000名をまとめる親分のお姉さまになってしまったのである。それは関係団体へ重要回状として似顔絵と個人情報がこれでもか~と掲載されていて緊急伝達された。2日後には12000名の関係者が知ることになった。姉さんみたいなモデルみたいな体形とショートヘアーの女性など一人しかいないよ~どこで歩いてもすぐわかるさ、、、、”
そんな事とは知らずよっぱらって帰ってきた姉さんだった。
さっちゃんに「ソーセージはどうした~」と言ってガバガバ食っていたのである。
つづく、、、、
しばらくして王子で祭りがあった。さっちゃんと愛ちゃんと姉さんが3人で行くと露店の人や的屋の人達がみんな直立不動で一礼してきた、、はて?と首を傾げながら歩く姉さん、家に帰ってくると抱えきれないほどの菓子やアメ、お面など持っていてさっちゃんも同じ状態だった、、露店の人達はだれひとりお金を受け取ってくれずみんな喜んで商品をくれたそうだ、、今もはて?と言って首を傾げていた。、、、、