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第150話 ガリポリの戦いその4


ブナカマ村に向かう街道に沿った雑草の生えた高台は、今はオスマン軍の主力野砲である7.7 cm FK 96によって一面に破孔が穿たれ、火薬の臭いと血の臭いが漂っている。


海兵隊の乃木大尉が率いるコマンド中隊は約800m程に渡って散開して、各小隊の兵士は2~3人用の塹壕から身体の一部を出しながら射撃を続けていた。


突撃してくるオスマン兵があげる喊声かんせいを吹き飛ばすように一式機関銃が「ダダダダッ~」と連続する発射音が響き、後方から放たれたコマンド部隊の80mm迫撃砲が4~50mと離れぬ距離で弾頭を爆発させ、破片を撒き散らし、また対人地雷がリモートで爆発して敵兵の悲鳴や肉片が飛び散って、死と破壊をぶちまけていたがオスマン兵は怯まなかった。


数百人のオスマン兵が緩やかな傾斜を駆け上がり、陣地の制圧を目指して銃剣を取り付けたドイツ製のマウザーGew98小銃をかまえて突撃を続けていた。


高台の右翼を守っている第二小隊の猪熊少尉は、空気を切りさいて近くで爆発した野砲の破片が塹壕の頭上を飛んでいく中、周囲を警戒していた。


「まずいぞ、側面を迂回してこちらやってくるオスマン兵の連中がいるぞ!」と叫ぶと


そばにいた兵士が「大丈夫です、あそこには一式対人地雷が仕掛けています~」と正面は雑草や土くれで偽装してわからなくしているが、背面が白く塗ってわかるようにした有線リモート地雷で湾曲した箱状のケーシングに樹脂でモールドされた300個の鉄球、その背面に爆薬が内包され起爆すると前方に向けて樹脂が砕けつつ放出され、鉄球が飛び散り、一基で広範囲に殺傷能力を発揮する指向性対人地雷が置かれていた。


「よし、安全装置をはずせ、俺が合図したらスイッチを入れるんだ!」


「了解しました。~」と言いながら起爆ハンドルの安全装置を外す兵士、30m先を迂回しながら何も知らずに喊声かんせいをあげながら緩やかな傾斜を駆け上がってくる2~30名のオスマン兵達


一番広範囲に被害を与える場所に迫ると「今だ!、爆破しろ~」と猪熊少尉が叫び兵士が起爆スイッチを強く握ると、「バ~ン」と白煙と閃光がひらめき300発の鉄球が散弾銃のように広範囲に飛び散り、半数以上のオスマン兵がまともにそれを浴びてしまいその場でバタバタと悲鳴を上げながら倒れていった。


そこへすかさず猪熊少尉が南部式短機関銃の木製の銃床を右肩につけ、左手は30連の弾倉を握り照準を付けながら、フルーオートで残りの兵士に向けて引き金を引くと、またしてもバタバタと敵兵は倒れてしまい、生き残った兵士は慌てて逃げていくのだった。


800m程の日本軍の防御陣地の中央部にある、中隊指令所の塹壕では乃木大尉が野戦双眼鏡で戦況を確認しており、その脇には近くに落ちた7.7 cm FK 96榴弾の破片を受けて片腕を飛ばされ爆風と破片で壊れた三式無線機を背負いながら即死した兵士が倒れていた。これにより中隊は司令部との連絡が取れず援護の航空隊も呼べずにいたのである。


駆け上がってくる敵兵を吹き飛ばしていた80mm迫撃砲弾の破裂音が突然とまり、乃木大尉が後方の迫撃砲の陣地を振り向くと、顔をドーランで塗りつくしヘルメットを被った一人の兵士が壕から上半身をさらして両腕をクロスさせて弾切れを知らせていた。


”くそ~まずいな~ このままでは押し切られるかも知れない、、”すでに一部の塹壕は砲弾の直撃弾を受けたり、敵の銃撃で負傷や戦死して沈黙していた。


近くの塹壕の機関銃チームはスチール製の25式弾薬箱のベルトリンクで50発ずつ結合された5本のベルトを撃ち尽くすと、兵士はアスベスト製耐熱グローブを着用の上、身を起こして固定を解いた尾筒部を回転させて銃身の軸線から外し、銃身を引き抜き予備銃身と交換しようとしていたら、敵の射撃によって首を撃ち抜かれ血を吹き出しながら倒れた。


すかざすもう一人の兵士が素手で顔しかめながら、その熱した銃身をはずし予備の銃身に入れ替えて、新しい弾薬箱から50発のベルトリンクを装填すると発射速度800-900発/分の一式機関銃が「ダダダダッ~」と甲高い音を響かせた、仲間の死体を乗り越え踏みつけて目前まで突進してきたオスマン兵は、バタバタとその体を撃ち抜かれ倒れていくと、数名の敵兵士がその場に突っ伏しそれを弾除け代わりに小銃を乗せて撃ち返していた。


ブナカマ村とエジェアハトの街をつなぐ街道には、負傷者の血と硝煙の臭いが混じり、トラックも数台燃えていた。


街から急いでトラックでやってきたベレン・サート中佐が率いる増援部隊は不用意にこの村へ接近してしまい、いきなり乃木大尉達のコマンド部隊の80mm迫撃砲と一式機関銃の攻撃を受けてあわてて、街道の脇の林の中に陣を構えたのである。


馬で運ばれてきたオスマン軍の主力野砲である7.7 cm FK 96が6門、すぐに馬から外され林の影から高台の陣地に照準を合わせて榴弾による砲撃を開始した。


これによりオスマン軍の戦意は上がりベレン・サート中佐の指示で村を背後にした、敵の部隊を囲い込む様に左右へと分かれ一斉に突撃させたが第一波の攻撃は失敗した。


その後、執拗な砲撃を繰り返していくつかの塹壕陣地を潰して、さらに増援でやってきた部隊も加えて5~6倍の兵力で攻めて来たのである。緩やかな坂で血だらけで倒れたオスマン兵の遺体が散乱して血生くさい臭いと硝煙が漂っていたが、街道に一番近い日本軍の塹壕陣地はほぼ全て突破されオスマン兵がそこから身を隠してマウザーGew98で撃ち返してきた。



双眼鏡で戦況をみていたベレン・サート中佐は、日本軍の迫撃砲の攻撃が突然に止まった事に気が付いた、にやりと笑みを浮かべ”弾切れか?、これで、この連中を皆殺しだ!”と思い


「第三中隊、突撃だ~」


残していた、最後の部隊に突撃を命じた。


街道の土手や脇の林に隠れていた、予備の第三中隊の数百名の部隊が一斉に立ち上がり、喊声かんせいをあげて駆け出してきた時・・・・・


「ドドドドドドッ~」と太鼓を連打する重い射撃音が幾つも重なって響いたと思ったら、攻めあがろうとしていたオスマン兵の頭が次々と破裂したように吹っ飛び、脳みそや目玉をまき散らし、手足がちぎれたり上半身が吹っ飛び臓物が撒き散らせたり、数人の胴体に穴が開いて飛ばされて数十人の兵士が一度に、真っ赤な血を吹き出しバラバラの肉塊になりながら即死した。


それは後日、「人間肉挽き機」とオスマン軍から恐れられる日本軍の12mm重機関銃の一斉射撃であった。


”何が起きたのだ~”


そう思い村の方を双眼鏡で見るベレン・サート中佐は驚愕した。


「あ、あれは、なんだ~」


村の入り口の街道から飛び出してきたのは、上陸部隊の一式装甲車が、4台横並びになってゆっくりと迫ってきた、後ろの村からは湧き出すように装甲車に随伴する海兵隊の兵士が大勢飛び出してきて、四十二式小銃を膝撃ちで射撃したりして、オスマン軍の兵士に猛烈な射撃をしてきた。


特に12mm機関銃の威力は彼らを恐怖へと落としいれた。


一発でその射線上にいた兵士は、全て体にデカい穴が開くか手足を飛ばされてしまうのだが、それが次第に4台から5台6台と台数が増えてその強烈な銃撃で数分で戦場は生身のオスマン兵の肉の塊や、手足がバラバラにころがり臓器で血だらけの阿鼻狂乱になっていた。


土手から兵士達が、銃やドイツ製の機関銃ですかさず反撃するが全ての弾を跳ね返して進んで来る装甲車を見て、林の方へ逃げ出す兵士や武器を捨てて両手を上げて高台の日本軍へ駆け込む兵士など大騒ぎとなっていた。


「撤退だ~、引き上げろ~ 急げ~」ベレン・サート中佐が副官に叫ぶと急いで車に乗り込んだ、街道脇の林にいた兵士達も慌ててエジェアハトの街へと走り出し、7.7 cm FK 96野砲やMG08重機関銃などの装備はそのまま捨てるように置いて行き逃げ出した。


こうしてブナカマ村の海岸へと増援でやってきたオスマン軍の連隊は、数百人の死傷者と200名程の捕虜を出し装備を捨ててエジェアハトの街へと撤退していった。



そして海岸から支援で真っ先にやってきた、海兵隊第一大隊の鮫島剛志少佐は高台陣地から降りてきたドーランで汚れた顔をしている乃木大尉とガッチリと握手をするのだった。






つづく、、、




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