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第130話 青島要塞の攻略その2


青島の上陸作戦

海岸では乃木大尉の部下達が事前の打ち合わせ通り、色の付いた発煙筒をたいて各部隊の上陸地点の場所を知らせていた。


海岸を目指してくる上陸用舟艇は、まるで演習のように数隻の舟艇が同時に浜際に止めると、前方の鋼製の渡板をバタンと倒し、M1戦闘用ヘルメットをかぶり背中にバックパックをしょって、国産四十二式小銃を握りしめた兵士達がぞくぞくと飛び出してしきた、中には一式機関銃のベルトを肩にかけ右手に銃弾箱を重そうに持った兵士や、南部式短機関銃を持った士官はヘルメットの前後に将校である白い短いラインが縦に入っていた。


部隊ごとに集結した兵士は、それぞれの士官と副官が地図を広げ行先を確認すると部下達に指さし、自分達の持ち場の戦域へと一列縦隊で周りを警戒しながら進み始めた。


沖のイギリス輸送船の甲板では、忙しそうに積んできた大型カッターボートを慎重に船員達が降ろしていた。その脇では上陸する兵士が船べりから海面に垂れている網のような縄はしごを前にして、重そうな装備を背負いながら、横一列に並びカッターボートの準備を待っていた。


そんな中で日本の海兵隊員を運ぶ大型揚陸艦をじ~と見ていたウィリアム・ブース兵卒は隣にいた同郷のエドワード・ジェンナーに「あの船を見てみろよ、船のケツが海に沈みどうなるかと思ったら、そのままケツの船体を開きやがったと思ったらすげ~じゃねか、兵士をのせた動力付きの大型艇がでてきやがったぜ、いったいどうなってんだ~」


同じように驚いて日本の大型揚陸艦をみているエドワード・ジェンナー「あれは、うらやましいよ、こんだけ重い装備をしょいながらこの縄はしごを降りて揺れるボートに乗らなくていいからな~」


そう言いながら建物の3階相当の高さの船べりから、下を覗きこむエドワード・ジェンナー「コリャ~、海に落ちたらこの装備だ、浮かんでこれね~や、そのまま海底まで一直線だ、日本軍がうらやましいぜ」


こうして二人は船員が準備した揺れるカッターボートに向かって、船べりをまたいで網のような縄はしごに、しっかりとしがみつきながら慎重に乗り移るのだった。


上陸から三日もすると日本軍とイギリス陸軍はドイツ軍の半島を横切る6kmの防衛ラインに沿って、ドイツ兵の奇襲を防御する塹壕陣地を構築していた、穴を掘り用意した土嚢袋にその土をいれて簡易塹壕が、黄海側上陸地点から反対の膠州湾こうしゅうわんまでの6kmの支配下において、出来上がっていて後方の砲兵陣地には、すでに英国軍の野砲とトラック砲が数十台車列を横に並べて砲を要塞に向けて、いつでも砲撃できる状態になっていた。


上陸用舟艇から降ろされたトラックに積まれた器材は、工兵隊の手によって海兵隊司令本部の為の簡易プレハブ棟ができあがり、内部にテーブルや無線機に机や折りたたみイスが置かれて、他にも発電機によって電力が供給されはじめるとでかいプレハブ式冷凍倉庫もつくられ兵士達が並んで船の冷凍庫から運ばれた冷凍食品を、素早く手渡しで渡していき倉庫に中に積み重ねていった。


他に簡易プレハブ工法による倉庫や野戦病院が立ち並び、部隊事の炊事班専用のプレハブ棟が各所で立ち上がっていた、兵士達は各小隊が寝れるデカいテントの設営は終わり、中には折りたたみベットがすでに置かれていたのである。


要塞攻略の作戦会議に参加するため、日本軍宿営地にやってきた、高貴な貴族の子弟の士官達は、東洋の物まねがうまい黄色いメガネサルと本国の新聞の挿絵になって日本人を馬鹿にした記事を読んで育ってきていた。それが、大型揚陸艦に飛行機や上陸の様子をみたり、このプレハブ棟にも驚いたが、その中が空調で涼しい風が流れ、日本の従者が氷の入ったワインバケツから、自分のグラスにそそぐ冷えたワイン、だされた昼食の初めて食べるカツカレーのうまさに、ここはほんとうに戦場かと腰を抜かすのだった。こうして、ひとぐちごとカツカレーを食べるたびに、自分達のほうが世界一進んだ技術国だと思っていた貴族のプライドが崩れていくのだった。


そんな英国士官の思いとは別に作戦会議は決まり、明日の攻撃には日本軍が奇襲したあとの掃討戦が英国の任務となった。


翌朝、強襲揚陸艦の白神、越後の甲板には高翼爆撃機に取り付ける二十八糎榴弾砲の砲弾で、堅鉄破甲榴弾 (重量 224.0 kg)が航空機用爆弾に改良され機体取付台車にのっていた。


これは日露戦争でもロシア軍のコンクリート堡塁を、貫通させる為に用意された弾頭部分が硬化した鋼鉄でできていてベトン弾と呼ばれる、この時代で作れる「Bunker Buster」だった。


それを機体に取り付けた爆撃機は、黄海側の端にある堡塁陣地と膠州湾こうしゅうわん側のドイツ堡塁陣地に向かい、5ヵ所の堡塁陣地の両端堡塁を破壊するために各母船から5機ずつ飛びたった、試作品のため10発しか用意できなかったのである。海兵隊は両端のドイツ堡塁陣地を突破して青島市街に突入するつもりだった。


そして、それぞれ目標としている両端の堡塁陣地に向けて、上空1000mから勢いをつけて、急降下して次々とベトン弾を叩きつけると2発までは耐えていたが3発目から2mのコンクリートをぶち抜き内部で破裂したのである、それからそのデカい堡塁は3発のべトン弾によって大きく崩壊したのである。中にいた機関銃隊や砲撃で避難していたドイツ兵は、内部での爆発でバラバラになるか生き埋めとなってしまったのである。



~~~~~~~~~



欧州で戦争が始まり、ドイツに宣戦布告した日本政府はすぐにフランスへ送る医療救援隊について、大学病院へ医師と看護婦の派遣募集を始めたのだった。


日帝大医学部・部長室 上杉部長と打ち合わせをしている尚美


「尚美師匠いよいよ、欧州で戦争が始まりましたよ、国からもフランスに医療救援隊を出す事になるので、大学病院から先生と看護婦を出すよう連絡がきました。」


こっちの世界にきて14年、尚美は42歳となっていた。

「そうね、ついに第一次世界大戦がはじまったのよ、これは大勢の人が死んで行く悲惨な戦争になるわ、未来がわかっていてもこれはさけられない戦争よ」悲しそうに上杉部長に話す尚美


「これは、そんなに長く続く戦争なんですか?」くわしくは尚美から聞かされていない上杉先生は尚美に尋ねた。


「そうね~、確か、1918年の11月まで戦争は続くはずよ」


「エ~、この戦争が4年以上も続くのですか」驚く上杉部長


「欧州や中東それにアフリカなんかで、世界中が巻き込まれる戦争だから、日本が戦場になることはないけど、弟は日本の立場を変える為に英国に軍事協力するつもりみたい」


「あの~やはり、尚美師匠はフランスに行かれるのでしょうか?」


「あたりまえじゃないの~、向こうに行って大勢の負傷した兵士の命を助けるのよ」


「何年も日本を離れてしまいますが、大丈夫ですか」


「そうね~、幸子ちゃんも、弟のようにかわいがってた王子の医薬品工場で働く川崎潤一君と結婚して社宅に移ったし、玲子は霞ケ浦の航空兵の育成で忙しいし、銀座の会社も大きくなって、私の出番もないからちょうどいいわ、結城もしばらくしたらフランスに来るんじゃないの、英国の友人を助けるとか言ってたし」


「そうですか、わかりました、ところで尚美師匠は誰をつれていきたいんでしょうか?」自分で欧州派遣の先生を決められない上杉部長は、ボス尚美にうかがうのであった。


「え~、私が決めていいの~ フフフフ、うれしい~、まずは私の身の回りの世話をする井上清先生とレントゲンに詳しい北大路秀一先生がいいかしら、それに、団長はやっぱし勝次先生しかいないわ、それと手術場の看護婦さんも何人かお願いね」


こうして、政府は日本赤十字会と医師会それに他の大学病院からも医師と看護婦を出してもらい、15名の医師と50名の看護婦それに予備役についていた衛生兵から、希望者30名も招集して高橋勝次教授を団長とした医療救援隊を編成したのだった。 


パリにいる駐フランス特命全権大使の石井菊次郎が、日本政府からの指示で戦場で負傷した兵士の治療をする為、日本から医師と看護婦の救援隊をフランスに派遣する事を決定したとフランスのレイモン・ポアンカレ大統領に伝えると、遠く離れた東洋の国、日本が世界最先端の医療技術を持っている事は、すでに世界中の人が知っており、その技術によって兵士の命を救ってくれると大いに感謝して日本医療隊の宿舎と基幹病院として、一軒のホテルを借り上げ提供してくれたのである。


場所は凱旋門近くのアストリア・ホテル、8階建ての客室数300室の立派なホテルに、簡易の手術室10室と客室を病室に作り直して日本の医療隊の為に準備をはじめた。


高橋勝次を団長とした、日本の医療救援隊は、政府が用意した大型貨物船にレントゲン装置や医薬品に医療器材、食料そして負傷した兵士を前線から移送するための2段ベットを並列にして、同時に4人運べる救急トラック、資材を運ぶトラックや人員を運ぶバスなどを積込み、9月の初めに横浜港を出発したのである。



  



つづく、、、、


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