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第137話 護衛艦隊その2


右手の遠くにはソコトラ島が小さく見える晴天のアデン湾、ゲーニック・ヘルジンク大尉が指揮するU-21はU-14号のフェリクス・ルックナー大尉、U-15号のラインハルト・シェア大尉と共に紅海の入口であるアデン湾で罠をはっていた。


エジプトのアレクサンドリア港を目指している、日本陸軍と海兵隊の中東派遣艦隊と第二艦隊はスエズ運河に向かう為にはここを通らなければいけなかった。すでにシンガポールやスリランカにいる協力者から日本艦隊の立ち寄り情報が暗号できており、今日明日にでも会敵予定のアデン湾で待機していた。


索敵の為U-14号のルックナー大尉の艦が中央に位置して、浮上して艦橋から副官や当直士官といっしょに周囲の水平線を双眼鏡で監視していた。右舷の後方5000mにはヘルジンク大尉が指揮するU-21、そして左舷の後方5000mにはU-15号のシェア大尉が追従して三角形の陣形で浮上してゆっくりとしたスピードで周囲を同じように索敵していたのである。


排水量685t 、全長65m、 50cm魚雷発射管4基(艦首2基、艦尾2基) 4名の士官及び31名の乗員を乗せて、陣形の中央部を浮上して双眼鏡を覗きながらすこし緊張をゆるめたU-14号の艦橋にいる、ルックナー大尉と副官それに当直士官「艦長、なかなか日本艦隊は見えませんね~、情報だとそろそろですよね~」2日もここで待機しているU-14号の副官が、ため息のように発言すると艦長は「待つ事が、我々の潜水艦の仕事だ、必ずここを通らなければ連中は中東には行けないからな」そう確信をもって、胸に鉄十字勲章を光らせてルックナー大尉が答えると「日本のサルも海中に潜んでいる、我々に気づかないでいきなり魚雷を撃ち込まれたら、さぞかしたまげるでしょうね。サルは泳げるんでしょうか?」と日本海軍を馬鹿にしている副官に、当直士官も笑いながら「犬も泳げますから、サルもサルかきでなんとか泳げるんじゃないですか」と笑いながら返していた。


それを笑みを浮かべながら聞いているルックナー大尉の、双眼鏡の手がとまり一点をじ~と見ながら、「二時方向に煙が見える、日本艦隊が来たぞ!」そう言うと、二人の士官もそちらに双眼鏡を向けて「やっと来ました。それではサルに水浴びでもさせますか」そう言ってUボートを日本艦隊に向けて全速で近づくのであった。


その少し前、強襲揚陸艦の白神の甲板では小型対潜爆弾を4発を積み込み、水平対向6気筒空冷エンジンを始動させて、エンジンを温めている二人乗りのセスナ型攻撃機が発艦をまっていて操縦するのは航空隊に入って2年目の西川虎次郎少尉と副操縦士は1年目の永山武敏曹長であった。


「西川少尉、あと3分で哨戒の交代時間ですよ、ドイツ野郎の連中はこの先で待ち構えていますかね?」腕時計を見ながら不安な顔している永山曹長、「ぜったいにいるさ~、あれだけ派手な出航を世界にアピールしているんだぜ、奴らにとっても青島要塞のかたき討ちにくるだろう、なんせ一隻の輸送船を沈めれば約2000人の日本兵がお陀仏だからな~、魚雷一発にしては効率がいいだろう気を緩めるなよ!」そう言ってもう一度、計器を確認する西川少尉。


甲板では向かい風を受けながら、派手な黄色のベストとキャップを被った発艦担当クルーが、機体の脇でかがんだ姿勢をとり、西川少尉の顔を見ながら緑の旗を持った手を「ビシッ!」と前に伸ばし発艦の合図を送った、機体はフルスロットで、甲板を加速しながら晴天のアデン湾にむかって飛び出したのである。


ヘルジンク大尉が指揮するU-21とシェア大尉のU-15号も、日本艦隊に気が付き、事前の打ち合わせ通りに迫ってくる日本艦隊を左右から雷撃しようと浮上しながら回り込もうとしていた。中央のルックナー大尉のU-14号は両サイドからの雷撃で混乱して横っ腹を見せた艦船の攻撃の為に、そのまま中央を進んでいたのである。その上空300mを西川少尉の機体が艦隊の前方哨戒で飛んで来たのである。


西川少尉の哨戒機が先に輸送艦隊にせまるUボート三隻の航跡を発見した。すぐに永山曹長は無線の受話器をとりスイッチを押しながら、「こちら哨戒三号機、哨戒三号機、白神、応答せよ」と旗艦の白神に連絡すると司令所の当直士官が無線に答えた。前方と艦隊の両サイドに回り込もうするUボートの報告を素早くすると、中央のルックナー大尉のU-14号を攻撃しようと機体を大きく旋回させて直進する潜水艦の航跡に沿って後方から迫ろうとしていた。 


西川少尉の哨戒機から連絡を受けた、強襲揚陸艦の白神の指令所では対潜演習の教本通りに、てきぱきと各艦に指令が無線で知らされた。それを後ろの立派な固定椅子に座り黙って見ているのは、この中東派遣部隊の最高責任者である乃木希典元帥だった、そばには副官として乃木閣下に従う秋山真之少将が状況を説明していた。


「閣下、哨戒機から連絡があり、ドイツのUボート潜水艦が三隻この先で待ち伏せ攻撃をしようとしております。只今、他の攻撃機も飛ばして対潜駆逐艦も三隻現場に向かわせました。しばらくは騒がしくなりますが必ずしとめます。御安心してください。」そう発言すると、落ち着いて白髭をたくわえた乃木元帥は「海での戦いは、儂はよう知らないので君達、若いもんに任せるよ、口出しはせんから好きなようにやってくれ」と静かに笑みうかべ秋山副官に答えた。


甲板ではクルーが慌ただしく動いており、哨戒一号機がすでに発艦して、哨戒から戻った二号が給油と着艦直前に海に投棄した対潜爆弾を積込み、すぐに飛び立とうとしていた。それと第二艦隊隊からは対潜装備を備えた磯風級駆逐艦の「谷風」「雪風」「浜風」の3隻が、それぞれ持ち場を離れUボート攻撃の為に向かったのである。


U-14号のルックナー大尉の艦橋では、副官それに当直士官も上空を飛んでいる攻撃に気が付いた、副官が呑気に「なんで、こんな海の真ん中を飛行機が飛んでいるんだ?」そう言うと当直士官が「水上偵察機ですかね~」と、この当時の飛行機はまだまだ珍しく、攻撃としての認識はなかったが、ルックナー大尉は経験からその飛行機が殺気をもってこの艦に近づいていると感じた、すぐに「艦内に戻れ!」と二人に指示を出し「緊急潜航、速力最大!」そう大声で船内の操舵室に伝えた。


二人が素早く船内に戻ると、最後にルックナー大尉もハッチに滑り込みそのハッチのハンドルを回して閉鎖した。指令所に戻った時は、すでに機関室のディーゼルエンジンは切られシーメンスの電動モータに切り替えられた。バラストタンクに海水を入れて緊急潜航をはじめたU-14号であるが、海の真ん中を飛ぶ飛行機に見とれていた事が命とりになってしまった。


近づく西川少尉の攻撃機からは潜航していく艦影は、海の上から丸見えだったのである。高度15mまで低空におりてきた西川少尉は演習を思い出しながら、タイミングを計り永山曹長に向かって「今だ!、落とせ~」と叫んだ、永山曹長は爆弾投下レバーを握り前方へ倒した。機体が少し軽くなり浮かびあがると対潜爆弾が4発少し距離をおいて投下され、すぐに3発目と4発目が派手な爆発音と共に盛大な水柱があがったのである。しばらくすると一面には重油の黒い油面が広がり浮力のある残骸がいろいろと浮き上がっていた。


撃沈を確信したは西川少尉は笑みを浮かべて頷くと、それを見ていた永山曹長は、無線の受話器をとりスイッチを押しながら「こちら哨戒三号機、中央の潜水艦を撃沈、繰り返す、中央の潜水艦を撃沈!」とこの大戦で初めて飛行機が潜水艦を沈めたのである。


こうして海中に沈んでいったのは日本のサルではなくて、自分達だと死んでいく最後に思ったドイツ人3人だった。





つづく、、、、、









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