第3話 渋沢栄一との面会 その1
いつも読んでいただいてありがとうございます。
それでは、、はじまり、、、はじまり、、、
”そうよ、信じられないけど、私達はタイムスリップしたのよ”
姉は断言するように言い放った。
確かに俺たちに起きたあの天変地異やこの景色、状況を考えるとそれが一番納得できる。
「まじか、、そうしたらここはいつ、何年なんだ」
「そこらに歩いている人に聞いてみようか?」
夕方4時を過ぎるころである。街道には羽織,はかまにシルクハットのご老人や偉そうな人を乗せて走る人力車、着物姿のご婦人などが俺と姉さんを避けるように急ぎ走で不審者をみるような目で通り過ぎていく確かに姉さんはデニムパンツに上は黒いハイネックセーター、足元は素足にクロッ〇スのサンダル、俺は少し擦り切れているジーパンに上はパーカー足元はスニーカーという恰好である。
確かにこの恰好はここの人達には不審者にしかみえないだろ。そんな事でなかなか声をかけらずにいたら、向こうから着物にはかま革のショートブーツをはいてとてもハイカラな感じの14~15歳くらいの女学生がこちらに来るのが見えた。
俺の心のレーダーがこれだとロックインした。姉の袖を少しひっぱり彼女に近づいていくと長い髪をアップして後でリボンでまとめたとっても純朴そうな少女だった。
俺は必殺のほほ笑みビームをくりだし声をかけた。「突然にすみません。お嬢さん道に迷ってしまい少しお聞きしたい事があるんですがよろしいでしょか?」
少女は突然知らない人から声をかけられビックリしてあとづさりをしたがとなりに姉もいたので立ち止まってくれた。
「あの~どのような事でしょうか?」
「ここは王子でしょうか? あそこに見えるのは飛鳥山公園ですか?」
「はいそうです。あちら側が王子の町で向こうが堀之内村になります。」
「そうですか、それともうひとつお聞きしたいのですが、私たち兄弟ですが
しばらく日本を離れていたので年号がわからなくて、、 今年は何年でしょうか。」
「今年は明治33年で 今は3月ですよ。」彼女はそんなこともしらないのかといった顔をして答えてくれた。
「もしかしてお兄さん達は 渋沢様のご自宅にいかれるのでしょうか。」
なんでそんな事を聞いてくるのかと思ったが渋沢というキーワードを聞いた途端 隣にいた姉の気配が突然変わった、、、
姉がいきなりエサに食いつくように聞き返した。
「そ、そ、それは、ひょっとして渋沢栄一のことですか?」
あちゃ~俺は思い出した。姉は中学生の頃から続く立派な歴女だった。NH〇の大●ドラマをみては、戦国時代の武将に「萌え」最近は特に明治維新に活躍した人物に相当熱をあげていた。とくに大●ドラマ「晴〇を〇け」渋沢栄一を俳優の吉沢〇が演じていて 毎回姉は瞳をハートにして「萌え」ていたと親父がおもしろおかしく話してくれた。俺は腹が痛くなる程笑ってしまったことがある。
「姉さん 呼び捨てはひどい 渋沢先生とよびなさいよ」
姉の食いつきと俺の言い方がおもしろかったのか、少女は右手を口にあてて笑ってくれた。その時袖がめくれて前腕にころんで擦りむいたのか細かい傷がけっこうあり血がにじんでいた。
姉はすぐ彼女の右腕をとり、ポケットからハンカチをだして止血するように強くまいてしばってあげた。
「お家に帰ったら、すぐにきれいな水で傷を洗って消毒しないとだめよ、キズからばい菌が入ると大変なことになるからね。」
「ハンカチはいろいろ教えてくれたからプレゼント返さなくていいわよ。」
「あ、あ、ありがとうございます。」
そうだ最初にこの時代であった人だから記念に名前を聞いておこうと思い
「私の名前は五条 尚美こっちは弟の結城といいます差支えなければ あなたのお名前を教えてくれない。」
少女は顔を赤らめ姉の目をみながら少し考えてから答えた。
「私の名前は愛子 愛する子と書いて愛子です。」
名字は教えてくれなかったが、彼女ははずかしそうに答えてくれた。
そしておじぎをすると小走りで帰っていった。
「愛ちゃんかわいかったな~純情そうでひさしぶりにハートが燃えたよ」
そういったらいきなりバシーンと頭をはたかれた。
「問題そこじゃないでしょう今が明治33年 わかっての33年よいったこれからどうするのヨ~~」
俺たちは家にもどりこれからの事について考える事にした。
「姉さん明治33年て西暦何年だっけ」
「そんなのわかるわけないでしょ。」
俺はスマホを取り出しネットで検索しようとしたら
「あんた本当にばかね、ネットがつながるわけがないでしょよ、この時代にインターネットがあると思っての、院長室の辞典持ってきなさいよ。」
”完全に姉さんのパシリである”
院長室にいってあれこれ明治時代に関係がありそうな辞典や資料を探し、あと親父のコレクションしていた古銭のバインダーをもってもどると。
姉がコーヒーを入れてくれていた。
俺と姉はもってきた資料を広げながら、明治時代をいろいろ調べてみた。まず分かったことは明治33年は西暦1900年だった。俺たちは2025年の未来から1900年、125年前にきてしまったのである。それも家と医院の敷地ごとである。
二人でいろいろ調べていたら時間は夜8時をまわっていた。お腹がすいたのでカップラーメンを作って食べた。
「姉さん、俺たちがここで生きて行くうえでいくつか決めたい事があるんだけど」、俺はノートとペンを取りだした。
「まず、最初にどこまで歴史に介入するかだよ。このまま隠れるように他人と
関わらず静かにくらしていくか、」
「何言ってるのよ、そんな事ができると思う!」
「元の2025年が今私たちがいるこの時間軸の先にあると思っているの。」
「私たちがここに飛ばされた時点で時間軸は変わってしまったのよ!!」
姉はペンをとりノートに一本の横線をかいて 線の先に2025と書き途中に1900と書いてそこから下に線を引き上の線と並行にして横線を引いた
「結城よく見て私たちの知っているこの上の線の歴史は、私たちがいなくなった事でもう終わっているの、この続きはないのよ。そして私たちがやってきた
この1900年からまた新しい歴史が始まっていくのよ。」
「私は自分のできる範囲で、この時代の多くの人の命を助ける仕組みや薬を作ってみたいの。」
俺はぶったまげてしまって姉貴の顔を見入ってしまった。こんな簡単に今日起きた現実を受け止め、それを跳ね返すように自分のやりたい事をはっきりと言い切ったのである。確かにこの先の歴史は俺たちがいるだけで変わるなら、明るい未来の日本にしたいものだ。
「わかったよ、姉さん俺もなんかふっきれたよ。」
「俺はそうだな、今の日本は何の産業もなく列強国から蔑まれているみたいだしその状況をかえてみたいな。」
明治時代の日本は悲しいほど各国より遅れていた、農業中心だった為産業がなく海外に輸出する物といえば生糸か工芸品位しかない。俺は未来の知識とここにあるテクロジーで、日本が列強国を見返せる産業を立ち上げてみたいと考えていた。
「それじゃこれから、俺たちが生きて行くのにまずお金を稼ぐ方法を考えないと、戸籍もないし知っている人もいないし」
「あとこの親父のバインダーに入っている古銭も、調べたら使えるコインが結構あって、合計500円位あるかな 価値はこの時代の1円で2万円ぐらいだから、うちらの感覚だと全部で1千万円位はあるかな。」
「まあこれで仕事がなくても1年位は食っていけると思うけど」
「あと親父の腕時計のコレクションもあるから横浜なんかにいる金持ちの外人に売ったらぼったくれるかも。」
「そうね、お金の問題がしばらく大丈夫なら、やはり未来からきた私たちを信頼してくれて、この秘密も共有し、私たちを庇護してくれる実力者と知り合いになることね。」
その時姉の目が突然光った。
「いるじゃない!!すぐそばにいるじゃないのよ!!」
「誰がいるんだい?」
「”渋” ”沢” ”栄” ”一”」
「はいはいわかりました。渋沢栄一先生でしょ本人の前で呼び捨てしないで下さいネ」
俺は姉貴のひらめきに同意した。
「そうよ、そうよ渋沢栄一に相談しに行けばいいのよ、、でもいきなり出向いて会ってくれるかしら?」
「う~ん、そうだね。どこの馬の骨かわからない輩とは絶対合わないよネ」
俺はそういって少し考えてから
「そうだ!!大丈夫だよ、姉さんとってもいい策があるから俺にまかせてくれよ。」
それから、俺と姉はどのような話をして信頼してもらうか、またこれから俺たちがどんな事をしてこの日本を変えていこうか、子どものようにワクワクして遅くまで話し込んだ。
何しろ125年の間に発見、解明、蓄積した未来の知識とテクノロジー、それにこれから起きる世界の歴史、戦争、災害、事件が全てわかっているからだ、フフフフ、、
”俺と姉さんでこの明治の日本をかえてやるぜ!”
つづく、、、、、