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第145話 「ジャッカル」その3


サン・ドニ通りにある犯罪組織「ジャッカル」の隠れ家では、尚美の拉致に失敗した幹部のムールード・マムリが子分から足の手当を受けていた。


「だらしねえな~、たかが犬ころ一匹に咬まれて逃げて来たのかよ!」と、いら立ちながらムールードを叱るボスのジャック・ムハンマド


「ボス、あれは、ただの犬じゃねえ~よ、まるであの女医を守るように、あきらかに俺達を狙ってきやがった!」とその時の恐怖を思い出す幹部のムールード


その場にいた子分のアキームは「ボス、あの犬は、俺達を怖がりもせずに、すげ~顔で俺達を今にも噛み殺す勢いで睨んでいました。ただの野良犬じゃありません!」と言い訳をしていた。


ジェルメーヌ夫人

「もういいわよ、あてにならない子分達ねえ~、」とあきれている。

「あの日本人の女医は、女の病人には親身になるからうまく、あのホテルから騙して誘い出し始末すればいいのよ、さすがにその犬も女には噛みつかないでしょ」


ジャック

「ちょうどいい、インドシナから連れて来た娘で、やばい病気をうつされた奴がいただろう、あいつを使うか」


アキームが女性達の面倒をみているインドシナ人の子分ホアン・ヴァンの顔を見ながら、「あの女まだ、生きていいるのか!」と聞くと


「グエン・リー、、イキテイル、、イシャ、ミセテイイノカ、」と片言のフランス語で答える


ボスのジャックは「ああ、インドシナの娘の仲間にアストリア・ホテルに行かせて女医を売春宿に連れてこさせろ、診察が終わったら俺達が拉致して始末すればいいだろう」


少し考えながらホアン・ヴァンは「ワカッタ・・・・」と答えた。


こうしてジャックとジェルメーヌ夫人は、インドシナの商売女を使い尚美を誘い出し拉致をして始末しようと考えていた。





パリの凱旋門につながる行政8区オッシュ大通り7番地にある在フランス日本国大使館、そこの一室に政府直轄の情報調査室(JIA)があった。そこに日本から公安警察のトップも兼ねている結城からの指示で、優秀な成績で諜報要員養成所を卒業した、服部半蔵元政の娘の服部汐音 (しおね)とその部下が日本から応援で来ていた。そして大使館の会議室には服部汐音が駐フランス日本大使の石井菊次郎とその幹部達に上座に座る汐音がフランスに来た目的を話していた。


「私達が日本からきたのは、政府からの指令でこのフランスで諜報活動しいるドイツ帝国の諜報員を探し出す事です。」


「ドイツ帝国の国王ヴィルヘルム2世は数年前に陸軍と海軍に新しく情報部作り、この戦争を優位に戦おうとしています。特にこのパリにはドイツ陸軍参謀本部のラインハルト・ゲーレン少将が率いる情報部”ゲーレン機関”に所属する外国人スパイが多数潜入していると政府から言われてきました。」


「こちらには、フランス人以外の外国人の使用人がおりますか?」真面目な顔で聞いてくる汐音


彼女を女性の諜報員だと思い、少し馬鹿にしていた日本大使の石井菊次郎は心当たりがあり、次官の顔を見ると、、、


幹部の坂井次官が「オランダ人のメイドが、少し前からこの大使館で働いています。」と答えた。


その時、ドアのそばに立って警戒をしていた汐音 の忍びの部下の望月虎之助がドア向こうの気配を感じいきなりドアを開けると、ワゴンに来客用のお茶のセットを積んだ、そのオランダ人のメイドがびっくりした顔で立っていた。


「お前、先程からここに立って我々の話しを聞いていただろう!」と報要員養成所で習った流ちょうなフランス語で部下の望月が聞くと


「ち、、違います。私は次官に言われてお茶を運んで来ただけです。」と動揺しながら言い返すオランダ人のメイド


「お嬢、どうしましょうか」


「そうね、別室で優しく事情を聴いてちょうだい、優しくよ!」そう笑みを浮かべ汐音が指示をすると、望月はメイドの腕を掴み別の部屋に連れていったのである。


「あ、あんな素人のような娘が諜報員なのですか、」と聞き返す坂井次官


「どのような経緯であの娘さんを雇ったのですか?」


「えっ、知り合いのフランス人から日本語も少し話せるオランダ人で国の両親の為に出稼ぎにこちらに来ていると紹介されて、半年前から住込みで働いております。」


「ちょうど我が国がドイツ帝国に宣戦布告した頃ですね~う~ん、間違いなく”ゲーレン機関”に雇われた諜報員ですね、望月がすでにドア越しでしばらく前から立ち聞きしていたのを知っていました。お茶を持ってきたならすぐに入ればいいじゃないですか」


「ドイツ帝国の”ゲーレン機関”の諜報員はすでに英国の大使館や米国の大使館にも潜入しており、今はお互いの情報部と協力してこの組織を壊滅しようと考えております。あとは政府の資料(結城)で、このパリの夜に暗躍しているオランダ国籍のダンサーであり、軍の将校などを相手にする高級娼婦として体を売っているマタ・ハリ(Mata Hari)ことマルハレータ・ヘールトロイダ・ゼレという女性は、暗号名「H-21」という”ゲーレン機関”の大物スパイという事がわかっています。」と汐音が報告すると、


「え~、あのマタ・ハリがドイツのスパイだって~」と急に声に出したのはこの大使館付の若い陸軍武官、城戸順一大尉だった。


すかさずみんなが彼を見た。


「すでに、彼女は日本の情報を手に入れたようですね、え~と、城戸大尉でしたね、彼女から夜の相手をしてもらい、何を聞かれたか正直に答えて下さい。」と城戸大尉に質問する汐音


そこにいる大使や次官も含めて上官からも睨まれている城戸大尉は諦めて答え始めた。


「そ、そんな、スパイだとは知らずに夜にホテルのバーに飲みに行ったら、いきなり声を掛けられて娼婦の女性だと思いそのまま、確か日本軍はいつ私たちフランス人を助けにきてくれるのかとか、どの位の兵隊さんがきてくれるのかとか、、」と正直に答えると脇にいた上官の横山少佐が大声で「バッカモ~ン!、、それは軍の機密情報だろう、なんでそん事を、、」と叱りつけた。


「す、すみませ~ん、フランス人の娼婦だと思っていました。」と言い訳する城戸大尉


「しょうがないですね、政府から”マタ・ハリ”の情報がきたのは最近ですからそれに、その程度の情報はフランス軍やイギリス軍の将官も知ってる事ですから大したことはないでしょう、彼女もいろいろなフランスの将官の愛人をしているようなので確認の意味だと思いますよ。」


「私達の情報調査室(JIA)の諜報員が彼女を泳がして、この国にいる他のメンバーを探し出しこの国の警察にさしだすつもりです。もう会わないでください!」


そうして汐音が大使館の要員に情報管理の大切な事をレクチャーしていると、メイドの尋問を終えた部下の望月が部屋にやってきて、オランダ人の彼女はやはり金で雇われた”ゲーレン機関”の末端のスパイで、大使の部屋の金庫にある外務省の暗号通信の乱数表を狙って潜入してきたことがわかった。このようにして服部汐音が率いる忍び子弟達の情報調査室(JIA)はラインハルト・ゲーレン少将が作った諜報機関”ゲーレン機関”のフランス組織を潰すために派遣されてきたのであった。


大使館の情報調査室の部屋で会議の資料をまとめていた汐音に、百地竜二が報告にやってきた。


「お嬢、やばいですよ~、長官の尚美姉さんがこの国の裏の家業の連中に目を付けられていますよ」


「え~、まじに、、それで何があったの、、」


「いや~、お嬢から言われてアストリア・ホテルの近くでワゴンで尚美姉さんを見守っていましたら、外に出て来た尚美姉さんの後を追って、やばい連中がどうも拉致しようとしたので、ガードしていた黒虎が連中に噛みついて追っ払いましたよ、きっとまた襲いにきますよ、どうしますか?」


「どうすると言っても、だって五条長官からこっちに来る時に”姉さんをちゃんとガードしてくれよ!”て言われているのよ、まずいわよ~、いったい何ものかしら、尚美姉さんは、フランスの負傷兵を助けにきたのに~日本の医療隊になんか恨みでもあるの、う~ん許せない、こっちを先に潰すか、明日から私も行くわよ!」


こうして尚美を守るために、汐音たち、忍びの軍団が動き出したのである。








つづく、、、、





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