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第25話 サリバン尚美 初めてのOPをするつづき



それでは、 はじまり、はじまり、、


”尚美”


麻酔が効いてから私は”かつじ”に生理食塩水による点滴について教えた。すでにうめちゃんがガートル台の点滴用の300ccガラス容器に生理食塩水をいれて、ゴム管途中につける真鍮でできたクレンメのローラー、ガラスのチャンバーにゴムホースがつながり静脈留置針へのドッキングをまっていた。


「”かつじ”しっかり覚えなさいよ、この点滴について秋の国内外科学会までに立派な論文を書けるようしかっり教えるから、そうねタイトルは”手術において点滴の有用性”とでも題して書きなさい。後あなたから第二外科の皆にも教えてやって病棟の下痢や嘔吐で脱水した患者にも有効だから必ず使うのよ、それも論文にしなさい。この点滴道具もあなたにあげるから自分で開発したことにしなさい。そうして第二外科の医局全員で日本中の医療現場にこれを広げてちょうだい。」



”勝次先生”

「御意!」と俺はつい返事をした。いままでサリバン先生がいない所で医局員と、男女!、ブスのくせに生意気な奴!、洗濯板の胸が気持ち悪い!、、と笑いながら陰口を言い合っていた。今回のOPもそうだ、なんで俺なんだとそう思っていた。だがこれはよくわかる、この点滴は確かに有用だ出血でだんだん患者の容態が変わっていく事はよくある。出血が止められなければ患者はすぐ死んでしまう。それをこの生理食塩水が補うのだ、それで多少でも処置する時間が増せば止血処理が間に合う、まさしく”理路整然”とはこの事だ。これは使える絶対につかえる。病棟の脱水患者にも絶対有効だ医局員にもこれを教えてやりたいと俺ははやる心でいっぱいだった。


俺は患者の左手の上腕の静脈を指で確認してサリバン先生が渡した静脈留置針を1回で入れられた。そして点滴のラインと繋いだ、、サリバン先生は俺の背をバンバン叩いて笑って一言「やるじゃん!」、今まで生きてきて一番うれしい言葉だった。「やるじゃん、、、、」俺も使おうと思った。


私は外回りのちよさんに手術が始まったら10分おきに血圧を測って大声でいってねといって水銀血圧計を渡した。使い方は教えている、これは血圧の変動で患者の状態を少しでも早く知る事ができるからだ、これも”かつじ”に中村教授が血圧計に関する有効性について症例データを集めているら、手術でこの有効性をレポートでだせと指示した。「あんたの教授からの点数爆上がりになるわよ~」と教えてやった。”かつじ”の「御意!」は狂喜へと変わったのである。


私は手洗いをしようと思ったら、みんなは消毒液が入った洗面器で手を洗いだした。、、、ついていくのがやっとだった。緑色の手術着に袖を通してマスクもしてゴム手袋をして準備ができた。胆のうは肝臓の下に位置しており右側の上腹部にありますそこをでかい綿球で消毒液をこすりつけで消毒をした。


そこを20cmくらいの穴が空いた緑色のでかい覆布をかけた。みんなが揃い”かつじ”が一言「これより胆のう摘出術をはじめます、お願いしま~す。」そしてメスを入れた、、私は切開した場所を”かつじ”の邪魔にならないようにガーゼで止血をしていた。15㎝程の切開ができると私は開腹器をセットしてギヤを回して視界が広がるように腹壁を広げた。


赤くてかる肝臓が見えた、私は筋鈎を肝臓に引っ掛け少し反転さえ第二助手の”きよし”にこの筋鈎で押さえていてと言ってその筋鈎を彼に渡した、反転したことでへばりついた胆のうがよく見えた、、私と”かつじ”が両向いからのぞき込んだ。「いい”かつじ”これが胆管それととなりのこの青黒いのが血管よ」と私は右手に持っている長い攝子でその場所をさして、これからここをシルクブレードで結紮してから切断する説明をした。”かつじ”は私の顔をみて頷いた


私はあまりに胆のうの状態がいいので攝子を左手に持ち替え右手でそ~と胆のうを触診した胆石の感触はなかった、胆管も異常がなかった。”かつじ”が「どうしたんですか~」とのんきに聞いてきた。



私は「これは急性胆石症じゃないわ!」とはっきり彼に教えた、他に何かあるはず私は嫌な予感で背筋がぞくぞくしてきた。”かつじ”もメスを置き一緒に臓器をそ~とどかした。



”アッ!”と叫び私はそこをじ~とみて右手で触診した。


私は目をつむり黙ってしまった、、、時間が止まった。


みんなは何かをさっしてだまっていてくれた。


そこは妙なしこりがある膵臓だった。そうだ、あのサイレントキラーと呼ばれる膵臓がんだった。他に転移はないかよく見ると肝臓に変色している部分があったそこも触診したら妙なしこり感があった。ほかによく見えないが腹膜にも転移しているだろうステージ4末期がんだった。この時代にCTもなければレントゲンもない、ろくな検査なんかできるけがない、まして症状も似ている腹痛、背部痛 発熱、吐き気、黄疸、私だってこれを聞けば胆のう症を疑う。



私は知っていた彼女は今年の8月15日に45歳で亡くなる事をてっきりこの急性胆のう症と思い込んでいた。



これだったのか、これでは125年後の医療でも治せない、、、、、、


私は”かつじ”ときよし”に静かなやさしい声で教えてあげた。


「これは膵臓がん、それに肝臓にも転移している、よく見えないけど腹膜にも他の臓器にも転移していると思う、」そういって経験させようと二人に触診させた。”きよし”が「あ、わかります、わかります、妙なしこりがわかります、」と言っていた。”かつじ”もうなづいていた。彼は私をきづかって何も言わなかった。


「インオペ、、よ インオペ ”かつじ” インオペ、、、、」



しばらくして”かつじ”が小さい声で聞いてきた 「い、ん、お、ぺ とは?」



私はそれを笑いながら聞いていたが、、、涙が床にポタ、ポタ、ポタと落ちていた。



”切除不能、いわゆる「インオペ(inoperable; 手術不可能)」”の事である。





1900年8月15日陸奥むつ 亮子りょうこ(45歳)彼女は静かに息を引き取った。




私は”かつじ”と”きよし”と3人で両手をあわせて病院からご自宅に運ばれる、ご遺体を見送っていた。セミがやたら鳴いていた、、、、、、、、






薬学部2号棟のペニシリン研究室6月ある日


2ヶ月ほど前にあの未来からきた医院にあった器材は持ち込まれており、あのお金で必要な作業台や実験道具や人材も確保して作業がはじまった。


空気を清浄にし雑菌が入らない環境ができるクリーンベンチ作業台、預かってきた簡易型のクリーンベンチの図面を職人の栗さんや電気にくわしい佐藤君に見せるとまわりを囲うものや排気ダクトやファンについてはどうにか作れるといっていた。


やはり一定の清浄度になるようなフィルターは無理だが、それでも職人の栗さんは仲間の職人にいろいろあたり佐藤君と一生懸命考えてくれて、素材があらく空気が抜ける和紙を何枚か重ね炭を細かく砕いたものを間にはさみ木枠で作った箱型の形状を作ってきたそれを実験道具の空気の通り道にいれてみた。目にわかるような変化はないがそこから吹き出す風からは、部屋の薬品臭はせず清らかな風だという事はわかった。


臭いの粒子をとるほどだこれで行こうと思い工事を頼んだ。3日ほどで卓上型で排気はダクトで外にだした。これですべて揃い柑橘系のアオカビを使い実験を初めて約1ヶ月以上が経っていた。



ある日、研究室のドアをバ~ンと開けて薬物学 の教授佐藤作治がどなりこんできた、、、  


「城島!貴様は俺に隠れてなにをやっているだ!!~~ 勝手にこの部屋も使いやがって~誰の許可をとってやっているんだ~なんだ~この装置は~医局の金でも使い込んでるのか~何とか言え~」


激熱おこの教授だった。



俺はこの教授が大っ嫌いだったこの医学部婦人科教授、原平蔵が率いる最大派閥の腰ぎんちゃくだ、、、前の教授は実直でまじめに新薬の研究を一生懸命に研究していた俺は憧れていた。それがこの腰ぎんちゃくが原平蔵に頼みこみ金で教授席を奪ったのだ。この平蔵は関西の出身で向こうの裏社会を仕切る、河田金五郎がバックについているようだ、前の教授は脅されたのかよくわからないが突然辞表をだし退官してしまった。そしてほどなくこの佐藤作治が教授選で派閥票により教授に収まったわけさ、来年の第二外科の教授選はやつの親戚で俺や上杉と同じ同期の森林太郎を推薦すると噂で聞いたが、そうなれば上杉と尚美さんとで実現しようとしているこのペニシリンは林太郎の実績になっちまうじゃないか、、、、


俺の目の前に作治がやってきた。


「教授だまっててすみませんでした。これはある企業から頼まれた新薬の開発です。そこの社長さんが後日、教授にご挨拶に伺うといっていたんですがまだいってませんか?」


”俺は結城君から指南されていたセリフを言った”


「なに企業から頼まれた~だと どこの企業だ、まだ誰も挨拶にはきてない、、」


「五条商会の五条結城社長です。」


「それで どんな新薬を作っているんだ!、」


「患者の臓器で起こる感染症の炎症を治すペニシリンという治療薬です。」


作治はおもっいきり笑い出した、、それも腹を抱えて、、、、、そして罵声を浴びせてきた。、、、



「おまえはバカか!~~そんな薬なんぞ日本でつくれるもんか!~あの医学先進国、独逸でもそんな論文もみたこともないわ、~」



「そんなできもしないことなんかするな!~~夢みたいな薬なんぞできるわけない!!、くそでもして寝てろ!!」




俺は何かが切れた、、、、、、、そしてドスの効いた低い声で、、、



”できる、できないじゃないです、、その研究をやるか、やらないのかです、、、”





”夢をみることができなければ、、未来を新薬を作ることはできません、、、、”







そして俺は細胞培養物を培養するインキュベーターの前にいき一つのシャレーを取り出し作治の目の間に差し出した。そして蓋を開けて見せた。


それは培養された感染症の細菌であった、その中心に直径3㎝程の真円ができており細菌の繁殖を阻止していたのだ。


それを見せて私は静かに伝えた。







  、、、これがペニシリンです。、、、









つづく、、、、、、、、


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